既に大手企業ではDXの導入が進んでいる
キャリアに関する研修や講演では、質問タイムを設けているのですが、どこでもよく受けるご質問として、「これからどうしたらいいのか」ということです。確かにこれからの世の中を考えると、平均寿命も延び、長く自身のキャリアを考えていかなくてはなりませんし、そんな中の大きなそしてスピーディな変化として、私たちの将来の働き方や職業に影響を与えるデジタルシフト。
特に今、大手を中心に企業が導入を検討しているのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)です。これは、人手が足りない中、事務職の仕事に係る時間やコストが削減できないか、と考える企業にとって、当然の選択です。
一方で、完全なるDX化は難しいのでは、という声もあり、DXによって、完全に事務職がゼロになるわけではなさそうですが、今の仕事のやり方がすべて残る可能性は低そうです。または、なくなる可能性があります。つまり、今の仕事を続けられなくなる人が出てくる、ということです。
「既にうちの会社は、進め始めています」といくつかのクライアントとの打ち合わせでは、耳にするようになりましたが、それらの企業は、パソコンを使う単純作業を自動化するソフトウェア「RPA」(ロボティック・プロセス・オートメーション)が導入され、事務仕事の軽減が図られましたが、次はDX。着々と進んでいる企業は前進しています。
既にRPA化によって自分の仕事が暇になった、という職種の方も出てきており、「正直、前よりもラクになりましたし、暇なんです。でも、あまり暇って言うと、必要ないと思われてしまうのでは、と思い、忙しそうにしています」こんな声をお伺いすることがあるくらいです。
さて、このようなRPAやDXへの取組みを進めている企業に、その取り組みは社員に伝えられているのか、とお伺いすると「まだだ」、とおっしゃるところが多いことを感じます。まだ確定ではないので、導入が決まったら伝える、ということなのでしょう。
着々と水面下では動いているものを社員が知らない場合、導入された際に「突然に」と感じることでしょう。
事務の仕事はデジタルシフトが進みにくい?
さて、話は戻りますが、遅かれ早かれ、ルーティンワークの仕事は、ゼロではないが、少なくなっていくわけですが、作業的な流れ作業は、すぐにデジタルシフトしやすく、決めたら一気に進めやすい一方、人が関わる仕事、特に事務系が意外と難しいのかもしれません。そこには「気持ちや想い」があるからでしょう。
事務の仕事は、人につきやすいものです。その人が、やり方を変えたくない、この仕事は人じゃないとできない、と思っている、今まで頑張ってきたプライドがある、など、今までのやり方からの変化に気持ちの抵抗感があるからです。そして、自分の仕事がなくなった時の不安もあります。
事務の仕事が、シンプルに合理的にデジタルシフトができない理由がここにあります。
キャリアアップの視点でデジタルシフトを考えてみる
こう考えると、単に会社の仕組みとしてのデジタルシフトを考えるだけでなく、社員のキャリアとセットで考える必要がありそうです。
今のやり方にしがみついていても、その社員は単に物事を先延ばしにしているだけで、キャリアアップにはなりません。社員それぞれが、いち早く変化に気づき、新しいやり方やチャレンジに前向きになることがキャリアアップに繋がります。
会社は労働力の移動がこれからの課題となるわけですが、それを丁寧に移動させるサポートをすることで、誰もが納得してこの先のキャリアを自律的に形成するでしょう。会社として、社員にすべきことは、どのように組織は変化する予定なのかを早めに事実を伝え、今から少しずつ意識してもらうことをサポートできるとよいのではないかと思います。
冒頭で触れたように、研修や講演では、受講者である社員の多くが不安を口にします。漠然と不安を抱えさせるのではなく、正しく不安と向き合い、悩むためには、情報をいち早く下ろすことが大事ではないでしょうか。決まってから、では遅いかもしれません。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
個人と企業からの依頼によるキャリアカウンセリングは、延べ17,000人以上の実績。学生からシニア層まで年齢や性別を問わず、自分らしいキャリアデザインをするための選択とアクションに向けたカウンセリングを…
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