先日、仕事の移動中に、オフィス街にあるレストランでひとりランチをしていた時のことです。タイ料理のお店だったからか女性だけのお客様が多く、「会社のお昼休みに同僚や先輩たちと一緒に」といった雰囲気の方たちが中心でした。
さて、そこのランチはとても美味しかったのですが、私はどんどん気分が落ち込んでいきました。その理由は、どのグループも会社や上司の愚痴ばかりで、最初から最後までプライベートの楽しい話をしているグループではなかったからです。話し込むうちに益々ヒートアップし、悪口はどんどん加速していきます。私も聞かなければいいのですが、どのグループもそんな感じでどうしても耳に入ってきてしまい、レストランが半地下だったこともあり、空気はどんどん重くなっていきました。
でも仕事柄、大事な情報収集と気持ちを切り替えて、話に耳を傾けてみることにしたのですが、面白いことにどのグループにも共通したタイプの人がいたのです。それは愚痴、悪口に参加しない女性です。特徴的なのは、たまに頷きながらずっと会話を聞くだけで、ネガティブな話をするわけでもなく、かといって自ら言葉を発することも前向きな提案をすることもないのです。
そんな様子を見ていて、以前、雑誌でOLのお悩み相談コーナーを受け持っていたときのことを思い出しました。
相談内容の中にこんなものがあったのです。「会社の人間関係にどうしても馴染めません。お昼は女性陣みんなで声を掛け合い外で食べるのですが、できれば一人でいきたいです。でもそれを言うと変に思われるので、我慢して行っています。理由は、女性だけでは男性や上司たちの悪口、会社の愚痴しか話題に上ってこないからです。ごはんもおいしく感じないし、何よりも低レベル過ぎて辛いです。今任されている仕事は嫌いではないし、もっと今の会社でチャレンジしたいこともある。でも、そんなやる気を少しでも見せたら仲間外れにされるのではないかと思って、今はただ静かにしています。こんな会社、辞めた方がいいのでしょうか?」
ランチであまり積極的に参加していない女性を見て、ふっとそんなお悩みを受けたことがあったなと思い出したのです。
もしかすると、静かに頷いている女性の中には相談コーナーと同じような気持ちの人もいるかもしれない。そんな風に思いました。
実際、私にもOL経験がありますが、特に事務職女性だけで集まると会社や上司の愚痴が次から次に出てきます。「もっとちゃんとやってくれないと困る」「上司が全然仕事ができない」など。●●してくれない、こうしてくれないから困る、といったいわゆる他責が中心でした。確かに、上司や会社の体制が悪いところはたくさんあります。でも、そんな過去を振り返ると、自分で何か提案したり、解決しようとしたかといえば、そんなことはありませんでした。「誰かがやるべき、やってくれるもの」。こういう意識だったように思えます。
さて、なぜそのような意識になってしまうのかというと、大きく2つある気がします。
1つは視野が狭い。社内でのデスクワークが中心ですと、見えている視界が狭くなります。自分の周辺の世界だけで正論を言ってしまうのです。確かに言っていることは間違っていないけれど、視点が低い。そして「意識が低い」と思われてしまいます。
そしてもう1つは、ちゃんと評価されていないことへの不満です。事務の仕事は、営業などと違い成果が目に見えづらいです。評価も抽象的になりがちです。そんな中、「やって当たり前」と思われているのを感じたり、事務は大した仕事じゃないと上司が軽んじていたりする様子を感じ取ると不満が爆発します。
そうすると、お互いの信頼関係が揺らぎ、良い仕事ができなくなります。
さて、話を戻しますと、ここでの対策は2つあります。まず上司や会社は、事務職の人たちを「きちんと受容し、認め、評価し労うこと」。そして視野を狭く持たないように「きちんと全体の説明をし、情報を下ろすこと」。時には相談するなんてこともよいでしょう。
そしてもう1つの対策は、ランチの中ではずっと黙ってしまい、本領が発揮できていない女性にいち早く気づき、「チャンスを与えること」です。
では、実際にどうやったらいいのかについては、次のコラムでお伝えしたいと思います。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
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