11月初旬、マレーシアの首都であるクアラルンプール(KL)を訪れた。アジア12カ国から20名が集まり、金融が環境に果たす可能性について3日間、ホテルに缶詰状態で議論をするためであった。
KLはマハティ―ル元首相の唱えた「ルック・イースト(東方政策)」で見事に近代化を成し遂げた街である。世界一を争う超高層ビルと回教(イスラム教)のモスクが立ち並ぶ典型的なアジアの近代都市である。なぜ、元首相は東を見よと言ったのかというと、それは先にアジアから世界の大国にのし上がった日本を見習えということであった。
さて、その国際会議だが、テーマは経済と環境の共存は可能か、それに金融はどう貢献すべきか、である。一般の日本の感覚からいうと、アジアではまだまだ経済成長が優先され環境などは見向きもしなと見られがちだが、そうではない。各国ともそれぞれの国の経済発展段階での環境問題に悩まされているのである。
パキスタン、インド、バングラデイッシュ、それにネパール。かつて英国植民地として一つの国であった。いまではそれぞれ独立しているが、彼らに共通する問題は水と農業である。インドなどでは農業用水の地下からの汲み上げが環境破壊につながっている。食糧かそれとも環境か。身を切るような選択である。 いち早く経済成長を成し遂げたタイやマレーシアは工業がもたらす環境破壊である。ASEANの中でも比較的に開発の遅れたフィリピンだが、開発と環境のバランスに苦労をしているのである。
各国それぞれのお家の事情があっても皆が関心を持っているのが温暖化である。フィージーの大臣は投資の最大の狙いが温暖化の被害からいかに国を守るかにあると明言していた。アジアの中では日本は何と言っても最大の先進国である。温暖化の原因を作ってきたのはその先進国である。その日本が温暖化対策を通じてアジアの人々に責任を果たす。そんなことを強く持った小さな国際会議であった。
末吉竹二郎すえよしたけじろう
UNEP金融イニシアチブ特別顧問
東京大学を卒業後、1967年に三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)に入行。1998年まで勤務した。日興アセットマネジメントに勤務中、UNEP金融イニシアチブ(FI)の運営委員メンバーに任命された。現在、アジ…
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