第7回「教わる力」
最近の若い人たちと接していますと、「上司に聞いても教えてくれない」「聞いても怒られるし聞かなくても怒られる」といような声を良く耳にします。特に私の昭和の世代は、丁寧に教えてもらった経験がない人が多いので、教えるのが下手なのかもしれません。しかし、すべてこれが上司のせいかというと、実はそうでもないと思うのです。今回は「教わる力」について書いてみたいと思います。
仕事のできる人は、教えたい人になっている!
ある金融機関で新人向けの研修を担当しているのですが、先輩方に一年生のときはどんなことに気を付けていたのかをインタビューしたことがあります。そのなかで印象に残っていることは、ある女性職員の方が「上司からみて教えたい人になるよう、自分から日々コミュニケーションをとっていた」と言っていたこと。彼女は、日頃から、自分の上司に関心を持ち、仕事のことから趣味などのことまで、質問をしたり共感したりして、できるだけ上司との距離を縮めておく努力をしたそうです。さりげなく「今日のネクタイいいですね」などと褒め言葉をかけたり、上司が阪神ファンなら「昨日の巨人戦惜しかったですね~」とか。決してゴマをするということではなく、彼女が心底その上司を好きだったわけでもないでしょう。彼女はあくまで仕事の一環として、よい部下を演じていたのかもしれません。でも上司も人間です。そうして接してくれる相手には、コミュニケーションもとりやすいし、仕事も教えたくなるのは当然だと思います。この話を聞いて、私は「仕事ができる人は、教わる力があるんだな」と納得したものです。
教わる力とは?
ではどうすれば、自分が上司からみて教えたい人になれるのでしょうか。以下、3つのポイントにまとめてみました。
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- 日頃から距離感を縮める
- 上司と敵対しても何のメリットもなく、仕事をしづらくするだけです。ここは仕事と割り切って、できるだけ上司の味方側になりましょう。上の人は挨拶が大好きです。また尊敬されることを好みます。自分からたくさん話しかけ、できるだけ上司に興味を持ちましょう。演技でもいいので(わざとらしくならないように)、髪を切ってきたとき、おニューのシャツを着てきたときなどには誉め言葉を。また、たわいない雑談にもできるだけ付き合いましょう。
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- 価値観の共有
- 上司の仕事に対する価値観、人生観などを理解しましょう。自分が共感しなくとも、「そういう考えもあるんですね、なるほど」と、相手を受け止めること。上司からしてみれば、たとえ相手が年下でも、自分の価値観を理解してくれる人には心を開きたくなるものです。
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- 仕事に対する姿勢をアピール
- わからないことがあったら、どんどん質問しましょう。また話を聞くときには、フリでもいいので、メモをとりましょう。いまどきそんなことをする人は稀有かもしれません。しかし、これは上の世代(特に昭和)にとっては効果てきめんです。「こいつ、やる気があるな」ととたんに上司の目の色が変わるでしょう。先日、信用金庫の新人の方が「毎回メモをとってお客様の話を聞いていたら、お見合いの話をもってこられた」と言っていました(笑)。これはそのお客様がそれだけこの職員を信用している何よりの証ですね。それだけこの行動が効果があります。 また、言われたこと、頼まれたことの報告は必ずしましょう。上司は「あの件はどうなったかな」といつも気にしています。毎回報告をきちんとすることで、あなたのポイントはグングン上がっていきます。 そして、これも効き目があるのは「相談する」こと。上司を頼って(頼るふりでもいいので 笑)仕事でのトラブルや悩みなどを相談してみましょう。頼られて嬉しくない人は誰もいないのです。
いかがでしょうか。このように上司との距離感を日頃から詰めておくことで「あいつには教えたい」という気持ちが上司の中に沸々とわいてくるのです(笑)。こうしてまとめてみると、上司といえども一人の人間。意外とシンプルですね。
「うちの上司は何も教えてくれない」と文句を言っているそこのあなた。まだ自分からできることはあるはずです。教わる力も組織で生きていく上で必要なスキルのひとつ。ぜひ参考にしてみてください。
【教わる力とは?】
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- 日頃から距離感を縮める
- ・挨拶。またちょっとした変化にも気がつくように(服装、髪型)
・上司に興味をもつ(趣味、日常の生活)
・褒める、尊敬する(フリでもいい)
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- 価値観の共有
- ・共感しないまでも、上司の価値観を知り、理解はする
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- 仕事に対する姿勢をアピール
- ・自分から質問する
・話を聞くときには必ずメモを
・報告
・相談
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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