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コラム 政治・経済

2017年03月01日

トランプ政権の政策と日本経済への影響

 1月20日のトランプ大統領の就任後もアメリカの政治は迷走しています。今回は、トランプ政権の基本政策を整理するとともに今後の日米関係、とりわけ日本経済への影響について触れてみます。

米国共和党の基本政策や支持層

 トランプ大統領は共和党の候補者として当選しました。トランプ大統領の政策は必ずしも共和党本部の基本政策と一致しておりませんが、影響は少なからずあります。表1は民主党との比較の中で共和党の基本政策や支持層を示しました。ただ、表1で示した両党の特徴は絶対的なものではありません。たとえば、労働者の中には共和党を支持する人もいますし、逆に白人中年男性の中には民主党を支持する人もいます。表1は両党の大まかな傾向であるとお考えください。
 なお、民主党の候補者であったクリントン氏は民主党本部の基本政策をベースに、さらには予備選挙を争った有力候補の政策を採り入れて大統領選挙を戦いました。

表1 米国・共和党と民主党の比較

 大統領選挙においてトランプ陣営では候補者の評判や人気が高くなく、集まった選挙資金もクリントン陣営に比べて少ないなどの事情もあり、それを挽回するために相当過激な戦術を駆使したようです。特に、実現不可能なことや、大衆を煽るようなことを次々と発言しました。さらにトランプ候補の戦術は選挙に勝つためには事実でないことも言ったり、「悪名は無名に勝る」の諺通り、マスコミや国民の注目を集めるために刺激的な発言を繰り返しました。
 クリントン候補が高額所得者の減税を打ち出したのに対抗して、トランプ候補は大企業の法人税の減税のほか、低額所得者から高額所得者に至るまでの減税を主張しました。ただ、トランプ候補は減税を行うための財源には一切触れてはなく、減税の大判振る舞いを行った後、米国の財政はどうなるのかと心配です。
 トランプ大統領は選挙に勝つためには大衆受けのいい主張を繰り返しましたので、どれが本気の政策か、どれが選挙に勝つための裏付けのない政策かは現時点でもなかなか判断ができない状況です。
 なお、米国のある団体の調査によりますと、選挙戦におけるトランプ候補の97件の発言を調査したところ、55件が大きな嘘、22件が深刻な事実誤認,17件がその他の事実誤認、3件のみが真実と判断されたとのことです。

トランプ大統領の基本政策と影響

 これまでトランプ大統領が主張してきた主要な政策と、ドルや米株価への影響については表2の通りです。ドル高は円安に、ドル安は円高になります。また米株価と日本株価は連動性がありますので、米株価が上がりますと日本の株価も上がると考えて良いと思います。
 残念ながら、トランプ大統領の経済政策には整合性はほとんどないようです。ドル対策をとっても、ドル高に誘導する政策がある一方でドル安に導く政策もあります。
 なお、大統領選挙の直後からドル高、米株高が続きましたが、これは大統領選挙の結果待ちで、どちらが大統領になっても同じ状況になったのではないかと考えられます。

表2 トランプ大統領の基本政策と影響

 トランプ大統領の政治を占う手掛かりの1つに、レーガン大統領との類似性があげられます。カリフォルニア州知事の経験あるレーガン大統領は共和党から出馬して1980年に当選して2期務めました。レーガン大統領もトランプ大統領と同じように、強いアメリカ外交や大企業よりの経済政策を主張しました。レーガン大統領は各分野の有能な人を閣僚に登用して、意見をよく聞き政治を任せました。有能な人を使いこなす度量と能力がレーガン大統領にはありました。トランプ大統領は選挙戦中に次々と打ち出した矛盾した政策を是正できるかどうか、専門家の意見に耳を傾け、有能な閣僚に権限を委ねることができるどうか、これからの動向が注目されます。
 トランプ大統領は選挙中から日米安全保守に関して事実誤認と思える発言が続いておりましたが、マティス国防長官の就任後は相当是正され、最近は日米安全保障に関して「日本に感謝する」という内容の大統領発言もありました。

日本経済への影響と様々な可能性

 トランプ大統領が今のまま整合性のない政策・言動を続けた場合は、米国経済は低迷していくことになるでしょう。逆にレーガン大統領のような政治を行い、現実路線に修正されれば米国経済は好調に進み、日本経済にもプラスの影響がでることでしょう。
 TPPは不発効となるでしょう。しかし、日米の交渉が行われ、TPPで大筋合意した内容をベースに二国間の自由貿易協定が結ばれることになれば、日本経済にはプラスになります。
 ただし、日米経済に極めて大きな影響力のある商務長官、財務長官、労働長官は、この原稿を書く時点でも決まっておりません。従って、今直ちにトランプ政権の日本経済への影響を見極めることはまだまだ難しい状況です。

アメリカ政治の混迷を読み解く鍵は何か

 トランプ大統領のメキシコ国境に壁を作るなどの常識を超えた政策や、女性に対する数々の不適切な発言に対して、多くのアメリカ人は支持しておりません。しかし、特定のイスラム国からの入国禁止措置についてはほぼ半分の国民が支持しています。個別の言動には不支持が多いのですが、それでもアメリカ国民がトランプ大統領を選んだ理由は何であるかを理解することが、今後の日米関係を読み解く鍵になると思います。

 一般の報道ではほとんど伝えられていない何かが今のアメリカ社会に露呈し始めているようです。その現象を分析して、少ない情報から今のアメリカの病巣のようなものを見出すことにより、日米経済の今後を正確に展望することができるでしょう。このような観点から、私は今後もコラムを書いていきます。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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