「女性蔑視発言」になってしまった背景とは?
先日、森喜朗氏が女性蔑視発言により辞任しましたが、まだまだ日本は、特にご年配の男性は、無意識に男性主体の社会ありき、のイメージが抜けないのでしょう。
さて、この発言では「女性がたくさんいる会議は時間がかかる」という内容が問題になったわけですが、今回のコラムでは、女性蔑視という観点ではなく、なぜ森さんがそのような発言をしたのか、について考えてみたいと思います。
異なる思考プロセスに触れると脳はストレスを感じる
まず、会議の時間がかかることを森さんは、快く思っていない、という心理が働いていたのは間違いなさそうです。おそらく、森さんは、女性とディスカッションすることに慣れていないのでしょう。異なる思考回路の相手と関わると、脳がストレスを感じるものなのです。
男女の脳差理論には賛否両論ありますが、ここでは、男女では思考プロセスが異なる、という前提でお話してみたいと思います。
私たちの発言や行動は、頭の中でどのように考えているのか、が表出するものです。男性によくみられる思考の傾向は、似た概念構造のニューロン同士を連携させ、定型、簡潔、合理的に高速処理を行う回路が特徴です。目的に向かって脱線せずに話を進めたり、深く思考することが得意です。一方で、一見脱線とみられる内容でも、付帯情報など議論すべき点を重要なことだと気づかずに見過ごしてしまうことがあります。というか、脱線した話をすることが脳的に苦手でストレスを感じるため、一度目的に向けたスイッチが入ると、戻れない、途中で変更したり、止めたりすることが苦手です。
一方、女性によくみられる思考の特徴は、異なる離れたところにある概念構造のニューロン同士を連携させ、一見関係のない事柄をつなぎ合わせて物事を考える傾向があります。イメージでいえば、ブレーンストーミングをしているような感じで、目的、結論は最後です。これがこうなって、こんなこともあるから、あ、そういえば、あの件もあるから・・・こんな風にあちこち神経線維を連携させて、結論にたどり着きます。そのため、話が脱線し、目的とは違うところに話が進んでいくこともありますが、案外そこに本質があることも、また、深くひとつのことを議論することが苦手、ということも傾向にあるようです。
このように頭の中の回路が異なるので、話したいポイントや話す順序は異なってきます。私たちは相手の話を自分の脳を使って情報処理するわけですが、このように回路が異なる相手の話を処理するのは、お互いにストレスを感じるわけです。
違いを認め合い、融合させることで新たな協力体制をつくる
さて、森さんの話に戻りますが、おそらく彼は、典型的な男性脳。今までは、森さんの脳の構造に合わせて、また、近しい構造の人同士が話し合いのテーブルについていたので、森さんはストレスも少なかったのですが、女性が多い会議では、情報処理ができず、脳が悲鳴を上げていたのでしょう。それが、あのような言葉になってしまったのではないでしょうか。
森さんは、つい思った事を口にしてしまう性格ですが、きっと世の中の男性の中には、言葉にはしないまでも、心の中で、女性との会話にストレスを溜めながら聞いている人も多いことでしょう。
一方、女性側からもこんな声を聞きます。「私の上司は、少しでも話が脱線したり、説明が長くなると、怪訝な顔をするので萎縮してしまう」「で?とか手短に言って、なんて言われると余計焦って話が長くなってしまう」現に私もそのような経験をしたことがあります。
目的を果たすために、合理的な思考も大事ですし、一方、検討のためには脱線しながら情報を集め、検証していくことも大事です。今回の森さんの件をきっかけに、男女の分断があってはいけないと感じています。それぞれの違いを融合させ、よりよい協力体制ができることを目指したいものです。
そのためにはまず、その場の環境を左右する権限を持っている上位者が変わること。会社のトップ、管理職が、自分とは異なる思考回路の人の話をフラットに受け入れ、それを楽しむこと。脳は訓練すれば、慣れていきます。上に立つ人は、心地よい相手だけでなく、自分と思考回路が異なる人を積極的に周囲に集めて、たくさん会話をして慣れてほしいものです。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
個人と企業からの依頼によるキャリアカウンセリングは、延べ17,000人以上の実績。学生からシニア層まで年齢や性別を問わず、自分らしいキャリアデザインをするための選択とアクションに向けたカウンセリングを…
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