先月に引き続き、今月もワーク・ライフバランスの経営全般面からのメリットをお伝えいたします。特に、企業として今後、避けては通れない労働生産性の向上・改善が大きなテーマになります。
■労働生産性の改善
これまで「日本人の勤勉は誇るべき」、「欧州諸国はのんびり働いている」という考え方もありましたが、各国の労働生産性を比較してみると、「のんびり働いている」はずの欧州諸国の労働生産性は日本より総じて高くなっています。また、2005年のデータでは、日本の労働生産性はOECD加盟30カ国中20位、主要先進7か国中では最下位です。「勤勉」だと思って長時間働いていても、その時間に見合った価値を生み出せていないのが現状なのです。その背後には、「長時間労働を当然視する組織風土」や、「業務評価基準の不明確さ」が原因として潜んでいます。
生産性の低さを、さらなる労働時間や人員の投入でカバーしようとしてきたのがこれまでの日本企業でした。しかし、生産性を改善するためには、これまでの企業風土を変えていくしかありません。ワーク・ライフバランス施策の導入・定着をきっかけに、業務の内容・目的・評価法を明確化し、多様な働き方を導入して社内風土を変えることで、一人当たりの労働生産性を高めることにつながります。
■企業体質の改善・強化、企業イメージの向上
これからの企業経営では、本業の商品・サービスだけでなく、CSR(企業の社会的責任)が重要になります。企業として「外部にアピールしていること」と、「内部で実行していること」の「言行一致」が、今後はさらに求められるようになるでしょう。そうした「社会的なふるまい」の一つとして、ワーク・ライフバランスが企業イメージを左右する重要な要素となります。4回にわたり、ワーク・ライフバランスを促進するメリットについて考えてまいりましたが、ワーク・ライフバランスとは、企業が社員に対して働きながら育児や介護をしやすい制度や環境を整えるという「ファミリー・フレンドリー」と、男性・女性という性別にかかわりなく、その能力を発揮するための均等な機会が与えられ、評価や待遇においても差別を受けないという「男女均等推進」に「働き方の見直し」を加えた、<企業の経営戦略>だということがおわかりいただけたと思います。それは、単なる「福利厚生制度」ではなく、国から押し付けられて行う「少子化対策」でもありません。これからのグローバルな大競争時代において、企業自身がより強くなり、成長していくため、自ら進んで取り組んでいくべき戦略的な選択なのです。だからこそ、ワーク・ライフバランス施策の導入は、経営層を巻き込んだ全社的な取り組みとして行う必要があるのです。
小室淑恵こむろよしえ
株式会社ワークライフバランス代表取締役社長
ワーク・ライフバランスコンサルティングを900社以上に提供している。 クライアント企業では、労働時間の削減や有給取得率の向上だけでなく、業績が向上し、社員満足度の向上や、自己研鑽の増加、企業内出生率…
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