自立している、とはどのような状況なのか?といった問いを講演で投げかけさせていただくことがありますが、「ひとりで物事を決められる」「人に頼らずに生きていける」「自分の将来をちゃんと考えている」などが上がってきます。しかし、実は自立している人は、よいサポートを活用している人なのです。決して「ひとりで」ではありません。
組織の中で自立している人を育成するためには、サポートが必要です。しかし、日本の風土が影響してか、特に男性は、人に相談する習慣がなかったり、自分のことを人に相談するのはよくないこと、相談すると弱みを見せることになる、と思っていたりする傾向があります。
さて、組織の中で、人に相談するメリットは何でしょうか。それは、自分ひとりでは考えつかなかった選択肢を発見することができたり、相談した相手が誰かを紹介してくれたりすること、です。解決したいことをひとりで悩んで考えていると、熟考することで、一方向に深掘りされますが、広がらないのです。
私は、キャリア研修を実施する際、一人で考えないような仕掛けを心がけています。グループディスカッションは勿論のこと、事前課題や事後課題を出します。事前課題では、周囲の人に自分についてヒアリングしてきてもらったり、ロールモデルになりそうな人にインタビューしてきてもらったりしますし、事後課題は、自分が考えたビジョンやアクションプランを上司と話し合ってレポートしてもらうようにしています。
このような課題を出すことで、得られることはたくさんあるようで、実際にアンケートに書かれていた声をご紹介しますと、
<事前課題を実施したことで>
・自分の強みが理解できた
・弱みだと思っていたことが、実は強みだった
・実は周囲は自分のことをちゃんと見ていてくれた
・うちの会社にはロールモデルがいない、と思い込んでいたが、話を聞いて参考になることがたくさんあった
・ロールモデルにインタビューしたことで、仕事に対する姿勢を学べた
<事後課題を実施したことで>
・上司に自分のビジョンを話したら、よいアドバイスがもらえた
・自分で考えたアクションプラン以外のヒントをもらえた
・それなら●●さんを紹介するよ、と他部署の人を上司に紹介してもらえた
いかがでしょうか。内省だけでは得られない、たくさんのものが手に入ります。
本当に自立している人は、周囲のリソースを柔軟に活かしつつ、そこに流されることなく、最終的には自己責任のもと、自分の意志で決めて行動できる人かもしれません。決めるのは自分ですが、そこに至るまでのプロセスは、周囲のサポートがあった方が、選択肢の幅が広がるのではないでしょうか。
人生100年時代。定年退職後は、組織に決められた道ではない、自分の意志に沿った人生を歩んでいくことになります。自立していない人、というと、つい、若者をイメージしがちですが、これは年齢ではないようです。
- 周囲に相談するスキル
- アドバイスを聴くスキル
- 自分で考えて決めるスキル
- 行動するスキル
組織の中にいる間に、この4つのスキルを意識して磨いていくと、環境変化の激しいこれからの世の中、うまく渡っていけるのではないでしょうか。
キャリア研修は、自立のための研修です。組織の中で自律的に活躍する人を増やすと同時に、どんな状況でも、迷子にならない人材を育成する、という意味があります。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
個人と企業からの依頼によるキャリアカウンセリングは、延べ17,000人以上の実績。学生からシニア層まで年齢や性別を問わず、自分らしいキャリアデザインをするための選択とアクションに向けたカウンセリングを…
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