皆さんは、普段、職場で部下を承認していますか?
「承認、なんだそれ?誉めるとは違うのか?」
部下を誉めて育てる・・・うん、これは素晴らしい。
しかし、部下が誉めるに値する結果を出さなかったりしたらどうしましょう?
というわけで、今回は承認について。
【誉めるとの違いは?】
承認とは、「私はあなたの存在をそこに認めていますよ」ということ。よく「誉める」との違いを聞かれますが、誉めるというのは、結果に対して。一方、承認というのは、事実に対してです。
たとえば、頑張ったねと頑張ってるね、を比べてみましょう。会社で目標を達成した部下に対しては「よくやった!頑張ったね。偉いぞ」といえますが、残念ながら目標に到達しなかったら、誉めようがない。そんなときはちょっと視点を変え、普段の彼の頑張りに着目するのです。「いつも朝早く会社に来ているね」「レポートをしっかりつくっているね」―これらは結果が出なくてもかけてあげられる言葉です。「あ、いつも見てくれているんだ」というメッセージが相手に伝わるので、この価値は十分にあります。
・誉める→結果に対して
・承認する→事実に対して
【なぜ承認が大事なのか】
ではなぜ、承認が大事なのでしょう。それは、太古の昔から、私たち人間は一人では生きていけず、必ず人との関わりの和の中にいなくてはいけません。その存在を認められるということは、すなわち生き残れる、という安心感につながるからです。人が生きていくうえで、この安心感、というのはすごく大きい。だから、人は安心感を与えてくれる人に、絶大な信頼を寄せるのです。
あなたのちょっとした一声が、じつは相手の細胞ひとつひとつに、無意識に語りかけているのですよ。「ここにいていいんだよ」と。
このように、承認は事実をよく観察し、それを言葉にして伝えることですが、ほかにも次のような方法で、相手を承認することができます。
【問いかける】
よくコーチングでは「相手に問いかけましょう」といいます。ではなぜ、問いかけが大事なのでしょう。それは、問いかけることで、相手は「自分の意見を聞いてくれる」、つまり自分は期待されている、信頼されている、と思うから。もちろん、新人のバイト君に聞いても、正しい答なんか返ってくるわけないですが、意見を求めた、という事実に価値があるのです。ですから、「問いかける」というアクションは、「私はあなたの答を大事にする用意がある。あなたの考えに関心がありますよ」というひとつの承認の形でもあるんですね。うーん、深い。
【相手に期待する】
先日、大阪出身のあるピアニスト、中村天平さんのインタビューをみたのですが、彼は元ヤンキーで、自慢はけんかには絶対負けないこと。そんな彼が職を転々をしたあとに、音楽をやろうかなと思って入った音楽学校で、ある先生にこう声をかけられたそうです。
「俺、君に期待してんねん」
彼にとって、この言葉はすごい衝撃だったそうです。
「それまでの人生で、自分に期待してくれた人なんて、いなかった。こんな俺に期待してくれるんだ。じゃこの人のためにやってみよう、と思ったんです」
こうして彼はその後、大阪芸大を首席で卒業し、CDを出すまでになったのですが、この、人への期待も承認のひとつ。あなたの部下への期待が、相手の将来を決めるかも知れませんね。
【できれば『I』メッセージで】
5年経っても、いまだに忘れられない年賀状があります。それはある知合いからの一通。そこにはこう書き添えてありました。
「川村さんの活躍をみていると、勇気がでます」
よく多いのは「頑張ってますね」「ご活躍ですね」という一言。これとさっきのとでは何が違うのでしょうか。それは、『I』か『YOU』かの違いです。
つまり、「川村さんの活躍をみていると、(私の)勇気がでます」というのは、私がどう感じたか、思ったか、というI(私)のメッセージがこめられている。それは彼のストレートな気持ちで、そこにはウソはありません。
一方、「(あなたは)頑張っていますね」「(あなたは)ご活躍ですね」のほうは、文の主語がYOU(あなた)。このYOUメッセージは、言いようによってはお世辞でも言えるのです。
Iメッセージは、照れくさかったりするかもしれませんが、相手に心にストレートに届き、ずっと残るメッセージでもあるのです。
ぜひ、皆さんのスキルにも「ほめる」に「承認する」を加えてみてください。きっとコミュニケーションの幅が広がるはずです。そして、ここぞ、というときにはIメッセージで決めましょう。
あ、皆さんがIメッセージにチャレンジする姿を思い浮かべると、僕はなんだか嬉しくなってきました(←Iメッセージ)。
【参考文献】「ほめる技術」 鈴木義幸 著 (ディスカバー)
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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