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コラム 環境・科学

2013年01月25日

再生可能エネルギーの展望と企業の課題

バイオマスエネルギーや中小水力エネルギー、地熱エネルギーによる発電も、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の対象となっています。今回は主にこれらのエネルギーについてご紹介致します。また、再生可能エネルギー全般について企業が取り組むべき課題を考えてみました。

■バイオマスエネルギー
バイオマスとは動植物から生まれた再利用可能な資源のことを意味し、バイオマスエネルギーとはバイオマスを原料として作られるエネルギーのことです。バイオマスには、廃棄物系バイオマスと栽培作物系バイオマスの2種類があります。廃棄物系バイオマスの主なものには、家畜のふん尿、廃材やおが屑、わらや籾殻などがあります。栽培作物系バイオマスの主なものには、サトウキビやトウモロコシ、海藻などがあります。

牛3頭1日分のふん尿で、1家庭の1日分の電力がまかなえる程度の発電が可能です。また、サトウキビ1トンで自動車の燃料に使えるエタノールが0.2トンできます。バイオマス発電には、廃材等を燃焼させる方法、メタンガスを生成し、水蒸気発電もしくはガス発電を行う方法などがあります。

サトウキビ、トウモロコシ、小麦、テンサイ、稲わら、廃木材など植物由来の資源を発酵させて抽出するとバイオエタノールが得られます。植物由来のエタノールを燃焼させても、発生する二酸化炭素は自然界にとって差し引きゼロとみなすことができます。バイオエタノールをガソリンに混ぜて使うのが一般的であり、日本では法律で3%(E3)まで混ぜることができます。ガソリンとの混合比は、米国では現在10%、将来は15%へ計画されています。ブラジルでは、現在18~25%です。

■中小水力発電
概ね、30,000kW以下の水力を中小水力と呼ばれます。河川の水を貯めること無く、そのまま利用する発電方式で、流れ込み式または水路式の発電方式です。通常、設置の際に土木工事を伴いません。渓流水、一般河川、農業用水、砂防ダム、上下水道、工場内水など、現在無駄に捨てられているエネルギーを有効に利用できます。

中小水力発電は、昼夜・年間を通じて安定した発電ができ、設備利用率が50~90%と高いです。また、出力変動が少なく、系統安定、電力品質に影響を与えません。中小水力発電は経済性が高いですが、地点毎に経済性が異なります。土砂やごみによる発電低下を防ぐため、メンテナンスが必要です。日本には300万kW程度の未開発の包蔵量が存在するといわれています。

■地熱発電
地熱発電の長所としては、日本は火山国であり潜在的に豊富であること、太陽光発電などに比べて発電コストが安く、風力発電並であること、設備利用率が高いことなどがあげられます。 短所としては、不確実性や開発リスクがあること、減衰する井戸の追掘が必要なこと、リードタイムが10~15年と長いこと、排出物として硫黄やヒ素、熱水が出ること、その他、景観問題、国立公園問題、温泉業からの反対などがあります。

地熱の利用には主に次の三つの方法があります。フラッシュサイクルは、得られた蒸気に多くの熱水が含まれている場合に、蒸気のみを取り分けて利用します。日本で主流の方法です。バイナリーサイクルは、熱水しか得られない場合でも、アンモニアやペンタン・フロンなど、水よりも低沸点の熱媒体を熱温水で沸騰させタービンを回して発電させる方法です。高温岩体発電は、地表近くに熱水資源がなくても3km以上深く掘れば、300~400℃の熱を持った岩盤が存在し、その熱を利用する方法です。現在、研究開発が進められています。

■その他の再生可能エネルギー
海洋エネルギーには、波力、潮汐、海流、塩分濃度差などがあります。しかし、設置費、メンテナンス費、安全対策費が発電コストのアップになり、本格的な利用においては、漁業権問題、環境問題などの課題があります。

温度差発電には、海水、河川、温排水を利用する方法があります。ヒートポンプ活用では、地中熱や河川熱、空気熱が利用できます。その他、冬に氷雪を蓄えておき、夏に冷熱として利用する方法などもあります。

■再生可能エネルギーの企業の課題
最後に、再生可能エネルギーについて、今後の企業の課題を考えてみます。再生可能エネルギーの新ビジネスの特長はビジネスの裾野が広いこと、既存技術からハイテクまで利用可能なことがあげられます。しかし装置の軽量化や長寿命化、装置及び工事費のコストダウンなどの課題もあり、その解決には、技術革新や創意工夫が期待されます。

再生可能エネルギーの市場は今後も高い成長が予測され、日本国内のみならず、世界も視野にビジネスの展開が期待されます。大企業のみならず、地域や中小企業が主役となりうるものです。2012年7月に施行された固定価格買取制度が再生可能エネルギーの普及に追い風となっています。また、国や地方自治体からの事業者への支援制度の活用も望まれます。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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