平成26年、女性活躍推進法が成立しました。その後、皆様の組織は、女性活躍が進んでいると実感できますでしょうか。私がお伺いした感じでは、会社によって進捗具合は、まちまちですし、また人によって、感じ方もそれぞれという印象を受けました。
具体的には、以下のような意見をいただきました。
「うちは進んでいるよ。だって、女性も辞めなくなったし」(男性の意見)
「女性の管理職比率を上げたいと思っていて、チャンスは与えているのに、誰もやりたがらないんだよ。女性の意識が変わらないね」(男性の意見)
「女性は総合職で男性と同等に採用されているのに、上司は男女だと仕事の差をつけて、割り振る。もっと頑張りたいのに」(女性の意見)
私の感覚ですが、多くの組織で女性活躍が進んでいないと感じているのは、男性より女性の方が多い感じがします。
特に女性側からは、主に「風土の問題」と「上司の偏見」の2つの声があがります。
まず、風土の問題としては、どの企業でも、以下のような声をお聞きします。
「時短などを活用した育児支援は進んでいるものの、その場しのぎのものが多い。」
「相変わらず、残業できることを前提として部下を評価しているため、時短社員は使えないと思っている上司も多く、上司側が、時短で働く部下をマネジメントできない。」
そして何より、管理職になりたくない理由の一つとしては、本人側が、今の組織では、家事や育児を両立できるか、など働き方を含め、不安を感じるため、やる気がないというより、難しいのでは、と感じてしまっている。
そしてもう一つの、上司の偏見についてですが、最近よく言われている「アンコンシャス・バイアス」に相当します。これは直訳すれば、無意識の偏見となりますが、文化的なものも多く、〇〇はこうあるべき、普通〇〇はこうであるはず、と思い込んでいるものです。男女間のアンコンシャス・バイアスで言えば、「電話は女性が取るもの」「女性がお茶を入れた方がおいしい」「男性の方が管理職に向いている」「男性は運転がうまい」など無意識に口にする様子は、よく見受けられます。これらは、農業革命からどの国でもあった家父長制が影響しているそうです。男性は男らしく考え、行動するように、女性は女性らしく考え、行動するように教育し、その境界をあえて踏み越える者は罰したり、批判するという長い歴史の文化的背景が無意識に存在するようです。しかし、そこにはなぜなのかという明確な理由が見つからないのだそうです。
(サピエンス全史参考文献)
さて、このような長い歴史からの偏見を急に変えるのは難しいと思う一方で、この著書にあるように、引き継がれてきた「教育」が理由と考えるなら、今の子供たちは、平等・同等である教育を受けているはずです。だからこそ、社会人の若手は、特に男女差を意識せずに働いているように見えるのです。少し時間が経てば、男女同等に活躍できる社会というのが普通になっていくと思われます。
今は、その過渡期といえます。なぜなら、世代が上の男女は、アンコンシャス・バイアスがお互いにあるからです。先日、ある女性から、自身の男性上司が女性への偏見が強いため、仕事も雑用しか任せてこない。もっとこれをやりたい、と訴えても流されてしまうという相談をいただきました。きっと、その男性上司は、悪気があるわけではないのです。女性にはこっちの仕事の方が得意だろう、女性はこういった雑務をする役割だと思い込んでいるため、どんなに訴えても、右から左へ流されてしまう。また、しつこく主張をしてくる女性に対しては、だから女性は感情的で困るんだよ、くらいに思っているかもしれません。しかしながら一方で、女性側にもアンコンシャス・バイアスがはたらいている可能性があります。これは、男女間というより、上司に対する無意識の偏見です。「上司なんだから・・・」「上司だったら普通・・・」と、上司のあるべき姿を勝手に描いているケースです。これもアンコンシャス・バイアスで、女性はこれによって、がっかりするのです。
この相談をしてきた女性には、頑張って相手を変えようとせず、違う味方を社内に作ることをアドバイスしました。
組織全体、特に経営層や管理部門は、変化すること、多様性を活かすことを命題だと思っています。組織が世の中に合わせてどんどん変化しなくてはならないと思っている一方で、現場がなかなか変わりづらい理由は、ここにあったのです。女性が活躍しようと努力すること、男性と同等の仕事をする中で成果を出そうとすることは、間違っていません。女性のみなさんは、疲弊しないためにも、先ほども述べたように、味方を社内に作るなど、頑張り方を変えていくことも賢く身につけてほしいと思っています。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
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