組織の中でのキャリアアップ、というと、ポジションアップ、昇進昇格、などがイメージしやすいのではないでしょうか。しかし、必ずしもキャリアアップとは、それだけではありません。人によってキャリアアップとは、が異なります。アメリカの心理学者、エドガーシャインによると、組織の中のキャリアアップは、3方向あるそうです。
「ポジションアップ」「異動などでのキャリアチェンジ」そして、「今の持ち場で自身の重要性をあげる」です。ちなみにこの考え方は、外的キャリアと位置付けられており、自身のビジョンを考えるとき、今、「どれを選ぶか」をシンプルに考えることに役立ちます。
ちなみに外的キャリアとセットになるのが、内的キャリアです。これは、自分のありたい姿や、何のために、を考えるものです。
つまり、外的キャリアは何を選ぶか、で、内的キャリアはなぜそれを選ぶかです。
ビジョンを描く時、この、内的と外的キャリアをセットで考えていただくと、わかりやすいと思います。
研修や講演では、ビジョンが描けない、とおっしゃる方や、自身のメンバーのキャリア支援で困っている管理職の皆さんに、この理論をお伝えするのですが、特に感じるのが、女性が外的キャリアの中でも「ポジションアップ」の選択を避けようとるす傾向です。ご承知の通り、日本が世界と比較して、何周も遅れているのが「女性活躍」です。ここをキャッチアップさせるためにも、ポジションアップを選択する女性を増やす必要があります。
もちろん、男女共に全員がキャリアアップ=ポジションアップになる必要はありません。しかし、男女の管理職バランスは、組織のバランスとイコールになります。そして何より、女性が長く働く上でも経験を積むことが重要です。管理職の役割を担って、経験を積むこともきっと自身の役に立つはずです。
そんな中、多くの企業では、こんな風に悩んでいます。
「女性の方から、管理職を目指したいって手が挙がらないんですよ。彼女たち自ら手を挙げてくれるのを待っているんですが」
詳しくお伺いしていくと、そう願う理由は、主体性を持ってほしいから、自らやります!と意欲を持ってほしい、同じ土俵にあがってきてほしい、とのこと。
しかし、残念なことに、そのように背中を押すほど、女性の腰は引けていきます。
なぜ女性は、自ら手を挙げないのでしょうか。
カウンセリングで私がお伺いしている女性側の本音は、やる気がないわけではないのです。カウンセリングでお話していただくと、こんな理由が見えてきます。
- 自信がない。失敗したら責任を取れない。
- 管理職って何をしているのかわからないが、とにかく大変そう。自分には担えない。
- やってみたい気はするが、周囲の人の目が気になる。女性だから管理職になれたんでしょ、と言われそう。
やりたくないわけではないのが、共通した理由です。
では、どうしたらやってみたいと思うか、と聞いてみると、
「上司から推薦してもらえたら」「やってみたら?と背中を押してもらえたら」
といった答えが返ってきます。
このように、手を挙げる段階で、「自らやります!と手を挙げてほしい」会社側と「背中を押してもらえたらやってみたい」という当人のギャップがあるのです。
この女性側の考えを意欲、マインドが低い、と評価を下げることが、果たして正解でしょうか。今までの日本組織は、端的に言ってしまうと、やる気のあるパワフルな人が上に上がっていく傾向にありました。時にそれは、スキルよりやる気が評価を受けることも。だから、上にあがりたい、とアピールする人しか、上に上がりづらかったのではないでしょうか。必然的に女性はよほどのマインドの人でなければ、手は挙がりづらい状況です。しかし、それではよい人材を見過ごすことになります。管理職になりたい、と自らは思っていないが、本当はスキルや人間力がある、管理職の役割を担える人の活用が進んでいない状況です。
女性のリーダーを増やしたい、と思ったら、会社や上司から管理職になる推薦を増やすことをお勧めします。ただし、一点だけ気を付けていただきたいのが、「今まで長年頑張っているから」といった理由で推薦しないこと、です。それだけで選抜された方も実際辛そうです。
企業研修では、半年から1年かけて、女性管理職候補を育成するプログラムがあり、関わらせていただいているのですが、そういったプログラムに女性メンバーを推薦する際、「管理職になることへのマインドがレディネスか」と「年数」の2点は極端な話、考えなくてもよいかと思っています。それよりも、日頃の仕事への向き合い方、学ぶ姿勢、周囲とのコミュニケーションの様子などを見て推薦していただけたらと思います。特に学ぶ姿勢の高い方は、プログラムの中でどんどん成長していきます。
自ら手を挙げる人でなくても、覚悟が決まれば、管理職としての役割をしっかりの担える社員は、たくさんいます。
冒頭の外的キャリアに戻りますが、特に女性や若手のキャリア支援の際、「ポジションアップ」の選択肢を自信がないから、不安だから、大変そうだから、という理由だけで選択肢から外さないよう、会社として丁寧にサポートしてはいかがでしょうか。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
個人と企業からの依頼によるキャリアカウンセリングは、延べ17,000人以上の実績。学生からシニア層まで年齢や性別を問わず、自分らしいキャリアデザインをするための選択とアクションに向けたカウンセリングを…
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