現在、私は大学生のキャリア支援、就職支援にも携わっています。最近の大学の傾向として、低学年のうちから将来のキャリアについて考える「キャリア形成(デザイン)講座」を必修科目として設ける学校も増えています。こういった講座を受講することで、大学生たちは必然的に、早い段階から将来の仕事や働き方を考える時間を設けられます。
学年が上がるにつれ、徐々に、現実的に自身の進路を検討いくわけですが、大学1-2年生のうちから将来を考える機会があっても、シュウカツをスタートする際「何から手を付けたらいいのか」、「どのような方向性に絞ったらよいのか…」、と皆目見当がついていない学生が大勢います。講座で私は、必ず最初に「就職したい方向性が決まっている人!」と尋ねて手を挙げてもらうのですが、手があがるのは1割程度。「方向性が決まっている」に手を挙げる学生の理由は、「公務員を目指している」「好きなことを仕事にしたいと思っているため、業界が決まっている」が大半です。
では、残り9割の学生はどうするのか、というと…。社会にどんな選択肢があるのかよくわからないまま、まずは「大手」と「中小、ベンチャー」、それに加えて女子生徒の場合は「総合職」と「一般職」に分ける。方向性を決めるために、ひとまず業界を絞る、という行動です。”とりあえず金融”とか、”とりあえずメーカー”とか。女子学生の場合は上記に加え、「働き方」という選択ポイントが入ってきます。
「バリバリ働きたい(=”バリバリ志向”とします)」と考えるか、
「ソコソコでいいや(=”ソコソコ志向”とします)」と考えるかで、
働くことへの意識の違いが如実に表れてくるのです。
下記は女子学生の例です。対象的な2つの例ですが、本コラムの読者の皆様は新卒の女子社員を採用する際、どちらの学生を採りたいですか?是非、ご自身が採用・人材育成する様子をイメージしながら読んでみてください。
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■ソコソコ志向 ~「本音は大手一般職希望」
女子学生向けの講義が終わると、数名が駆け寄ってきて質問タイムがはじまるのですが、「総合職か一般職か、決めかねて、両方受けています。どちらがいいんでしょう?」といった相談をたびたび受けます。本当は大手一般職を希望しているが、それでも総合職を受けるかどうか最後まで悩むソコソコ志向の学生は多いんです。
彼女たちに詳しく尋ねていくと、ソコソコ仕事はするけど結婚や子育てもしたい。「総合職だと、それはできないんじゃないか」と思っている。彼女たちの多くは、総合職に対して漠然としたイメージを持っています。総合職=「責任の重さと転勤」、というイメージが直結しており、どんな仕事をするのか良く分からないけれど、組織の中でバリバリ働いて、転勤もいとわない人がなるもの、と考えがちです。
だから、本当の希望は大手の一般職。残業がなく、決まった時間で退社できて、仕事とプライベートを両立できる。なおかつ大手は安定していることはもちろんのこと、産休育休の子育てサポートがしっかりしているのが魅力的。でも、大手一般職は競争率が高いので、総合職にも広げてシュウカツしてみようかな、と考えている。こんな本音をどの大学でもお聞きします。大手企業に魅力を感じているのは、男女共に「安定だから」という理由が多いのは否めません。なかでも、特に一般職を希望する女子学生はその意識が強いようです。
実は私も、最初の就職先は大手メーカーの一般職でした。お恥ずかしながら例に漏れず、仕事はちゃんとやりたいとは思っているけれど、ソコソコの働きでよい、と思って選びました。
■バリバリ志向 ~「成長過程のベンチャー企業で、自分を高めたい」
「私は大手企業を受けていません。設立5年~15年くらいの、成長過程にあるベンチャー企業に絞って受けています」そう意思を固く、シュウカツする女子学生もいます。彼女たちに大手を受けない理由を聞くと、「男性の管理職がたくさんいて、女性が活躍しづらそうだから。実力があれば、性別や年齢に関係なくチャンスがもらえるスピーディーで若い会社に身を置いて早く成長したい」、そうおっしゃる方が多いです。
もちろん彼女たちは、結婚や出産を望んでいないわけでなく、両方を手に入れたいと考えています。両方頑張りたい。だから、先輩の女性社員たちがどのように仕事とプライベート両立しているのかは、就職先を探す上で非常に気になるポイントのようです。就職活動時に企業に確認したいことの本音は、「仕事は持ち帰れるか」「子育てとの両立はどのようにしているか」。また、早く帰れるときは帰りたいが残業があるときは仕方ない、将来子どもが生まれたらパートナーと助け合うか、場合によってはベビーシッターを頼む、という考えも持っています。
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上記、ソコソコ志向とバリバリ志向、2つの女子学生の例を紹介しました。学生は入社前からこんなことを考えて会社選びをしています。入社してくる新卒の意識が違うのは当然のことでしょう。
先日、大手日系企業の人事の方が、「一般職の意識が低くて困っている。どうしたらいいのか」といった質問をされました。学生の声と人事担当者の声、両方から考えると、この問題には2つの原因があると感じます。1つは大手一般職を選ぶ女性は、そもそもキャリア志向よりもソコソコ志向が強いこと。もう1つは受けいれる企業側、および上司たちが、女性の一般職に期待する内容、将来像が明確でない状態で採用していること。
学生の彼女たちの本音を知った上で、将来の自社にあう採用をすることから、何事も始まるのかもしれませんね。一般職に意識の高さを求めるのであれば、「意識が高い」、とは、どういう人物を考えているのか具体的にした上で、採用基準を改めてみることも大事かもしれません。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
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