二酸化炭素削減は企業にとって重要な課題です。地球温暖化対策として1997年に京都議定書が議決されました。京都議定書では日本は1990年レベルに対して温室効果ガスを6%削減しなければなりません。2008年4月から5年間の約束実行期間に入っていますが、日本の現状は6%の減少ではなく、逆に6.4%増加しています。このような中、日本の産業界では自主行動計画を定めて二酸化炭素の削減に取り組んでいます。また、2008年からは「国内クレジット制度」が開始され、2010年には東京都の二酸化炭素削減条例が実施されます。
【日本が進める自主行動計画】
自主行動計画とは、業界ごとや、または個々の企業が二酸化炭素の削減目標を定めた計画です。例えば、日本自動車工業界では自動車製造過程のエネルギー消費により排出される二酸化炭素について2010年度の排出量を1990年度より10%低減する目標を定めています。株式会社ローソンでは、1店舗あたりの二酸化炭素の排出量を、2012年までに2006年対比で10%削減する自主行動目標を定めています。
【国内クレジット制度】
昨年スタートした国内クレジット制度とは、大企業の資金・技術により中小企業が二酸化炭素の排出を削減した場合、支援した大企業がその削減量を自らの削減分として自主行動計画等に反映させるしくみであり、昨年秋から実施されています。例をあげますと、昨年11月に東京大学による蛍光灯のインバーター化や東大医学部付属病院の冷凍機設備の更新が申請され、本年4月に承認されました。毎年約2200トンの二酸化炭素の削減になります。ローソンは東大より削減分の排出権を購入します。ローソンは、自主行動計画の目標達成のために東大より得た排出権を利用することもできます。東大は排出権の売却で得た資金で新たに学内の省エネや二酸化炭素削減に取り組むことができます。
【東京都は削減を義務化】
東京都は2010年度から実施する条例で大規模事業所での二酸化炭素の排出削減を義務化し、各事業所の過去の3年間の平均排出量を基準値とし、5年間で基準値から6~8%削減させる計画です。対象は、年間のエネルギー使用量が原油換算で1500キロリットル以上の大規模事業所で、都内の約1300の事業所におよびます。かつて東京都が始めたディーゼル車の排気ガス規制が、その後、神奈川県、千葉県、埼玉県に、そして現在では日本の大都市に広まっています。同様に東京都が始める二酸化炭素の排出削減の義務化はやがて全国に広まる可能性があります。
【CDMの仕組みを理解して活用することが鍵】
日本のように長年、省エネを行って来た国では、さらに二酸化炭素の排出を削減することはコストが極めて大きくなります。日本の資金と技術で開発途上国の省エネを支援した場合に、少ないコストで大きな二酸化炭素の削減効果が得られます。こうした場合に、日本は支援した割合によってその二酸化炭素削減分を取得できます。このような手法を京都議定書ではCDM(クリーン開発メカニズム)といいます。国内クレジット制度や東京都削減義務条例では、大企業が技術や資金を中小企業に提供し、その工場などの二酸化炭素の排出を削減することができれば、支援の割合によってその排出権を得ることが出来ます。原理はCDMと同じで、国内クレジット制度は「国内CDM」とも呼ばれています。二酸化炭素削減の実施が迫る中、大企業にとって、また大企業から技術や資金の支援を得る中小企業にとって、CDMの原理を解して最大限に活用することが二酸化炭素対策のキーポイントとなるでしょう。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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