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2009年10月05日

自分で何とかしようとしない

 先日のとある研修でのこと。いつも僕は大枠の構成は準備して本番に臨むのですが、そのときは思ったより早く時間が進んでしまい、時間が少し余って空白ができそうな不測の事態が発生。このときばかりは予備のプランも考えていません。さてどうしよう・・・?

 そこで、一か八か、そのときにディスカッションしていたテーマについて、「~さん、よかったらご自身の体験を教えていただけますか?」と何人かに振ってみることにしました(何とか場をつないでくれるだろうと期待しながら)。

 こちらあてられたAさんにとっても、まさに不測の事態(笑)。どうするかと思いきや、Aさん、静かに立ってとまどいながらも自分の体験談をポツリポツリと話しだしたのです。
過去に担当したプロジェクトで、自分がよかれと思ってとった選択が結局は相手を追い詰めてしまったこと。そして以後、そのことを忘れないようにと、いつも見えるところにそのときに感じた言葉を貼っていると・・・。
 ほかの参加者は、みな真剣に彼の話に聞き入っています。

 次にマイクを向けたBさんは、普段顧客に接する立場にないのに、たまたまお客さんに送った資料が役立ち、感謝されて嬉しかったことを嬉しそうに話してくれました。会場の空気が、とてもあたたかく、豊かなものに変わった感じがしました。
 現場での辛い体験から学んだ教訓や、サポートスタッフの人たちの普段聞けない胸の中の思い。僕はちょっと感動してしまったのです。

 ・・・結局このセッション、終わってみると大成功。彼らの体験談は、伝わってくるものがあり、本当によかった。よほど自分が締めの言葉を考えてまとめるよりも、より深い、多様性のある、気づきのある時間をつくることができたのです。

 いままで僕は、自分が何かいいことを言おうと思って頑張ってきました。でもそれより、皆さんの中にあるいいものを引き出す場つくりのほうを頑張るべきじゃないのかと痛感したのです。場作りとは、参加者自身に何かを気づいてもらうための「しかけ」。テーマ設定、問いかけの仕方、場の形、雰囲気づくりなどです。これができるかどうかで、参加者の気づきの深さが変わってくる。その大事さが身に染みてわかった今回の研修でありました。

 これはファシリテーションでよくいわれることですが、自分で何とかしようとしないこと。詰まったら、参加者に委ねてみる。すると思いもよらぬ展開が待っている。まさにそのとおりですね。今回のようなことがあると、この仕事はやめられません。

 今回、時間が余るという不測の事態に陥ったことで、これまでの自分のパターンが壊れ、新しいアイデアがでてきました。そういう意味では、不測の事態は歓迎すべき出来事なのかも(もののみかた的に考えれば)。でも内心、本当はヒヤヒヤですが(笑)。

川村透

川村透

川村透かわむらとおる

川村透事務所 代表

「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…

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