【対談のお相手】
岩井結美子
(産業カウンセラー/メイクセラピスト)
ベンチャー企業の営業を経験後、健康事業を手がける企業に勤務。売上を3倍に増やす。98年、フリーでカラーセラピストとしての活動を開始し、産業カウンセラー資格取得。医療機関(心療内科)に心理カウンセラーとして勤務。企業研修講師なども行う。心療内科で女性患者にメイクをしたことをきっかけに 「メイクセラピー」を開発。著書『美人セラピー』。
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川村:今日は岩井結美子さんをお迎えして、もののみかたとメンタルタフネスについて考えていきたいと思います。
さて岩井さん、ここ数年でメンタルヘルスに対する関心はとても高まっているように思いますが、そのことについてはどのように感じていらっしゃいますか?
岩井:確かにメンタルヘルスの研修は増えていますね。それは、圧倒的に鬱病などの精神疾患に罹られる人が増えたことによって、休職者や退職者が増えたからなんです。鬱病などにより日常生活が送りずらくなることをメンタルヘルス不全というのですが、そうなってしまうと職場にこられない、出てこられたとしてもミスが出てしまうなど、企業にとっては生産性の低下にもつながってしまう恐れがあることから、重い腰を上げて研修せざるを得ないということでしょうね。また、いわゆる「できる人」と評価の高い人がメンタルヘルス不全になりやすいとも言われているんですよ。
川村:なるほど。鬱病と診断される人も最近急に増えましたよね。
岩井:そうですね、鬱病に関する情報が今までより多く流れるようになって、気軽に病院に行けるようになったことも大きな理由でしょう。
川村:そもそも鬱病の原因はどのようなものなのでしょうか。私たちはなんとなくわかったつもりになっていますが・・・
岩井:鬱病の原因は諸説ありますが、その原因のひとつと言えるのはコミュニケーション不足です。
インターネットが普及した社会ではコミュニケーションがメール中心になってしまうと、その場でやりとりがすぐにできずに自分でいろいろ考えてしまってマイナスのスパイラルにはまってしまいます。メールの文面だけでは、その人が怒っているのか笑っているのかが判断できない為に、自分の想像が膨らんでしまいがちです。きっとこうに違いないと決めつけてだんだん人と向き合うコミュニケーションが取れなくなっていくのです。
もうひとつには、成果主義の導入で会社内での競争が激化しているために、個人主義的にならざるを得ず、親密な人間関係の構築が崩れたことでストレスが加わってしまうことが挙げられると思います。競争ばかりを追いかけていくと、ライバル以外の関係を作りにくくなってしまうんですね。
ふたつに共通していることは、それしか答えを見つけられなくなってしまうということです。「あの人はきっと怒っているに違いない」、「彼はライバルだから本心は言えない」というように、自分が思ったことのひとつしか答えがないと思ってしまうから、悪い方へ考えが固定されるとストレスを作り出してしまうのです。鬱状態など、メンタルヘルス不全に陥りやすい人は、ネガティブな思考に寄りがちですから、そのまま考え方が固定してしまうと、そこから抜け出せなくなってしまうのです。ひとつの方向からしかものごとを見られないのですね。
川村:私のいうところの「もののみかた」がひとつしかないと言うことですね。
岩井:そうです。出来事に対して受け止め方がひとつしかないと、事実が正しく認識できなくなってしまう。それを心理学では「認知の歪み」と言います。それが強いストレスを生み、鬱などの精神的な病を引き起こす原因となるのです。
川村:鬱病は認知のゆがみが引き起こすストレスでおきるんですね。
岩井:ええ、それも一つの要因です。心理療法で治療するには、認知療法といって意識的に受け止め方を変えていくことをカウンセラーや臨床心理士と一緒にやっていきます。「もののみかたを変える」ことをトレーニングしていくんですね。
川村:「もののみかたを変える」ということは、心理療法の手法にも使われているんですね!トレーニングは、具体的にはどのようなことをするのですか?
