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2012年07月25日

再生可能エネルギーの固定価格買取制度について

 本年7月1日から新しい再生可能エネルギーの固定価格買取制度がスタートしました。これまで実施されていた旧・固定価格買取制度に比べて、再生可能エネルギーで発電する事業者にとって、多くの点で有利な条件になっています。今後は、繰り返し利用できクリーンな太陽光や風力等の再生可能エネルギーの普及が加速度的に促進されるものと思います。今回は、再生可能エネルギーの新しい電力の固定価格買取制度についてふれてみます。

■再生可能エネルギー
 太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等は、日本では自然エネルギーもしくは新エネルギーと呼ばれてきました。これらのエネルギーは国際的には再生可能エネルギーと呼ばれており、日本でも近年は再生可能エネルギーと呼ばれています。石油や石炭、天然ガスなどの化石エネルギーは、採掘して消費すれば資源として減少していくのみですが、太陽光や風力などの自然エネルギーはいくら使用しても、無くなってしまうことはありません。このような事から自然エネルギーは再生可能エネルギー(renewable energy)と呼ばれています。
 化石エネルギーは有限な資源であり、消費すると温暖化の原因となる二酸化炭素を発生させます。さらに、近年は石油や天然ガスの国際価格はしばしば急騰しています。日本においては、国内で調達できて、無尽蔵に存在し、環境に優しい再生可能エネルギーの利用が期待されています。また、昨年の原発事故以降、原発に代わるエネルギー源としても再生可能エネルギーへの期待が一層大きくなっています。

■固定価格買取制度とは
 太陽光や風力等の再生可能エネルギーを利用して得られた電気の発電コストは、既存の火力発電のコストに比べて極めて割高です。経済原理に基づけば再生可能エネルギーを利用した発電の普及は極めて困難ですが、将来に向けて再生可能エネルギーの利用を促進させる事ができる方策が固定価格買取制度です。
 この制度では、再生可能エネルギーを用いて発電された電気を、一定の期間、一定の価格で電力会社が買い取ることを義務付けています。電力会社が買取りに要した費用は、使用電力に比例した賦課金によって回収することになっており、一般家庭や企業が支払う電気料金に上乗せされます。
 再生可能エネルギーの固定価格買取制度は、ドイツで実施され大きな効果を上げました。現在ではドイツの電力の16.5%が風力やバイオマス、太陽光による発電で賄われています。日本でも2009年11月より旧・固定価格買取制度が実施されましたが、内容が十分でなく、あまり大きな効果は上がりませんでした。
 今回実施された新しい固定価格買取制度はドイツなみの高い内容になっており、今後は再生可能エネルギーによる発電が一層促進されるものと期待されます。

■新・固定価格買取制度の特徴
 新しい固定価格買取制度においては、平成24年度において、各再生可能エネルギー源による電力の1kWhあたりの買取価格(税込み)と買取期間の例は次の通りです。尚、発電能力の規模等の条件により買取価格や買取期間は変わります。

・太陽光(10kW以上)が42円で20年間
・風力(20kW以上)が23.1円で20年間
・水力(1000kW以上、30000kW未満)が25.2円で20年間
・地熱(15000kW以上)が27.3円で15年間
・バイオマス(メタン発酵ガス化発電)が40.95円で20年間

 24年度の再生可能エネルギー賦課金単価(上乗せ金)は0.22円/kWhで、24年度については、太陽光発電の余剰電力買取制度に基づく太陽光発電促進付加金をあわせて負担することから、標準家庭(電気の使用量300kWh/月、電気料金7000円/月)の負担水準は、全国平均で87/月程度です。

 旧固定価格買取制度と比較して新しい制度では、太陽光以外の再生可能エネルギーも広く対象としていること、住宅用太陽光発電以外では発電の全量が買い取りの対象となる事、全体的に買取価格や買取期間がより厚く設定されており、十分に再生可能エネルギーによる発電が事業として成り立つ事などをあげることができます。
 大きい電力を得るためには、太陽光発電では広い面積に太陽光パネルを設置することが必要です。平地面積の少ない日本では立地場所を確保する事は容易ではありません。例えば耕作放棄地や休耕田を活用する方法もありますが、様々な規制がありこれらの土地に自由に太陽光パネルを設置することはできません。今後は規制緩和や特区制度の活用など、行政面からの支援も期待したい所です。
 日本のエネルギーの将来はいかにあるべきかが、現在国家的な検討課題となっています。直ぐに結論が出る問題ではありませんが、新しい固定価格買取制度が実施された今、再生可能エネルギーの魅力や長所、また欠点や課題点を国民皆でしっかりと考える良い機会と思います。そのような中で、日本のエネルギーの未来について国民全体のコンセンサスが生まれてくる事を期待致します。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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