前回のコラムでは、「女性が活躍」している状態をイメージできないまま、女性活躍推進の取り組みを行っている組織があるのではないか、といった問題提起をさせていただきました。例えば、「もし女性管理職を増やしたいと考えているのであれば、組織としてすべきことは何か」などを挙げてみました。
今回は、イメージできていない状態のまま一人歩きしがちな、「女性らしさを活かして」という言葉を取り上げてみたいと思います。一体、どんな勘違いで使われていることがあるのでしょうか。
これもまた、トップメッセージとして耳にすることが多いのですが、「女性ならではの、女性らしさを活かして頑張ってほしい」という言葉。しかし残念なことに、トップ層が言いたい「女性らしさを活かして」がうまく現場に伝わっていないことがあります。
企業研修や講演で、現場の管理職に向けて女性部下育成をテーマにお話しさせていただくのですが、その際「あれ?」と思うことがあります。それは、上記に挙げた「女性らしさを活かすとは」の意味が、現場の上司に正しくとらえられていないということです。
経営層として言いたいことは、「女性らしさを活かして、様々な仕事にチャレンジしてほしい。男性とは異なるプロセス、やり方で、同じ成果を出してほしい。そのためには、管理職はどんどん女性部下にチャンスを与え、任せて、役割の領域を広げさせる支援をしてください」といったメッセージです。
つまり、比較的、現状では男性が主体の管理職、技術研究職、あるいは営業職など、ここにもっと数多くの女性が配置され、今までの男性のやり方とは違う、女性ならではの観点、やり方、持ち味、強みを活かして結果につなげてほしい、ということです。
しかし残念なことに、現場の管理職の中には、「女性らしさを活かした役割=サポート、アシスタント」ととらえているケースがあります。女性はよく気が付くし、きめ細やか、人のサポートが得意。だから、もっとその強みを活かして、チームの人たちが仕事をしやすいように、更に縁の下の力持ちとしての能力を発揮してほしい。こう思っていらっしゃる上司の方にお会いすることがあります。
その固定観念は強固で、アシスタントの仕事も大事だが、その枠にとらわれることなく、お客様先と直接やりとりをしたり、上位職を目指したりする女性を増やしてほしい、とお伝えしても、なかなかその枠を外せない方も多いものです。
先日、ある企業の女性社員向け研修で、女性社員から「もっとお客様に踏み込んで、現場に出て仕事をしたいと上司にお願いしたのに、『君の仕事は縁の下の力持ちとして営業を支えるのが役割だ。女性ならではの役割を全うしてほしい』と言われてしまった」と相談を受けました。その企業では、女性の上司にあたる方たち(現場の管理職は男性のみ。女性の管理職もいるが総務経理に限られている)に、女性部下の活躍のフィールドを広げてほしい、といったお話をしたのですが、どうしてもアシスタント以上のイメージがわかない方もいらっしゃいました。現に、上司が枠を決めてしまって、それ以上をやらせてもらえないことを悩んでいた女性社員の上司は、「更に気を利かせて周囲に目を配ってもらえたら、助かるんだけど」とおっしゃっていました。きっと彼は、チーム全体を回すために、自分の中での理想の役割分担のイメージができていて、「女性の役割=アシスタント」から抜け出せないでいるのだと感じました。
女性をアシスタントの枠の中でしかイメージできていないのでは?と投げかけたのですが、「いや、うちの会社は女性が営業することは難しいんだよね。」で終わってしまい・・・。いくら女性側が「やりたい」と言っても、悪気はないのですが上司は天井を設けてしまっているので、可能性がない状態です。
そんな状況を幾度か見ていて、言葉の定義を明確にすることの大切さを感じました。全社的に女性活躍推進を浸透させたい場合、「女性らしさを活かして」とはどういうことなのか、具体的に文言で表現することが大事です。
今は男女の垣根を越えて、お互いの仕事の領域を広げていくことが課題です。そして、垣根を超えた中で、女性だからこその仕事の進め方をすることで多様化が進むと考えられていますが、これが今後更に進んでいくと、男女ではなく「個」が課題になります。女性はこの仕事、男性にはこの仕事、ではなく、個に合わせた適材適所、強みを発揮させること。これがゴールとなります。
そこに向けて、まずは管理職は、早めに男女別役割という固定観念を外すことが課題です。現場によってばらばらな認識と進め方にならないよう、会社としての明確なメッセージを下せているか、すり合わせをしてみることをお勧めします。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
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