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2009年08月05日

特別編「対談-もののみかたを変えて、強いチームをつくろう!」

長尾 彰【対談のお相手】
長尾彰
(組織開発ファシリテーター)
日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科(心理臨床カウンセリングコース)を卒業し、東京学芸大学大学院にて野外教育学を研究。体験学習メソッドの研修企業にて、行動科学理論(Project Adventure)を用いた、チームビルディングプログラムのファシリテーターとして、10年間携わる。
07年3月より、している株式会社にて、「人が成長する可能性」を引き出すチームビルディングプログラムを開発し、全国各地で講座や企業研修で実施している。
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川村:「チーム」とか「チームビルディング」という言葉がよく聞かれるようになったのは、最近のような気がするのですが・・・

長尾:そうですね。確かに僕も4年前くらいまでは、今研修の中で受講者のみなさんにやってもらっている研修ゲームをやって回るゲーム屋さんのような感じでしたよ。

川村:そもそも長尾さんはどうして、こうしたゲームを取り入れた研修の仕事をするようになったんですか?

長尾:もともとは体育の先生になりたかったんですよ、僕。たまたま学生のときに、アクティビティを取り入れたチームビルディングのワークショップを受けたら、とても感動したんですね!それで、この仕事はなんていう職業なんだろう?と思って、そのときの講師に尋ねたら、これは「ファシリテーター」という仕事だと教えられまして。もちろんその時代にはまだ日本にこうしたものは普及していなかったので、講師も外国人だったわけなんですが。

 

川村:いきなり体験するところから入ったんですね。それは衝撃が大きいですよね。ましてやすごく楽しい体験だったわけですから、やってみたい!ってなりますよね()

長尾:そうなんですよ!()すぐにそう思いまして、まず本屋さんへ行きました。「ファシリテーター」が何だか知りたかったんです。それで、なんとか一冊の本を見つけまして。それからそういうことをやっている会社がないかな、と探して探して、見つけた会社でアルバイトを始めちゃいました。


川村:
ビビッときたんでしょうね()それだけすばやく行動ができるということは、これだ!っていう確信のようなものがあったんですよね。この対談で私もいろいろな方とお話させていただきましたが、やっぱりそういうビビッと雷に打たれたような確信を抱いた方って、次の行動がはやいですよ()

長尾:そうですか?()

でも本当にそうかもしれないですよ。僕は、アルバイトをしていたその会社にそのまま就職してしまったんですから。自分の進む道に迷いがありませんでした。

その後、その会社のお取引先だったバンダイさんに自社での仕組み開発のお手伝いがしたいということで、バンダイへ転職しました。バンダイでは会社・組織というものの仕組みを学びました。非常によい経験だったと思います。

川村:バンダイさんでは、長尾さんがやってこられたような「チームビルディング」の手法が自分たちの組織には必要だということが、わかっていたんですね。

現場でもそういうリーダーシップに対する価値観の変化があったんでしょうか?

長尾:いえ。バンダイだけではなく他の企業でもそうですが、現場レベルでは全く変わったという実感はないですね。未だにリーダーというのは、「率先してやってみせて引っ張ってまとめる人」という意識が強いと感じています。でも社会の流れとしては、だんだん変わってきているなという印象はあります。これまでのリーダー像ではなくて、その人らしさやその人の強みを生かした仕事の仕方をすることそのものがリーダーシップであり、そのリーダーシップを体現できている人がリーダーである、というもう一方の考え方も共有され始めている感じもします。現場では意識に変化がなくても、僕に研修を依頼してくださる企業の人事部の方々は、現場を俯瞰して見られる立場にいるので、今の企業の組織のあり方ではこれからは厳しいということを感じているようです。

川村:そうなんですね。私も長尾さんの研修を実際に受講させていただいて、「アクティビティ」の効果を非常に感じました。一緒の体験をすることで、あっという間にチームが出来上がるんですよね!

