安倍晋三首相が成立に意欲をみせる「働き方改革関連法案」。今年は日本の少子高齢化問題に対し、政府は積極的に推進していく様子です。私は企業研修やコンサルティングで、様々な企業が「人」の問題で頭を悩ませているのを実感しています。新卒も中途採用も思うような質と量が期待できない中、今いる社員を本当に活用できているのかということに紐づいて、女性リーダー育成の手伝いをしています。
数年前から、女性課長職育成に取り組んでいる会社は、一期生の女性管理職もすっかり育ち、今ではよきロールモデルとなっています。つい先日、ある会社で管理職候補として選抜され、定期的な研修を受け、その後課長に登用され、1年間課長職を経験した方たちの最後の研修を担当させていただきました。
彼女たちは、30代~40代が中心で、子育て中の方も半数ほどいらっしゃいました。その中で課長の役割を担えるんだろうかと不安で、最初に課長にならないかと打診されたときは、断る人もいたようです。しかし、1年経った今、質を落とさず、時間も上手にやりくりしながら課長職を担っている様子がうかがえました。彼女たちの発言を聞いていると、2つのポイントが見えてきました。1つは、『ムダの排除』、そしてもうひとつは、『人』です。今回は、1つめの『ムダの排除』についてお話してみたいと思います。
「これってムダですよね?」「こうしちゃった方が早くないですか?」「それよりもこっちをやった方がよくないですか?」ある男性管理職が、女性部下から言われてイラっとするセリフだとおっしゃっていましたが、実際、女性は度々このセリフを口にします。その男性管理職によると、「そんな簡単なもんじゃない」とのこと。でも、一理あるんだよなとも思っている。そんなことも一言おっしゃっていました。
諸説ありますが、男女で脳の構造が違うということを踏まえると、成果につなげるまでのプロセスが異なって当然です。その中でもよく言われるのが、女性はマルチタスク、男性はシングルタスク。ですから、女性は、あれもこれも同時に押し進めたり、その都度優先順位を変えたり端折ったりすることができます。一方、男性は、一つ一つのプロセスを順番に進めていきます。つまり、一遍にあれこれ同時に言われると、ストレスがたまるとおっしゃる方は、男性脳の可能性があります。
私は管理職を担うことになった女性たちに、今までの仕事のプロセスを見直すということも研修を通して実施してもらうのですが、お互い自チームについて話し合いながら、全体を可視化して見直していく中で、仕事のプロセス、緊急性のある課題とそれなりの重要度の課題の組み合わせなど、バサバサと仕事を整理していく様は、圧巻でした。
まさに働き方改革です。自分が課長になってから、実感として、みんなが早く帰れるようになったことをうれしそうに語る方もたくさんいらっしゃいます。そして何よりも、ライフイベントを抱えながら課長を担う女性は、両立できることを体現しています。
しかし一方で、チームの働き方を変えることに悩んでいる女性課長もいらっしゃいました。研修中、グループワークを通して周囲からアドバイスを受け、自分でもこうしたら効率的になると思ったやり方を実行しようと現場に持ち帰ったら、上の部長がNGを出してきました。まさにその時に言われたことが「そんな簡単なことじゃない」だったそうです。残念なことに、この働き方改革での弊害は、40代~50代の既存の部課長・・・なのです。今までの働き方を変えるのは、慣れていないですし、イメージができない。何よりも働き方への価値観を変えがたい。そんな方がたくさんいらっしゃるのです。
しかし、変えなければ、課長である女性自身も大変ですし、部下もいつまで経っても早く帰れません。そこで、ムダを省きたい・省く方法はわかっているのに、弊害があるという課長へ、以下のようなアドバイスをしています。
① 目的、ゴール、あるべき姿を話し合う
成果を出すというゴールは同じで、やり方の好みが異なるだけ。それをわかってもらうためにも、成果は出せるという理由を丁寧に説明し、説得する。
② 乱暴に聞こえるかもしれませんが、「進めてしまえ!」
それでも進まない場合、承認を待っていても前に進められません。まずは結果を出してから、説得するという方法です。
この時は、あからさま働き方を変えようとしていると思われないように、気を付けつつ、ほかにも味方となる上の人や他部署の人に相談しつつ、進めていけるとよいでしょう。
私は、女性管理職が増えれば、早く帰れる仕組みができる。そんなことを実感しています。
次回は、できる女性管理職がやっている、『人』に関するコツについてです。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
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