岩井:そうですね、トレーニング方法はたくさんあるのですが、特に鬱病の患者さんを対象にというわけではないのですが「もののみかたを変える」面白い方法があるんですよ。それは私が開発したメイクセラピーの手法です。考え方を変えるのはトレーニングが必要なくらい、難しいことですよね。でも自分の外見に対する悩みや不満が足を引っ張りメンタルヘルス不全になっている場合は、まずメイクで外見の印象を変えることによって、自分自身に対する「もののみかた」を変えてもらうんです。
自分が変わるには精神面からでなくてもいい、外側から内側へというアプローチによって「もののみかた」を変えることで、一歩をなかなか踏み出せなかった人がそこから抜け出すことができるようになるんです。
川村:メイクセラピーですか。それは面白い手法ですね。みなさんかなり変わられるんですか。
岩井:はい、外見が変わりますから、単純に「変身」という意味でも変わります。でもそれよりも変わりたい、こうなりたいという思いがある人たちなので、なりたかった自分に変わった姿を鏡で見ると、表情や態度、言葉づかいまでもが変わってきます。行動が驚くほど積極的になられる人も大勢いるんですよ。
川村:外見から自分を引き上げていく。セルフプロデュースにも通じますね。
岩井:そうかもしれませんね。自分の今の現状を人のせいにしているとうまくいきません。原因は自分以外にあると周囲にフォーカスしていると、周りが変わらない限り自分も変われない。でも周りはなかなか自分の力ではどうにもならないですよね。周りとは、会社や社会だったりすることもあるわけですから。それらが変わることをひたすら待っていると無力になってしまうでしょう。原因は自分にあるんだということを受け止め、自ら修正するスタンスを取られるようにならなければ、行き詰った現状からは脱出するのは難しくなります。
川村:そうですよね。私も自分の見方が自分の現実を作っているということを確信できる出来事があった。「もののみかたを変える」という考えの根本はその出来事なんですよ。でもそういう体験をすることがないと、実感としてわかりにくいですよね。
岩井:受け止め方さえ変えれば、嫌いな人へも感謝できるようになりますよね。
川村:そうなれば、ストレスも減りますね!他に、もののみかたを変えることを応用して、メンタルタフネスを鍛える方法ってないでしょうか。
岩井:メンターを見つけるというのも有効だと思います。答えをひとつしか見つけられないとき、その他の答えを示してくれる存在。そういう人をみつけることで、マイナスのスパイラスにはまらない思考が定着します。
川村:そういう意味では、自分で決めないということも必要なことなんですね。私も最近は自分でわからないことに関して、無理をして自分で決めず専門家に任せるようにしています。やっぱりうまくいくんですよね、そうすると。それに、メイクセラピーと同じように外からのアプローチもいいんじゃないですか?
岩井:はい、ひとつの物事だけに思考を占領させないためにも、スポーツをしたり、ジムに行くという体を動かすことも効果的です。
川村:日常的な行動だと、掃除や映画を観て泣くとかストレッチとかも簡単にできそうですが、どうでしょう。
岩井:いいですね!日常で簡単にできることは継続できるのでいいと思いますよ。他に私が続けている方法としては、誰かの役に立つことをするということです。電車でお年寄りに席を譲るなど、誰かの役に立つことで自己肯定感が養われ<自分の価値を上げる>ということに繋がり、自分を好きになれます。
川村:自分を好きになるには、自分に許可を出してあげるということも大切ですよね。今の自分で十分だと思うだけで、背負っているものが軽くなるというか。
岩井:そうですね。いろいろと自分でできる方法もありますが、メンタルタフネスを鍛えるということは精神疾患の予防の意味も含めて本当に大事なことです。個人だけでなく、企業ももっともっと様々な切り口で取り組んでいって欲しいと思います。
川村:本当にそうですね。企業は人が作っているものですし、人が元気であることが元気な企業であり続けるための要因だということも、忘れてはいけないことですね。岩井さん、本日はありがとうございました。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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