長尾:そうなんですよ。体を動かすということは、少々強制的な部分はありますが、体と心をリラックスさせることができるんです。またアクティビティだけではなく、それに理論をきちんと加えることが重要です。更に、このアクティビティを使ったチームビルディングの方法と他のスキル例えばコーチングなどとの組み合わせは、とても効果を発揮しています。


川村:
確かに、体を動かして何かを一緒にすることでお互いの間にあった壁がなくなったように感じました。よそよそしい雰囲気が取れたのを私も感じましたよ。

長尾:そうでしょう()研修では、この部分に一番時間も気も遣うんですよ。お互いの間に壁があるとチームになんてなれないですからね。

川村:でも年配の方にはこういう方法は抵抗があるでしょう?若い社員やノリの良い方ばかりならいいけれど、そうもいかないですよね。そういう場合はないですか?


長尾:
ありますよ、たくさん!でも気づいたら楽しく夢中になって研修に参加してしまうような環境を整えることに最大限にエネルギーを注いでいます。特に緊張されていたり、抵抗感が強い方が受講者の中にいる場合には、いつもよりアイスブレイクに長い時間をかけます。そうやって普段やらないことをさせて、いつもの行動パターンを壊すんです。そうすることで気づいてもらう。「あれ?何かいいぞ?」って。

川村:なるほど、場作りを徹底的にするわけですね。

長尾:ええ。やっているうちにね、昔の遊びなんかを思い出して、案外年配の方のほうが盛り上がるんですよ()

川村:確かに。昔はああいう遊びしましたもんね!

年配の方にもちょっと工夫をすれば入りやすいというのは、年上の部下をもつリーダーの方のチームづくりには非常に有効ですよね。

長尾:ええ、とっても!今そういうパターンでの依頼が多いんですよ。

少し前の就職氷河期では、企業が一斉に採用を控えたでしょう。それで何が起こったかというと、組織の中に2つのゆがみを作ってしまったんですね。
まずちょうど今組織の中心にならなければならない30代の社員数が少ない。ということはひとりにかかる負荷が大きくなっているわけです。そして自分たちも上司から「教わってきた」という実感が少ない。そこに加えて、部下も採用控えで人数が少ないわけですから、人に教えるという機会がなかった。急に部下ができてもどう教えていいかわからない。もっと言うとどう上司や部下と関っていけばいいかわからないんですよ。

だからアクティビティを取り入れながら研修を進めることで、関り方のコツを知り、お互いをよく知ることが出来るようになるんです。

チームづくりの基本は、まず直接的なコミュニケーションの量を増やすことです。社会のスピードが速くなる中で、人間関係は希薄になっています。普段会社内でのプライベートの関わりってすごく少ないですよね。ちょっとした雑談をしたとしてもその人の人間性にまで深く立ち入った会話をするわけではありません。そうした中でお互いを知ろうとするのは難しいと言うのが現実です。ですがアクティビティを体験する中で上司と手をつないだり、肩を組むという五感を使った触れ合いをすることで、相手に対していつもと違った見方をすることができるようになるんです。

川村:まさにもののみかたを変えるということですね!()

今までの日本ではそうしたことをあうんの呼吸というか、無意識の中でやってきたけれどここに来てしっかりと”見える化”する必要が出てきたということですね。

長尾:そうですね。チームとは、お互いの強みを生かしていくものだと思うんですよ。ひとりの人間には得意なことも苦手なこともある。しかし、チームを組むことでその弱みを補完していくことができます。さらにはお互いの強みにフォーカスしあう。強みが生かされれば弱みは気にならなくなります。まずは、「強みを生かす」という見方に変えて欲しいです。

