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2022年12月15日

あきらめない力

第9回「あきらめない力」

サッカーワールドカップのベスト8をかけた戦いが終わりました。日本はまたしてもベスト8の壁に阻まれ、クロアチアにPK戦の結果破れました。でもここまでの戦いで優勝候補のドイツを下し、スペインを下し、その戦い方に多くの日本人が勇気をもらったことでしょう。なかでもスペイン戦で三笘選手が見せたあのエンドラインでの運命の1.3ミリ。今回はこの出来事から「あきらめない力」について書いてみたいと思います。

エンドラインを割りそうになったボールを必死に追いかけた三苫選手。「一ミリでも残ればと思って追った」とのコメントもありましたが、人の目でみれば誰が見てもボールアウト。しかし最新テクノロジーを使ったVAR判定で、ライン上の空間でわずかにボールが残っていることが証明され、三苫選手の折り返したボールを入れた田中選手のゴールは認められ、これが決勝点となりました。

普通ならあきらめてしまったボールかも知れません。しかしそれを気持ちで追った三苫選手。その思いが1.3ミリという結果に繋がったとしか思えません。本当にこのシーンは、日本中、いや世界であのシーンを見た人にも「あきらめない」、never give upの精神を思い起こしたことだと思います。

人生で、何度かは「ここであきらめてはいけない」という場面が巡ってきます。僕にとってはそれは、最初の本を翻訳して出版するときでした。当時アメリカで偶然に出会った一冊の本。これを日本で翻訳したいと出版社を回るも、ほとんどが門前払い。うまく会議にまでかけてくれても、その会議で通らない。「その著者は有名なのか?」「アメリカで売れたのか?」「あなたには翻訳の経験があるのか?」-どれも皆無でした。

何度あきらめかけたことでしょう。出版については当然彼らのほうがプロ。その人たちが難しいというのだからきっと難しいのに間違いありません。「やっぱり無理かな」――そう思ったとき、思い出したのが著者とのメールでした。「あなたを信じている。日本のことはすべてあなたに任せる」そこまで僕を信じてくれたのです。そんな彼をがっかりさせるわけにはいかない。そしてその本は、自分が「絶対これはいける!」と思った内容です。これを分かってくれる人が絶対にいるはずだ。自分の感性は間違っていない。このふたつがあったからこそ、僕は出版社への売り込みを続けることができました。そして21社目。電話をして会いにいった編集者の方が「うん、面白いね。やってみようか」と言ってくれたのです。その瞬間の嬉しさは今も忘れることができません。自分の信じたことをあきらめずによかった。心からそう思いました。

皆さんも日々、思い通りにいかないことがあるでしょう。ビジネスの現場ではそんなことばかりです。せっかく作り上げた自分の企画を上司はわかってくれない、業務の改善を何度訴えても会社はわかってくれない。私が本の出版で学んだのは、同じことを持って行っても、人が違えば感性が違う、同じ人でもタイミングが月が違えば相手の答えも変わる(出版計画の都合などもありますよね 笑)、また世の中の価値観も時と共に変わるということです。去年だめでも今年はオッケーかも知れません。ですので、自分が本当にいいと思ったモノは、そう簡単にあきらめてはいけません。何度跳ね返されても、そういうものだと思うこと。私の場合は21枚目のカードで当たりが出ましたが、人によっては7枚目かも知れないし、101枚目かも知れない。でもいつかは必ず当たりが出る。そう信じられるかどうかです。三苫選手、あきらめない気持ちを思い出させてくれて本当にありがとうございました。

【あきらめない力】

  • 自分が信じたものはそう簡単にあきらめてはいけない
  • 人が違えば感性も違うし、同じ人でもタイミングが変われば答えも変わる
  • いつかは必ず当たりがでると信じよう

川村透

川村透

川村透かわむらとおる

川村透事務所 代表

「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…

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