各業界で二酸化炭素の削減目標が決められておりますが、二酸化炭素の排出を5%、10%と削減することは容易なことではありません。目標達成のため会社経営者は頭を悩ませたり、いろいろと苦労されています。今回は燃料転換によって二酸化炭素の排出を減らす方法を述べます。
【燃料によって異なる二酸化炭素排出量】
化石燃料とよばれる石油や石炭は、植物や生物の遺骸が地中に埋もれて生成されたと考えられており、その骨格は炭素によって形成されています。表1に燃料別に代表的な化学式とCO2排出比を示しました。表1において、LPGとは液化石油ガス、LNGは天然ガスを意味します。
分かり易くするために簡略化しますと、石炭は炭素の塊と考えることができ代表化学式は「C」と表されます。A重油などの石油類は大体、炭素と水素が1対1の割合で含まれており、「CH」と表されます。LPGの主成分をブタンと考えますと代表化学式はCH2.5で表されます。天然ガスの主成分はメタンガスですのでCH4で表されます。
A重油、LPG、LNGは炭素の他に水素(H)も含まれていますので、燃焼させれば二酸化炭素(CO2)とともに水(H2O)も発生させます。水素が多ければ多い程、二酸化炭素の発生は相対的に少なくなります。
表1のCO2排出比は、それぞれの燃料の燃焼により、同じ発熱量あたりの二酸化炭素の排出量の比較を、石炭を1とした場合の相対的な数値で示してあります。
石炭の代表化学式は「C」ですから、燃焼させれば全てがCO2になりますので、二酸化炭素排出比が一番大きくなります。逆に炭素1個と水素4個からなるLNGは、二酸化炭素の排出が一番少なくなります。
【こんなに減らせる二酸化炭素の排出】
たとえば、燃料源を石炭からLNGに変えますと、一気に二酸化炭素の排出を45%も減少させることができます。A重油からLPGに変えただけでも、相対的に13%も削減できます。
石炭からLNGに変える場合は、ボイラーや炉の燃焼装置を大幅に変える必要があります。現在の日本では石炭を燃料に使っている所は限られております。燃料をA重油からLPGに変える場合は、問題なく装置をそのまま使える場合がほとんどです。
燃料転換を行う場合に、新たにパイプラインの敷設などの工事が必要な場合がありますが、国から補助金を得ることができたり、短い距離であればガス会社が負担してくれることもあります。
【燃料転換でしっかり削減したヨーロッパ】
ヨーロッパは京都議定書で約束した温室効果ガスの8%の削減をほぼ達成しようとしています。省エネや風力、太陽光発電も推進されましたが、ドイツやイギリスなどで石炭からLNGへの燃料転換が進んだことが大きな理由です。ドイツやイギリスは自国資源の有効利用と労働者の雇用の確保の観点から、最近まで石炭を産出して使用しておりました。
燃料転換は条件さえ整えば実施は可能です。
二酸化炭素の排出削減に頭を悩ませている経営者や工場管理者には、是非とも燃料転換を検討材料の一つにしてみて下さい。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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