こんにちは。久々に「もののみかたラボ」のコーナーです。
今回のテーマは「できない部下」。
以前、私はある友人A君からこんな話を聞いていました。
「いやー、うちにこのまえ入った新人クンなんだけど、これが出来が悪くてねえ。もうやる気があるんだかないんだか・・・。何度言っても同じミスをするんだよ。叱ってもただ反射的に”ハイ”って返事するだけで、全然効き目ないんだよね」
彼はこの春、新人として配属されてきた「できない部下」に手をこまねいているのですが、これをもののみかたで解決するには、どうしたらよいかなあと、僕はずっと気になっていました。
まず思ったのは「そもそも、どうしてそんなできないのを採用したんだ?」ということ。
普通はそう思いますよね、皆さんも。でも、これはすでに終わったことだから、それを悔やんでもしょうがない。ここで、事実と意味を切り分けましょう。
事実:その新人クンを採用した
意味:そいつは出来が悪い(ひとつの見方)
そして、この「そいつは出来が悪い」っていうのは、自分なりの(あるいは世間一般の)意味づけでしかなく、そうでない切り口があるはずだということです。
しかし、最初はどう考えても、この新人クンが入ったことでこの会社にプラスがあるとは思えませんでした。彼がいるために、作業の効率は下がるし、ある上司は我慢の限界を超えてブチ切れるし・・・。
ところが先日、ある番組で大阪のお好み焼き屋チェーン「千房」の社長、中井政嗣さんがこんなことを言っていた。
「いや、うちなんかやる気ないヤツら、非行少年、挨拶なんかろくにできないヤツでもとりますよ。何度も夜逃げするやつだって、連れて帰ってきますよ」
うーん…僕ならとらない。
なぜこの人はそう言えるのだろうと思い、話の続きを聞いていると、その中にキラリ!と光る言葉がありました。
「悪いの育てたら、幹部が育つんです」
出来の悪い部下を育てることで、その上司が成長する!この視点、ビビッときました。
千房のお店では、上司は、まず部下にこう声をかける。「何でもいいから一番になろうや」と。(これならなんかできそうですよね)。また小さい目標を設定する。「皿洗い何分で終わる?」「じゃ45分で」。そして出来たら「おお、できたやんけ。やるな」とすかさず誉める。
中には何度も夜逃げをする新人もいる。それをその都度連れ戻して、店に迎える(フツーだったら、夜逃げした時点でクビですよね)。
確かに、その場だけの効率をみれば、これほど非効率なことはない。上司はフツーの優秀な部下であれば、まず考えないだろうことまで考えさせられる。どうしたらやる気をもってくれるのか、どうしたら挨拶をしてくれるのか・・・。
もちろん、辞めていく人もいるでしょう。しかし、その苦労や経験は、人を育てるノウハウとして確実に上司に残る。そしてなかに一人でも、上司の思いが通じた部下がいたら・・・。目の前で「人が変わる」のを体験した上司は、きっと辞められないでしょうね。すごい感動だと思います。
出来ない部下がいるときは、「どうしてコイツはできないんだ」と相手の悪いところや、チームとしての非効率さにフツーは目がいくでしょう。でも、見方を変えれば、それは上司が人として成長し、チームがひとつになるためのきっかけなのかもしれません。彼の役回りは、上司の力を引き出し、やる気のない若者を育てるノウハウを提供するために不可欠な存在なのかもしれません。
友人のA君。たしかに大変だと思います。でも、僕は、どっかで、そういう人と人とがぶつかる体験ができることを、ちょっとうらやましく思っています。君の引き出しがまたひとつ増えるね。また経過を教えてください。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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