いわゆる男性社会、と言われる大手企業の多くでは、女性の働き方とその制度や仕組みに悩まされています。ざっくりいうと、過去、女性は一般職で採用され、組織の事務・アシスタント役を担い、20代には結婚退職、というキャリアとライフプランでした。しかし、そんな女性たちも普通に結婚した後も働き続けることを選び、独身者も増えている状況。
そんな変化の中、大手企業は、一般職の女性たちを総合職に転換することを促したり、転勤のないいわゆる地域総合職やエリア職と呼ばれるような職域を作ったり、一般職を思い切ってなくして全員総合職にしたり、とどれがベストか、模索しながら元来の一般職の在り方を変えようとしています。比較的に、ではありますが、金融は、一般職をなくすケースが多く、製造業や商社では、一般職はそのまま存続するが、在り方、仕事の領域を変えようと模索しているケースが多い気がしています。
その変化の中で、毎回研修や講演、コンサルティングをする中、あがってくる課題を今回はふたつ、取り上げてみたいと思います。
(1)どこまでが一般職の仕事なんですか?これって総合職の仕事ですよね?という一般職からの声に悩まされる会社や現場。仕事のすみ分けはどうしたらいい?
これは、当事者である一般職からあがってくる声です。具体的には、「お給料が総合職よりも低いのに、今まで総合職が担っていた仕事まで私たち一般職に期待されていることに不満」「上司から、若手総合職を育成してほしいって言われた。そこまで私たちの仕事?」「入社した時と仕事内容が変わってきて。そういうつもりで入社したわけではないのに、話が違う」「一般職と総合職の仕事の領域がグレーになっている。もう少し明確にどこからどこまで、と決めてもらいたい」これらの声、どの会社の一般職からも必ず上がってくるのです。まずお伝えしておきますが、彼女たちは、やる気がないわけではないのです。不安を抱えている人も少なくありません。
さて、このような状況、会社や上司として、どう解決したらいいでしょうか。一般職と総合職の仕事領域や在り方を見直している企業は増えていますが、その内容を拝見させていただくと、これまたグレーの内容が多いのを感じます。しかし、反面、部署によっても一般職の担う仕事は異なるので、グレーにせざるを得ないのも現実なのかとも思います。そこで現場では上司が、会社の意図をどうかみ砕いて一般職にフィードバックするか、が課題です。
そして、一般職が将来困らないように、キャリアアップできるような役割を与えることは大前提です。例えば、私は彼女たちに「目の前の損得だけで仕事をするかしないか、を決めないで」とお伝えしています。それは、「外でも通用する人材になってほしい」ということ。自信がなくて、仕方なく今の会社にいる一般職の方もいらっしゃいます。自信と安心をもって活躍するためには、外でも通用する自分であることです。そのためには、目の前の仕事が将来に繋がるのであれば、損得ではなく、やっておくことです。これは、一般職だけでなく、私たち誰もが人生100年時代、長く働く上で、定年まで現職に勤め上げたとしてもその後もありますから。
そしてもうひとつは、
(2)一般職の女性部下には、気を遣っている。これ以上のキャリアアップは一般職にはないし、何を期待したらいいのか、わからないし、という上司。
上司向けに女性部下育成のための研修や講演を実施すると、一般職と総合職の女性に対する上司側の課題が異なることがわかります。まず、総合職の女性については、「男性部下と同じように期待しているし、接している。男女関係ない。ただ、女性ならではのライフイベントや負荷をかけすぎないように気を付けている」という声が上がってきます。
一方、一般職の女性については、「気を遣っている」「キャリアアップを促したが、このままでいい、と言われてしまい、確かに一般職だし、無理しなくてもいいのかな、と思ってしまった」「一般職のキャリアアップについては考えたことがない」という声。
このように、総合職と一般職に対する上司の期待は、大きく異なるようです。
ちなみに一般職の女性からあがってくるお悩みでは、「会社や上司が私に何を期待しているのかがよくわからない。上司との面談でも、〇〇をできるようになってほしい、とか、〇〇の面倒をみてほしい、と言われるが、どうなってほしい、というような期待の言葉はもらえない」という声。果たして上司の皆さんは、一般職の女性に「期待」をしているのでしょうか。これは、今だけでない、未来も彼女たちが食べることに困らないように成長させること、に繋がります。
実は先日、一部上場企業に入社して、今も同じ組織で一般職として働き続けている小学校時代の友人(50代半ば)と食事をした際、会社に対して不平不満を漏らしていました。入社した時はこんなに長く働くとは思っていなかったから、何も考えていなかったけれど、将来が不安だし、会社から期待されているとも思えないし、でも、今更辞めるわけにもいかない。これが本音です。
上司側に今一度考えていただきたいのが、一般職の部下の未来です。一度、将来について部下と話してみていただけたらと思います。このままで別にいい、と言っている女性たちの本音がどこかに隠れているものです。本当はこのままでいい、ではなく、どうしたらいいかわからない、と思っている人もたくさんいます。そして何よりも、「期待されていないし」と思っているのです。上司の皆さん、期待していますか?人って期待されると頑張れますよね。
日本は、男性よりも女性の方が高齢者の貧困率が高く、これは過去、女性の方が働く場所が限られていた、働いた経験のない専業主婦が多い、などの理由から、パートナーと離別死別した後の生活に困っている人が多い、という背景があります。このようなことを繰り返さないためにも、今、女性たちも働いている間にお金を稼ぎ、資産を作ることは勿論ですが、経験を積み、出来ることを増やすことで目に見えない資産を作ることが自分の老後を支えることになります。彼女たちの未来のためにも、会社や上司は環境変化についていけるような仕事を与え、期待していただけたら、と思います。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
個人と企業からの依頼によるキャリアカウンセリングは、延べ17,000人以上の実績。学生からシニア層まで年齢や性別を問わず、自分らしいキャリアデザインをするための選択とアクションに向けたカウンセリングを…
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