様々な企業では、社員が気軽に相談できる窓口が増えています。一方で、それを実際に活用する人は、まだ少ないのが現状です。
私は国際EAPコンサルタントという資格を取得しているのですが、これは、組織の従業員が仕事をする上で弊害となる悩みを相談する受け口になる、といった役割を担うものです。アメリカの資格だからか、非常に合理的で「組織の生産性をあげる、または下げないために」が役割の前提です。では、どんなことが生産性を下げるのか、というと、社員が期待以下のパフォーマンスしか発揮しない、心身の健康を損なわれていて仕事ができない、家族に問題がある、ハラスメント、子育てとの両立に悩む、などなど幅広くあげたらきりがありません。
因みにこの資格のおおもとは、アルコール依存症の治療を専門とした機関で、アルコールや薬物依存で仕事のパフォーマンスが落ちる人、当人が依存症でなくても、そのような家族を抱えて家族のパフォーマンスが落ちるケースも合わせて対象としています。日本ではあまり馴染みがありませんが、多様性が広がると、そのようなことも含め、多岐に渡る問題が出てくると想像します。
さて、社員が自分のキャリアを相談できる窓口として、キャリアコンサルタントの資格を取得した社内人材が、従業員のお悩み相談に乗る「キャリア相談室」を設けているところも増えているようです。今までは産業医が主にメンタル面の課題を抱える社員の相談窓口として機能していましたが、それにプラスして、キャリア相談もできるようになっています。
一方で相談する側から、社内のキャリアについては相談できるが、それ以外になると、相談しづらい、正直、外の世界を知らない社内のキャリアコンサルタントだと、解決のためのアドバイスが限定されてしまうんです、という声もお伺いします。
それを解決するためにも、私のような社外カウンセラーも選択肢として用意しているケースが出てきています。これは、企業が相談料を負担してくれるものと、窓口を紹介してくれるだけのケースとあります。私は主に、前者で契約することが多いのですが、折角会社がお金を負担してくれるのに、相談に来る方は性格的に積極性の高い人に限られているのを感じます。
なぜ相談窓口があるのに、相談に行かないのか。これは特に日本人、日本企業の特徴です。そう、私たち日本人は、相談慣れしていないんです。
私は、個人の方のキャリア相談も実施していますが、きっと世の中の一握りの人しか申し込まれていないのでしょう。初めてこのようなキャリア相談を申し込んでみた、という人も多いのですが、申し込むまでずいぶんと悩み、ようやく自分ではどうすることも出来なくなって、ということをお伺いします。
日本人が相談に慣れていないのは、「恥の文化」とも言われています。自分の個人的な悩みを人に知られるなんて恥ずかしい・・・。プラスして、キャリア相談をしないのは、キャリアを自分ごととして考える風潮がなかったのです。組織によっては、学校を卒業したら就社、といって一生この会社で働く人の多い環境。周囲がそのような環境だと、入社してすぐに思考停止になりがちです。
しかし今や、そんなことを言ってはいられません。これからの世の中は、標準化の時代から個別化の時代へ。標準化の時代は、大雑把に言えば、みんなが同じことを出来るようになることを目指すものですが、個別化の時代は、それぞれ異なる特徴を自己理解して自分らしい活躍に繋げる必要があります。
そのためには様々な選択肢があり、それを自ら選んでいかなくてはなりません。そんな世の中だからこそ、個別の相談は重要なのです。ちなみに、「特徴」とは強みや持ち味だけでなく、家庭の事情も入ります。例えば、これから結婚を考えている人、不妊治療中の人、実家が近くにあり、サポートをすぐに得られる人、家族が死別している独身者、小学校に上がる子供を持つ人、介護を必要とする家族を抱えている人、パートナーが鬱の人、自身が癌サバイバーなどなど。キャリアカウンセリングをしていると感じるのが、誰もが千差万別、仕事だけでない、様々な事情を抱えているものです。
このようなことを抱えながら、会社では周囲にそれを話すことなく仕事をしている人は、周囲にたくさんいるのではないでしょうか。
外部カウンセラーも一人ですべての事を解決できるわけでなく、できないものはリファーといって他の専門家を紹介する、といった仕組みです。
キャリア自律とは、1人で何でも解決できる人、という意味ではありません。周囲に頼るべきところは頼れる人のことで、結果的に自分の望むキャリアを手に入れたり、組織の生産性を落とさないことに繋がります。
どんどん相談上手になってほしい、そして、そのような機関をうまく利用して、自分の望むキャリアやライフを実現してほしい、と切に願います。社内にそのような窓口があったら、一度気軽に相談にいってみませんか?
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
個人と企業からの依頼によるキャリアカウンセリングは、延べ17,000人以上の実績。学生からシニア層まで年齢や性別を問わず、自分らしいキャリアデザインをするための選択とアクションに向けたカウンセリングを…
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