最近、学生さんや若い社会人の方向けに話をする機会が増えてきました。彼らの悩みは「やりたいことがどうしたら見つかるか?またできるか」というのが多い。そこで今回は、僕なりにその見つけ方を書いてみようと思います。
●学校は6+4=□、社会は□+□=10
先日、名古屋のある大学でセミナーをしたとき、ある先生いわく「最近の学生は、就職という踏ん切りがつかず、学校という社会の周辺で入学、編入学、再入学を繰り返す人が少なくない」というのです。世の中に出て行くのが恐いということのようです。
僕も「もう少し学校という世界の中に浸っていたいなあ」と思った口なので、彼らの気持ちも理解できます。きっと学生さんが一番戸惑うのは、次の式に集約されるのではないでしょうか。
学校:6+4=□
社会:□+□=10
学校にいる間は、問題を与えられ、答えがひとつと決まっていて、それを導ければよかった。でも、社会にでると問題を自分で作りださなければならず、またそれが正しいかどうかを言ってくれる人もいないのです。
僕も誰かに認められないと動けない人だったので、このことはよくわかります。「これでいいの?」の問いに対し「いいんだよ」という承認をしてくれる人をいつも求めていた。自分の生き方についてもそうです。でも、社会に出たら、とたんに自分にオッケーを出してくれる人がいなくなるんです。「会社辞めて自分の可能性を試してもいいの?」の問いに対し、自分で「いいんだよ」と許可を出さなくてはいけないのです。僕がそれに気づいたのは30のときでした。
●やりたいことは、どうやったら見つかるか?
僕もずっと見つからなかったし、はじめからいまの仕事をしたいと決めていたわけではありません。では、どうやってそれを見つけたのか?
それは「沸き立つ心の声に従ってみる」というシンプルなことでした。
僕は元々、なんでも頭で考えて決めてきました。なので、いつも「あ、この集まり楽しそう!」と思ってもすぐに「待て待て、行っても無駄かもよ」と左脳が働き、心に沸き立つ気持ちを抑えてきたのです。でもそれをしている間は、やりたいことは見つかりませんでした。
30を前に会社を辞め、自分の人生をリセットしようと思ったとき、「よし、これからはいままで沸いていた心の声に従ってみよう」とかなり意識をして、そのように行動しはじめました。そんなとき、アメリカのスモールビジネスショーの記事を見つけ、「あ、おもしろそう」→「ダメもとで行ってみよう」との行動につながったのです。そこで運命の本に出会い、その本の翻訳から僕のドラマが始まるわけですが、もしあのとき「いや、せっかく行ってもつまらないかもよ。やめたら」の声に従っていたら…と思うとゾッとします。
やりたいことを見つけるには、まずは「心の声」に耳を傾けてみましょう。もし常に「…したい。けど~だから辞めとこう」との会話が起きるなら、後半を切り捨てることです。
●仕事は手段、その奥にあるものを
僕はいま、講演、翻訳、執筆の仕事をしていますが、元々これらを仕事にしよう!と決めていたわけではありません。
僕は、何かで「自己表現」をしたかったのです。自分の感じたこと、思ったこと、自分のルールを元に何かを作り、それを世に問うてみたかった。それはおそらく、日本語でうまく自分を表現できなかったというコンプレックスがあったのかもしれません。なので、僕にとって講演、翻訳、執筆というのは、自分を表現する手段なのです。
皆さんも、「なぜ、その仕事がしたいか?」と自分に聞いてみてください。「人を喜ばせたい」「自然を大切にしたい」「新しい価値観を吹き込みたい」「人に快適な生活を提供したい」「人に勇気を与えたい」…。このあたりが見えてくると、仕事の選択がぶれなくなってきます。お金とか、安定とか、かっこよさにとらわれず、いま一度、自分に問うてみましょう。
「なぜ、それがしたいのか?」
●自分の血が騒ぐ人にたくさん会う
僕はいろんな人に出会うなか、「この人はおもしろい」と思った人は、全員、「自分で何かをしている人」でした。イベント企画会社の社長、フリーのプランナー、アートディレクター、俳優の卵、塾の経営者、プラスチック工場のオーナー、アメリカで住宅の修繕ビジネスをしている大工さん…。
彼らは、自分が考えたことを売り、自分の名前、信用で勝負をしている人たちでしたが、その生き方がカッコイイ!と思ったのです。そしてその憧れが、いつしか「自分もそうなりたい」という目標に変わっていったのです。
あなたは、どんな人にあって血がザワザワしますか?アドレナリンがどっと出ますか?
できるだけ多くの人に会い、その人たちに共通するものを見つけてください。そこに自分の目指す仕事やライフスタイルのヒントがあるはずです。
●経験がなくても、あきらめないで
もしあなたがいま、あるコンビニの店長さんで、将来、「コマーシャルを作る仕事をしたい」と思ったとします。果たしてその可能性はあるでしょうか。
ここでひとつ、僕の尊敬する佐藤雅彦氏の事例をご紹介します。佐藤氏は「バザールでござーる」や「湖池屋のスコーン」のCMや「だんご三兄弟」で知られるクリエイターですが、彼は元は大手広告代理店のサラリーマンで、31歳まで販促部門でスケジュール管理などの一般職の仕事をしていました。でもあるとき、社内の登用試験に応募したら運良く合格してクリエイティブ部門に転属。しかし、実績も経験もないし、年齢もいっているので、誰も彼に仕事を頼まない。そこで、どうしたか。
彼は、社内の資料室へ通って世界中のCMに目を通し、研究するうち、自分がおもしろいと思うものの法則性を見つけます。その法則に基づいて自分でCM を企画、提案。その後のヒット作は、このときにまとめたルールによるものが大きいといいます。
つまり、経験がなくても、その方法は作り出せるということを言いたいのです。僕は翻訳の経験がなくても、とにかく出版社を探しまくって、出してくれるところを見つけました。講演の実績がなかったから、どんな小さな話す機会でも出向いて話をしました。「実績」の一行をつくるために。
橋がなかったらあきらめるのではなく、自分で橋をかけていいのが社会という場のおもしろさです。経験がなくても、あきらめ
る必要はありません。
●仕事は楽しい
まだまだ書きつくせませんが、仕事をするということは、実際とても楽しいです。昔は義務感と責任感でやっていましたが、いまは満足感、充実感があります。何でも仕事にできる、自分次第でどうにでもなる、この自由さはたまりません(裏を返せば、自分がサボればゼロになる、誰も守ってくれるものはいないということですが、自分の人生の責任は自分が持つというスタンスが、僕にはとっても心地よいです)。
学生の皆さん、ぜひ自分が「何をしていたら自分がハッピーか」、そのことをイメージしてみてください。仕事は手段。それを通して何をしたいのか?組織にいようと、自分でやろうと、皆さんが輝いて仕事をされることを心より願っています。
<今月のレッスン:社会に出て、橋がなかったら、自分でかければいいし、かけていいんです。>
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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