阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震と、震度7の大地震が短い期間に続きました。さらに、首都直下地震と東海地震は切迫性の高い地震とされています。今回はこの二つの地震についてふれてみます。
首都地域の地下は3つのプレートが重なる地震多発地域
図1に示す通り、首都地域は北米プレートの下にフィリピン海プレートが接しており、その下に太平洋プレートがもぐり込んでいます。そのため、次の示すように様々な地震の可能性があります。
1.地殻内の浅い地震
2.フィリピン海プレートと北米プレートとの境界の地震
3.フィリピン海プレート内の地震
4.フィリピン海プレートと太平洋プレートとの境界の地震
5.太平洋プレート内の地震
首都地域では過去に、1703年の元禄関東地震、1923年の関東大震災とマグニチュード8クラスの巨大地震が200年~300年の周期で発生しています。これらの巨大地震の発生後は静穏期が100年程度続いた後に活動期に入ります。活動期は150年程度続き、マグニチュード7クラスの大地震が数回発生します。そして関東大震災なみのマグニチュード8の巨大地震の発生が200年~300年の間隔で周期的に繰り返されます。今切迫性を持って懸念されている地震は関東大震災のような巨大地震ではなく、活動期に発生するマグニチュード7程度の直下型の大地震です。
首都直下地震と甚大な被害
首都直下地震は東京を含めた広い地域で発生する可能性があります。内閣府の資料「首都直下地震の被害想定」によれば、最も切迫性が高くかつ首都機能に重大な影響を与える可能性があるのは都心直下の地震となる東京湾北部地震です。次に切迫性が高い地震は茨城県南部地震、東京西部の多摩地震です。
さて、たとえば冬の夕方18時、風速15/sの状態でマグニチュード7.3の東京湾北部地震が発生した場合、建物全壊・火災焼失が計約85万棟、死者数が約11000人の被害が想定されています。また、地震によって避難者が最大約700万人(そのうち避難所生活者は約460万人)、帰宅困難者が約650万人(うち東京都で約390万人)、経済被害が約112兆円と想定されています。なお、阪神淡路大震災の経済被害は推定10兆円、東日本大地震では推定16~20兆円でした。
いつ大地震が発生してもおかしくない東海地震
東海地震は駿河湾から静岡県の内陸部を震源域とするマグニチュード8クラスの巨大地震で、「いつ大地震が発生してもおかしくない」と、その切迫性が指摘されています。
西日本の太平洋側ではユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが毎年3cm~5cmの速度でもぐり込んでいます。それが原因で、表1に示す通り、四国沖(南海地震)から紀伊半島沖(東南海地震)、静岡沖(東海地震)にかけて、過去には100年~150年おきに巨大地震が連動して起きています。
表1にありますように、1944年、1946年に東南海地震と南海地震が連動して発生しましたが、東海地震は起きておらず、いわゆる空白区になっています。1854年の安政東海地震から150年以上が経っていますので、静岡沖の東海地震が発生する確率は極めて高くなっています。
地震名 | 発生年 | 連動して発生した地震 | ||
慶長地震 | 1605年 | 南海地震 | 東南海地震 | 東海地震 |
宝永地震 | 1707年 | 南海地震 | 東南海地震 | 東海地震 |
安政東海地震 安政南海地震 |
1854年 | 南海地震 | 東南海地震 | 東海地震 |
東南海地震 南海地震 |
1944年 1946年 |
南海地震 | 東南海地震 |
想定される東海地震の被害
もし東海地震が起きた場合は、マグニチュード8、最大震度7の地震で、激しい揺れが約1分間続くと想定されています。朝5時に発生したと仮定した場合に東海地震の想定される被害は、建物全壊棟数は約23万~26万棟、死者数は約7900~9200人、経済的被害は約37兆円です。波高最大5m~10mの津波の発生も想定されています。
さて、首都直下地震は様々なパターンが想定され、予知も容易ではありません。しかし、東海地震は海溝型地震ですので、地震発生前には上側と下側のプレートが固着していた縁辺りで「はがれ」が生じ、前兆すべりが始まります。その前兆すべりに伴う歪みの変化をひずみ計で監視して、東海地震の予知が行えます。ただし、前兆すべりが小さいなど、状況によっては予知が困難な場合があります。
防災と国民の安全確保
1964年の東京オリンピックの前に、首都高速道路や東名高速道路が建設されました。建設当時から高速道路の寿命は50年程度と言われていましたが、2000年代になっても、ほとんど高速道路の老朽化の本格的対策はとられませんでした。逆に、「コンクリートから人へ」とか、「高速道路無料化」などが喧伝され、費用をかけた対策は後回しになっているように感じました。その間に、高速道路トンネルの天井崩落事故などがありました。
日本に原子力発電所の建設が始められた頃、原子炉の寿命は約40年と言われていました。福島第一原発1号炉は民間電力会社が初めて導入した原子炉で、1971年3月に運転が開始されました。その後、多くの原子炉が建設されました。しかし、これらの原子炉の寿命が近づいた2000年代になっても、原子炉の廃炉対策や廃炉処置は全くとられず、むしろ日本は「郵政3事業民営化」や貸し切りバスの「規制緩和」などに熱中していたように感じました。そして、2011年3月にあの原発事故が起きました。
今の日本の政治を見てみますと、「株価の値上がり」や「円安」に夢中になっているのではないかと案じられることがしばしばあります。ゆめゆめ国民の安全確保がおろそかにならないことを期待します。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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