第12回「非接触社会での人の育て方~まとめ編」
さて、このテーマについて一年考えてきましたが、今回が最終回となります。この一年、
以下のようなテーマを掲げ、この非接触社会での人材育成について考えてきましたが、
いかがでしたでしょうか。
- 第1回「リモート環境での新人の迎え方」
- 第2回「部下に好印象を持たれるオンライン会議4つのポイント」
- 第3回「リモート環境での部下の管理の仕方」
- 第4回「リモート環境での帰属意識の作り方」
- 第5回「リモート環境でのモチベーション維持の仕方」
- 第6回「リモート環境での人の褒め方叱り方」
- 第7回「リモート環境での組織の在り方」
- 第8回「実録インタビュー“リモート環境で働いて思うこと”」(前編)
- 第9回「実録インタビュー“リモート環境で働いて思うこと”」(後編)
- 第10回「リモート研修を実施して気づいたことをシェアします」
- 第11回「部下と会わずに部下を育てる~2030年の人材育成」
- 第12回「非接触社会での人の育て方~まとめ編」
これまでの歴史で、人類は幾度かの大きな価値転換を迫られてきたと思いますが、今回の
非接触社会というのも、そのうちのひとつだと思っています。いままでは対面で、人同士が接触するのが当たり前だった世の中が、急に会ってはいけないということになり、ほとんどの人が最初は面喰ったわけですが、最近は多くの人たちもこの変化にうまく順応し、この非接触プラットフォームを活用しながら、既存のビジネスを回したり、新しい道を見つけたりしているというのが現状のようです。
日常生活もだいぶ変わりました。子どもの小学校のクラス懇談会や授業参観などはオンラインになり、わざわざ学校に足を運ばなくてもよくなりました。また口座を開いている証券会社との定期的な打ち合わせもズームで済むようになりました。このあたりはメリットしかないので、とても効率化され助かっています。
さて、では本連載のテーマである「会わずして人を育てる」という点についてはどうでしょうか。いま、3年近くこの非接触社会を経験して私が思うのは、「9割方はできる」と思っています。いま多くの企業様での研修をオンラインで実施していますが、聞く側のモチベーションや姿勢がしっかりしている企業では、オンライン研修でもその手ごたえを感じることができます。問いを投げかければきちんと考えた答えが返ってくるし、質問も上がってきます。またブレークアウトセッション(数人のグループに分かれてディスカッションできるしくみ)に分けても、監視の目がなくてもちゃんと話し合いは進んでいます。このように非接触での育成は、受け側の意識やモチベーションの高さがまずは大切です。
人を育てるには研修だけ受けさせればいい、というのは誤りです。研修は、人を育てる要素のうちの一つです。研修は新しい情報(知識や仕事のやり方など)を伝える方法ですが、これだけでしたらオンラインでも十分に可能です。いやむしろオンラインのほうが効率が良いかもしれません。でも、それで終わりではないのです。
人は社会的動物であり、人同士で繋がりたい、関わりたいという欲求が根本的にあります。
会社という組織で働くことで、人は安心感を得、お互い一つの目標に向かって進むことで帰属意識や達成感を感じ、そして周りから認められたりすることで承認欲求を満たされます。そして上司や先輩から学んだり、教えてもらうこと自体が嬉しかったりするものです。そういう部分を補えるよう、リアルでの関わりを作る必要があります。そうでないと、人はこの組織にいる意味をあまり感じなくなり、辞めてしまいますから。
「育てる」という言葉は、親鳥がひなを覆い、独り立ちできるまで面倒をみるように、人が人に施す行為です。そこにはいくらかの愛が存在するはず。「育」を施すほうも施されるほうも、そこから得るものがたくさんある。この愛なくして、人を育てることはできません。最後に公式を一つ提案し、このコラムを終えたいと思います。
非接触社会での人の育て方=オンライン環境+愛
一年間お付き合いいただき、ありがとうございました。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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