温暖化対策や環境保全は企業活動の大きな柱となっており、そのような中で環境経営に関する認証の取得が進んでいます。ISO14001は非常に有名ですが、その他に中小企業でも取得しやすく、登録費用の安い認証制度がいくつかあります。今回は「エコアクション21」を例にあげてご紹介致します。
【エコアクション21の特徴】
エコアクション21は環境省が策定し、地球環境戦略研究機関が運営しています。エコアクション21においては、必ず把握すべき項目として、二酸化炭素排出量、廃棄物排出量及び総排水量を規定しています。さらに、必ず取り組むべき行動として、省エネルギー、廃棄物の削減・リサイクル及び節水を規定しています。これらの取組は環境経営に当たっての必須の要件です。
事業者の環境への取組状況等の公表は、社会のニーズであるとともに、自らの環境活動を推進し、さらには社会からの信頼を得るための必要不可欠の要素となっています。そこで、エコアクション21では、環境活動レポートの作成と公表を必須の要素として規定しています。
【エコアクション21のメリット】
エコアクション21では、環境への取組を総合的に進めることができ、また比較的容易、かつ効率的に取り組むことができます。環境経営システムを構築・運用することにより、経費の削減や生産性・歩留まり(※)の向上、目標管理の徹底等、経営的にも効果を上げることができます。
環境活動のレポートを作成し、外部に公表することにより、取引先や一般消費者等に対しての信頼性が向上します。また、大手企業が環境への取組や環境経営システムの構築を取引先の条件の一つとする、サプライチェーンのグリーン化に対応することができます。
(※)製造ラインで生産される製品から、不良製品を引いたものの割合。不良発生率が高い場合は「歩留まりが低い」といい、逆に不良発生率が低い場合は「歩留まりが高い」という。
【エコアクション21とISO14001等との比較】
国際標準化機構の規格である「ISO14001」は認知度が高く、国際的に通用する制度ですが、エコアクション21は日本国内の制度です。ISO14001は審査、認証登録料が相当高いのに対して、エコアクション21の場合は比較的安いのが特長です。
従業員100人規模の事業所では、エコアクション21の審査認証登録料は約25万円(税別)ですが、ISO14001では事業所により審査に要する日数が異なり、通常はエコアクション21の数倍~十倍かかります。
ISO14001は環境保全への姿勢や管理体制、特に継続的な改善が重要視され、環境負荷の削減や環境報告書の作成が求められませんが、エコアクション21では負荷の削減や環境活動レポートの作成と公表が求められます。
その他の中小の事業所向けの環境認証制度としては、NPOが運営する「KES」、民間が運営する「エコステージ」があります。エコアクション21の環境活動の取組み段階は中級を範囲としていますが、KESでは初級~中級、エコステージでは初級~上級を範囲としています。
【エコアクション21の展望】
ISO14001はヨーロッパ的な考えで作られた制度です。具体的な数値基準を設定していませんので、プラグマティズム(実用主義)のアメリカではあまり意味がないと考えられ、普及しませんでした。しかし、製造業の中心がアジア等に移った今、品質管理や経営管理の観点から、ISO14001の取得をアメリカの大企業が途上国の工場に求めています。
日本でも傾向は同様で、大企業に製品や部品を納める中小の企業は環境認証の取得を求められています。さらに日本では、温暖化対策として二酸化炭素の排出削減や省エネルギーの推進が求められていますが、エコアクション21はこれらについて把握や取組が規定されています。
アクション21のメリットは登録料が安く、人・物・金等経営資源の点からも取得しやすい事にあり、小規模企業に向いています。実際にエコアクション21の認証を取得した事業者の、20%が従業員10人以下、38%が30人以下の企業です。小規模企業経営者の皆様には、環境時代のサプライチェーンの中で生き残るためにも、環境認証の取得を是非検討してみて下さい。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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