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コラム 環境・科学

2015年04月09日

環境経営と企業の課題

 原発事故後の電気料金の高騰、進行する地球温暖化、強化される国際的な環境規制と、企業をとりまく環境・エネルギー問題は大変厳しくなっています。新しい環境時代を迎え企業においては、環境経営はますます重要になって来ています。今回は環境経営について触れてみます。

■環境対策は量から質への時代
 平成12年に施行された循環型社会形成推進基本法により、日本においては資源リサイクルと廃棄物の適正処理が推進されました。その結果、平成2年度の循環利用率は約7%でしたが、その後の循環利用量の増加と天然資源等の消費の減少により、平成23年度の循環利用率は15.4%となり、目標の17%にあと少しで到達する状況です。廃棄物処理最終処分量は、平成12年度の5,600万トンから平成23年度は1,700万トンに減少し、ほぼ目標値に達しています。
 また、EUでは資源リサイクルと化学物質規制の強化が進められ、EUに輸出される製品はEUの環境基準・規制を守らなければならず、日本を含め世界に大きな影響を与えています。
 これまでの環境経営はゴミの減量や廃棄物の適正処理が中心でしたが、これからはリサイクルし易い製品を作ったり、化学物質規制をクリアするなど、量から質の時代に変わっていきます。企業はその変化に的確に対応する必要があります。

■一層の節電と省エネ
 原発事故以降、日本の48基の原子力発電所は現在のところすべて運転を停止いています。原発に代わり火力発電が行われていますが、その追加の燃料費は年間約3兆5千億円になります。また、原発事故後に急遽導入された再生可能エネルギーの固定価格買取制度では、発電コストの高い再生可能エネルギーの購入のために年間約2兆7千億円の負担となり、電気料金に上乗せされています。原発事故の前に比べて一般家庭の電気料金を4割近く値上げしている電力会社もあります。
 国際的な原油価格は新興国の台頭による需要の増加で、中・長期的には値上がり傾向にあります。天然ガス等の石油以外の燃料は暖房需要において石油と競合しますので、価格は石油に連動します。燃料購入には円安は逆風になります。原油価格は一時的に上下の価格変動はありますが、今後も徐々に値上がりしていくと考えることが適切でしょう。
 このような状況下では、企業においては環境経営を一層推進し、特に節電と燃料代の節約は直接利益に結びつきますので極めて重要です。

■環境経営の意義
 企業が環境経営に取り組む意義やメリットは次の通りです。

1.環境問題に積極的に取り組み、環境負荷を低下させる経営手法は、企業の社会的責任を果たすことになります。
2.環境対応はコストがかさむという従来の考え方を捨てて、環境問題をコントロールすることは、企業の持続的成長につながる新しい経営スタイルです。
3.国際的な環境規制が厳しくなる中、環境経営は企業に競争力を付け、また利益をもたらします。
4.規制緩和などで企業の効率的な経営資源の活用や、健全な物質循環の役割を担うことが要求されており、多くの企業が環境経営を導入しています。
5.環境マネジメントシステムの認証取得や、排出物を出さず全て再利用するゼロエミッションなどを通じて、企業価値の向上を図ることができます。

■環境経営の方向性
 環境経営の期待される方向性は次の通りです。

1.経営者の主導的関与:経営者は環境経営の実行を社会に対して約束
2.環境への戦略的対応:重要な事業機会やリスクに対して、戦略的な対応
3.組織体制とガバナンス:環境経営の適切な遂行のための組織体制と、組織体制が健全かつ効率的に機能する上での基礎となるガバナンスの構築
4.利害関係者への対応:企業を取り巻くステークホルダー(利害関係者)をよく理解し、期待や要望を把握し、それらを経営活動の中に還元
5.バリューチェーン志向:原料の調達から廃棄まで製品ライフサイクル全体における環境負荷を俯瞰して、重要な課題を特定して対話
6.持続可能な資源・エネルギーの利用:資源効率性の向上などによる資源の持続可能に配慮した利用

■環境マネジメントシステム認証制度
 環境経営を進める場合には環境マネジメントシステムの認証を取得することが望まれます。国際標準規格の認証制度としてISO14001がありますが、その取得費用はコンサルト料と審査料を合わせて300~600万円程度になります。簡易型の認証制度としてエコアクション21などがあり、取得費用は数十万円程度です。中小企業等には簡易型の環境マネジメントシステムの認証を取得されることをお薦め致します。

様々な環境問題や資源の枯渇、CSRへの取り組みの重要性が増す中で、企業においては高度な社会的、経済的倫理観に裏付けられた環境経営への取り組みを期待いたします。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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