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コラム 環境・科学

2011年10月25日

環境ビジネスの新展開

今回は環境ビジネスについてお話しいたします。一口に”環境ビジネス”と申しましても、現在ではその範囲は非常に広くなっており、従来どおりの、公害防止から温暖化対策や資源リサイクルといったハード系の環境ビジネスから、環境影響評価などのソフト系の環境ビジネスまで含まれます。

震災復旧・復興の過程にある日本にとって、環境関連の技術や事業が一層重要になっています。是非この機会に、環境関連のビジネスに新たな視点を持って頂ければ幸いです。

【ハード系の環境ビジネス】
まずハード系の環境ビジネスをご紹介いたします。

1.公害・汚染防止関連のビジネス
大気・水質汚染測定・防止、汚染土壌の計測装置、汚染土壌の浄化、河川・湖沼の浄化等

2.廃棄物の適正処理及び資源リサイクルのビジネス
廃棄物焼却場、中間処理施設及び最終処分場、食品系廃棄物等

3.エコマテリアルビジネス
生分解性樹脂、光触媒、非木材紙、植物性インク、生分解性潤滑油等の機能材料や新素材の製造や応用ビジネス

…例えば、光触媒として酸化チタンが有名ですが、元々は光で水を分解して水素と酸素を得る触媒として発見されました。近年ではその機能を応用してガラスや陶磁器等の表面改質剤として使われ、汚れの防止や衛生保持の分野で広く使われています。

4.環境調和型施設・住宅関連のビジネス
環境共生住宅、省エネ住宅、屋上緑化、壁面緑化、雨水利用等

5.環境調和エネルギー・資源ビジネス
省エネルギーや新エネルギー等

…省エネルギーには低公害車、燃料電池等、新エネルギーは再生可能エネルギーとも呼ばれ、太陽光発電や風力発電、バイオマスエネルギー等が含まれます。

6.エコシステム修復のビジネス
緑化・植林事業、ビオトープ、多自然型河川修復、土壌改良、農地改善、里山の回復等

【ソフト系の環境ビジネス】
次にソフト系の環境ビジネスをご紹介します。

1.環境コンサルティングのビジネス
環境マネジメントシステム構築支援、省エネ推進、環境ビジネス創出支援、排出権取引制度等

2.環境影響評価のビジネス
環境アセスメント、環境調査、環境分析・評価等

3.情報関連ビジネス
環境情報システム、エコツアー、環境報告書の作成等

4.金融関連ビジネス
エコバンク、エコファンド、環境賠償責任保険等

5.流通関連ビジネス
エコショップ、リサイクル交換所等、非常に生活に身近なビジネスが含まれます

6.物流関連ビジネス
廃棄物運搬等

【環境誘発型ビジネス】
上述のハード・ソフトの環境ビジネス以外で、環境保護や保全を目指して環境に配慮した機器やサービスの需要や市場を誘発する事業を広い範囲で捉え「環境誘発型ビジネス」と呼びます。

具体的には、省エネ型家電製品、低排出・低燃料型自動車、環境保全型農業、エコファンド、リースレンタル、エコツーリズム等が該当します。

日本では環境誘発型のビジネスも環境ビジネスとしてとらえ、行政もその育成に様々な支援を行っています。

【環境ビジネスの市場規模予測】
 2008年の経済産業省の試算によれば、日本における環境ビジネスの市場規模は、次のように予測されています。経済成長が厳しい時代ですが、環境ビジネスは大きな発展が期待される分野です。

              <2005年>  <2015年>
全体の市場規模      59兆円    83兆円
温暖化関係               32兆円    49兆円 
廃棄物3R関係      25兆円    30兆円
自然共生・公害関係     2.9兆円   4.8兆円

 市場の成長に合わせて、環境ビジネスに従事する雇用規模も、2005年の180万人から、2015年には260万人になると予測されています。

【地域で環境ビジネスに取り組む要点】
環境ビジネスの発展や普及は行政の施策等に依存する部分が多分にあります。常に行政の動向を見極めて、行政の推進制度、低利融資、補助金等を活用していくことも重要です。

しかし、私は環境ビジネスの主役は地方にあると考えています。地域発信で、地域に根ざした環境ビジネスを進めたり、地域にマッチした環境技術の開発、さらにハード面のみならずソフト面での環境ビジネスも視野に入れ、積極的な提案型環境ビジネスに取り組む事が期待されます。また、必ずしも新規にビジネスを起こすというのではなく、まず現業の延長線上で環境ビジネスを考えることも一法です。

日本は今年3月、大きな震災に見舞われました。津波、原発事故によって生じた田畑の塩害や放射能汚染に対して、これから土壌除染や土地改良を行っていかなければなりません。同時に、生活の安全と安心の確保のためには放射線観測の体制も強化していかなければなりません。また、将来的には原子力に代わるクリーンなエネルギーとして新エネルギーへの期待が益々大きくなるでしょう。

そんな、震災復旧・復興過程の日本にとって、環境関連の技術・事業の重要性は高まっています。読者の皆さまが、新たな視点で環境関連のビジネスに取り組んでくださることを期待しております。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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