川村:強みを生かすということがチームをつくるということなんですね。

でも正直、日本の組織のあり方では難しい部分もあると思うんですが。

先ほどの話にも出てきましたが、まだ現場ではリーダーがチームの全てを担うということがスタンダードな考え方ですよね。これって考え方だけではなくて、現状の組織の仕組みがそもそもそういう形なんだと思うんです。それでは、お互いの強みを生かしてというよりもリーダーがパーフェクトであるかないか、ということになってしまうと思うんですが。リーダーになる人だって、その人それぞれの強みを持っているわけですよね。リーダーひとりにパーフェクトを押し付けてはいけないのではないでしょうか。


長尾:
その通りですよ。

カリスマ型のリーダーではチームは動いていかないんです。カリスマ型のリーダーとファシリテーション型リーダーを比べたとき、結果としてチームの成長スピードが速いのはファシリテーション型リーダーの方です。カリスマ型では、部下が考える力をなくしてしまうからです。

もちろんカリスマ型リーダーが必要な時期もあります。ですが、ずっとそれではチームが育っていかない。チームを育てるという見方に変えることも必要ですね。ファシリテーション型リーダーに求められるのは、チームメイキング(採用・編成)とチームビルディング(組織開発・育成)は違うものだと認識した上でどうやってチームとして強みを活かすか、ということを考えていくことが大切だと思っています。

川村:しかし、今の日本ではそれが一緒になってしまっている場合が多いですね。ここはしっかり考えなおさなければならない部分です。日本のリーダーは苦しんでると思いますよ。

それこそリーダーとう肩書きの見方を変える必要がありますね。

長尾:というと?

川村:リーダーという部分からしか、チームを見ることができていないということです。

長尾さんのお話を伺って思ったのですが、あくまでもリーダーはチームのリーダーであって、リーダーだけが存在することはありえない。だからこそリーダーがどうかということではなく、チームがどうあるべきかというように考えていけば、リーダーという肩書きにこだわらずにチームを育てていけるのではないでしょうか。別に肩書きがなくてもリーダーとしての強みを持っている社員がいれば、そういう役割は任せたほうがチームとしてはうまくいく。そういう決断をすることもできるわけですよね?

長尾:まさにその通りですね。日本の組織は肩書きや職位としての「リーダー」にこだわりすぎです。もっとチームとしての考え方をそれぞれが持てるようになれば、解決することもたくさんあると思います。

リーダーとは、チームをリードしていく人です。一方マネージャーという役割もあって、これは物事がうまくいくように進行管理する役割の人ですね。日本ではこの二つの役割が合わさって、リーダーという役割になってしまっているわけです。これを一人でやろうとしてもうまくやるのは相当大変です。僕はこんな風に考えています。リーダーは散らかし屋、マネージャーは片付け屋。それくらいリーダーとマネージャーに必要な素質は違うものです。

川村:そうですよね。違う素質をひとりで担うのは、とても難しいですし、苦しい状況を作り出してしまいますよね。散らかしながら片付けるんですもんね!()

長尾:そうです。強みが違うんですから。チームの中にその素質がある人がいたら、その強みを発揮してもらえばいい。それがチームという考え方です。

先ほどファシリテーター型リーダーの話をしましたね。ファシリテーターって、よく支援・促進する人と訳されますが、役割や機能だけにとらわれず、ファシリテーターは支援的・促進的な働き方とか生き方というように訳してもいいと思うんです。仕事をする上で、自分を導く、人を導くということ。これは正に自分がどう働くかということですよね。ファシリテーション型のリーダーを考えるとき、是非このことも一緒に考えてみたい。自分が組織の中でどういうチームを作りたいかということを考えることは、イコール自分がその組織でどういう働き方をしたいか、だと思うんです。そこを考えてチームのメンバーと話し合って伝え合って、共有していくことができれば、それぞれの人の強みを生かせるチームとはどんなチームなのかということを考えるきっかけもつかみやすいのではないでしょうか。

川村:なるほど。確かにそうですね。

チームというものの見方が見事に変わりました。

長尾さん、今日はありがとうございました。

川村透

川村透

川村透かわむらとおる

川村透事務所 代表

「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…

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