鳩山政権の支持率はじわじわと下がっているが、自民党の支持率はいっこうに上がらない。昨年の衆院選で大敗を喫して、まるで瓦解してしまったかのように見える。参院選の後任をめぐって、比例区は70歳以下としたルールを「大物」にも適用するかどうかで、谷垣総裁はずいぶんと長い時間かけてしまった。最終的には特例は認めないということで決着したが、時間をかけすぎたことで谷垣総裁の求心力にはいっそうの疑問符がついてしまった。困ったことに、現在の自民党では二大政党制の受け皿になりえないと考えている人が増えている。
民主党がしっかりしていれば、自民党が再生する、あるいは、新しい政党ができて(たとえば「みんなの党」)それが政党再編の核になることをじっくり待つだけの時間があると言えたかもしれない。しかし少なくとも今のところは、民主党が安心して政権を任せられる政党と言うことはとてもできない。その意味では、さっさと二大政党制の受け皿になりうるだけのコアを誰かがつくらなければいけないと思うが、それだけのリーダーは見当たらないとある財界人は語っていた。
昨年の衆議院総選挙後に政界再編が起きると考えていた政治アナリストは多かった。民主党が比較第一党になっても、衆議院で過半数を占めることができず、その結果、連立、そして分裂再編という道をたどる可能性があると見られていたのである。
しかしそうはならなかった。民主党が圧倒的に勝ってしまったからである。圧勝した政党を割って出ようという政治家はなかなかいない。それは当然である。次の選挙のことを考えたら、国民の支持を得た政党にいたいと思うのが人情だ。民主党から離党する人が出なければ、政治再編になりようがない。
その意味では参院選で民主党が惨敗したら、政治再編気運が盛り上がるかもしれない。しかし民主党を惨敗させる政党はどこだろうと考えると、民主党は大きく敗北することはちょっと考えにくい。つまり今度の参院選でもまた、民主党が消去法で勝ってしまう可能性が高いということだ。
政界再編が行われないと日本の政治の変革が進まない。政界を再編する理念の軸が何か、という議論が進まないからである。どちらかといえば、企業寄りの姿勢をとる自民党と、労働組合寄りの姿勢をとる民主党。それならば分かりやすくいいかもしれないが、問題もないわけではない。
いま必要なのは、政治も含めて日本というシステムをどう変化させていくかという問題である。しかし民主党を支える労働組合は、基本的には保守勢力である。自分たちの利益を守ることに汲々としているというのが実態だろう。実際、派遣労働者問題では、正社員からなる労働組合は派遣労働者に決して優しくない。自分たちの利益を守ろうとする団体や組織は基本的に保守的なのである(かつては労働組合は「革新勢力」として扱われていたが、もはやそれは昔の話になってしまった)。
いまや日本に本当の意味で、日本社会を変えていこうとする勢力はいないようにすら見える。かつてGE(ゼネラルエレクトリック)を経営していたジャック・ウエルチは言ったことがある。「何ごとも変えるということから始まる」
つまり変えた結果、状況が良くなるか悪くなるかを延々と議論しつづけることより、まずは変えるというところから出発するほうが結果がいいということである。企業などでも、変えるという議論を始めると、変えないほうがいいという理由を並べ立てる人がいる。その議論は、多くの場合、変えてもよくなるかどうか分からないという論点に終始する。これは実はナンセンスな議論なのだ。そんなことに頭を悩ますよりも変えることによって新しい可能性が生まれることに賭けるほうがよほど生産的かもしれない。
経済や経営はもちろんそうだし、政治さえもその例外ではない。
藤田正美ふじたまさよし
元ニューズウィーク日本版 編集長
東京大学経済学部卒業後、東洋経済新報社にて14年間、記者・編集者として自動車、金融、不動産、製薬産業などを取材。1985年、ニューズウィーク日本版創刊事業に参加。1995年、同誌編集長。2004年から…
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