2016年の年末、働き方改革に関するいくつかの施策のうち、下記のような方針が打ち出されました。
政府は「働き方改革」として正社員の副業や兼業を後押しする。企業が就業規則を定める際に参考にする厚生労働省の「モデル就業規則」から副業・兼業禁止規定を年度内にもなくし「原則禁止」から「原則容認」に転換する。複数の企業に勤める場合の社会保険料や残業代などの指針もつくる。働く人の収入を増やし、新たな技能の習得も促す。安倍晋三首相は副業や兼業について「普及は極めて重要だ」との認識を示している。少子高齢化による労働力不足を補い、職業能力の向上で成長産業への雇用の流動化も促すためだ。政府の働き方改革実現会議は年度末にまとめる実行計画に普及の方針を盛り込む。
(日本経済新聞 2016年12月26日朝刊抜粋)
今まで大手を中心に、副業原則禁止とされていた企業が多かった中、今年から私たちのキャリアは、パラレルになっていきそうです。
今の仕事だけでは収入が不安定、という方にとっても、副業OKである組織はありがたいのではないでしょうか。しかし、一方で、選択肢が広がるわけですから、自分ならではのキャリアのあり方を意識して、選択する必要性が出てきます。
働く女性は、この方針をどのように自身のキャリアに活用すればよいのでしょうか。
働き方改革が進むことで、より主体性をもって選択できるかどうか。これでキャリアの差が出てくるように感じます。
例えば、副業することを選ばずに、一つの会社にコミットして、キャリア形成していくことも一つです。管理職昇格にチャレンジし、組織の中ですべきことの範囲を広げていったり、もちろん、給与アップを目指す形もスタンダードではありますが方法の一つです。
一方で、正社員としての給与やキャリア向上は望まないが、その分アルバイトなどで足りない収入を補う方法もあります。ただ、ここでネックなのは、正社員としての給与やキャリア向上を目指さなかったことで、その組織の業績が悪くなった際、人員削減の対象となったり、転職の際の実績のアピールがなかったり、となってしまう可能性がある点です。
こう考えると、選択肢が増えるからこそ、自分のビジョンを持ち、それに合わせたストーリーを組み立てていく必要があります。
特に出産・育児、介護のライフイベントとの両立を考えている人は、その状況に合わせた働き方を選べるようにすることも視野にいれたいものです。正社員として福利厚生制度を活用しながら働き続ける方法もあれば、正社員では働き続けづらいと感じ、その期間は派遣やパートなど時間に融通が利く働き方を選ぶ方法もあります。
また、人生100年と言われている今、60代で定年退職した後のキャリアも考えていく必要があります。収入のメインは本業で、そして一方で週末などに本業以外の時間を使い、細々と副業を続けていくことで、定年後のセカンドキャリアにつなげることも可能になります。
今、話題のベストセラー「ワーク・シフト」の著者、リンダ・グラットン教授と、ロンドン・ビジネススクール前副学長のアンドリュー・スコット氏は、「先進国の寿命が延び、人生100年時代が到来。人生設計の仕方を変えていかなくてはならない。特に設計の中でもキャリア寿命は70-80歳になる。」と述べています。
実は女性向け研修でも、組織の中でのキャリアだけでなく、人生全体を考えたキャリア構築方法をお伝えするようにしています。例えば、受講生の中には、こんな声があります。「40代半ばの私が研修を受けても、残り少ない会社人生、あとは余力で定年退職を迎えられたらそれでいいと思っています。だから教育、研修は、もっと若い人にやってあげた方が効果があるのに・・・」
しかし、これからのキャリア寿命を考えたら、例えば40歳の人は残りは20年ではなく、30年から40年ある、ということになります。今の組織で働き続けるかもしれませんし、また一度定年退職し、そのあと別の組織や別の仕事に就くかもしれません。
そこでお伝えしているのが、目の前の仕事や人脈を大事にしてほしい、ということです。働き続けられるためにも、目の前のことの蓄積、実績、そしてその仕事で関わり合った仲間、人脈。これらは未来の財産になります。
それらのことは、目の前の損得ではなく、もっと長い目で見ていく必要があります。
長い人生を考えた上で、今の組織で何をやるべきか、副業をどのように取り入れるべきか。過去に前例のない、ロールモデルがない中で、自分の人生をデザインしていかなくてはならない時代になってきているようです。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
個人と企業からの依頼によるキャリアカウンセリングは、延べ17,000人以上の実績。学生からシニア層まで年齢や性別を問わず、自分らしいキャリアデザインをするための選択とアクションに向けたカウンセリングを…
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