最近、世代間ギャップのテーマでの講演のニーズが多いのですが、どの会社も若い人たちとのコミュニケーションに苦労しているようです。なかでも、「ゆとり世代」と呼ばれる人たちの扱いについて悩んでいる上司の方が多い。今回は、このゆとり世代の人たちについて、その特徴や接し方をまとめてみたいと思います。
ゆとり世代とは、1987年から2004年に生まれた人たち(2016年現在で、29~12歳)のことを言い、国の教育指導要領が「ゆとり教育」をうたった時代に教育を受けた人たちのことを言います。当時は、それまで学力を重視するあまり、子どもの人間性が阻害され、いじめ、不登校、引きこもりといった社会問題が起きていました。そしてこれらの原因が学力偏重型の詰め込み教育にあるのでは、ということになり、授業時間を3割減らし、経験重視の学習に変えよう、という試みだったのです。
そのねらい自体は悪くなかったと思うのですが、単に勉強時間を減らせばいいという短絡的な発想が良くなかったのか、あるいは積極的に考えたり、創造したりさせるためのしくみづくりをしていなかったせいでしょうか、学習能力は極端に落ち込み、世界で行われるPISAという学習到達度調査の結果は、大きく後退しました。
また当時はバブルが崩壊し、会社の倒産や親のリストラなどにも直面し、こうした世の中を見てきた若者たちは、会社や社会に対する期待はなく、自分の身を守ることのほうに意識が向いてしまいました。これらの要因もあり、ゆとり世代の人たちには次のような特徴があるといわれています。
ここで大切なことは、「なぜ、そうなのか」という理由を考えることです。相手の立場に立ってなぜそうなのかを考えてみれば、「ではどうすれば動いてくれるのか」というヒントも見つかりやすいはずです。以下、私なりにその理由を考えてみました。
指示待ち
理由→学校では、用意されたことに対して行動すればそれで褒められた。運動会の「手をつないでゴールイン」からも想像できるように、競争を悪とされ、みんなで仲良くが優先された。言われたことさえやっていれば、目立つこともないので、その受け身な姿勢がデフォルトになってしまった。
プライベート優先
理由→バブル後の社会を見て、会社はいつダメになるかわからないという不安が常にあるため、人生を仕事にかけることにリスクを感じている。ならば自分の時間を充実させたほうがいいと考えている。
結果をすぐに欲しがる
理由→教育の現場で、少ない学習時間で結果を出すためには、目標設定も低くなり、考えさせる時間もとれなかった。おまけに情報技術も発達し、グーグル検索のように「ググればすぐ結果が出てくる」というのが当たり前になってしまった。
自己成長以外に興味なし
理由→会社には思い入れがないし、どこにいっても使えるスキルを身につけることが自分の身を守ることにつながるから。
打たれ弱い
理由→叱る大人がいない中で育っているため、叱られると全人格を否定されたように思う。
こうしてみると、彼らに同情するわけではないのですが、彼らがたまたま育った時代の教育方針や経済情勢のために、そういう価値観が植え付けられてしまったのかもしれず、一概に彼ら個人のせいとは言えないかもしれません。
では、そんな彼らにどう接したらよいのでしょうか。課題のハードルを下げる、叱らない、小さい成果を認めていく、などの細かいスキルを上げることはできますが、一番の根本は、仕事の面白さを上司が見せる、ということではないでしょうか。
やはり、仕事は、やるからにはそこに相手の喜びや自分の成長、社会への貢献というつながりがあるべきですし、ないとただの時給バイトと同じで、きっと面白みが感じられないはずです。
今やっている仕事が、お客様のどんなメリットにつながるのか、自分が感じている喜び、自分の仕事に対する哲学、仕事を通じて得られた学びなど、上司である私達が感じているポイントがたくさんあるはずです。そこを彼らに伝えているでしょうか。
確かに、彼らの人生観はバブル世代(現在50歳前後)とは違い、仕事が人生のすべてではありません。仕事はそこそこやって、そこそこのお給料をもらえば満足、という人が多数を占めるのも事実です。でも、多くの時間を費やす仕事の中に、こんな面白さや発見があるよ、という視点を見つけたとき、何かが彼らの興味や哲学にひっかかるかもしれません。
最初から、「どうせ話してもわからない」とあきらめず、相手の趣向や価値観をよく観察し、そこにつながるような見方を提案していくのが、上司たる私達の責任だと思います。
次回は「育てる側の心構え~上司に足りないもの」について考えます。どうぞお楽しみに。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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