さて今月より新連載のスタートです。今年のテーマは「アフターコロナ時代の新しいスタンダード」。私たちの生活も、長いコロナ禍期間を経て、ようやく出口が見えてきました。新型コロナという感染症も5月から5類となり、インフルエンザと同じ扱いになります。
さて、新型コロナというショックにより世界は大きく変化しました。いや進化というべきかもしれません。いままで当たり前だった「対面、接触」ができなくなり、人類はテクノロジーを駆使した様々な工夫により、新しいやり方を見つけてきました。またそれ以外でも、人の価値観は進化し、人同士の付き合い方、上司と部下の関係、また会社の在り方なども昭和の時代とは様変わりしています。本連載では新型コロナ明け後の新しい時代において、様々なテーマについてどんな基準がふさわしいのか、その提案をしてみようと思っています。第一回目はリーダーのスタイルについてです。
第1回「新しいリーダーのスタイル」
栗山監督が見せてくれたもの
先日のWBC、ワールドベースボールクラシックでは、日本がアメリカを下し優勝しました。各選手の活躍もさることながら、彼らをまとめた栗山監督の在り方も注目を浴びました。栗山監督は、決して自分が前に前にというカリスマタイプでなく、選手をファーストネームで呼んで距離感を縮めたり、また当時球界ではほぼ反対意見しかなかった大谷翔平の「二刀流」を受け入れ、選手の意向を尊重していました。またメンバーの顔触れをみて、あえてチームリーダーを置かずに全員がリーダーというやり方をとったり、慣習や常識にとらわれない柔軟さを見せてくれました。またなかなか当たりのでなかった村上宗隆選手を最後まで信頼し続け、それが結果的にメキシコ戦での決勝打に繋がりました。
私は、栗山監督はこれからの管理職がとるべきリーダーの在り方の一つの例を見せてくれたと思っています。決して近寄りがたい雰囲気を出さずに自分から降りていき、選手の個性を尊重して能力を引き出し、徹底的に信頼を寄せる…。これはサッカー日本代表監督の森保一監督にも似たような雰囲気を感じますね。選手一人ひとりを大切にし、ホテルから各選手が帰国するときには必ず挨拶に立ち会うという森保監督…。もし会社の上司がこんな人であれば、みな頑張りたいと思うのではないでしょうか(笑)。
ダルビッシュ有選手の気遣い
ダルビッシュ有選手や大谷翔平選手の振る舞いも興味深いものがありました。2009年の前回日本が優勝したときには、イチロー選手がリーダー的な存在でした。イチロー選手はどうしてもその存在感から、近寄りがたいオーラを出してしまいますし、なかなか選手のほうから気軽に寄っていくことも難しかったことでしょう。しかしダルビッシュ選手は、自分からチーム内での立ち位置を察し、決して偉ぶることもなく、投球のノウハウを惜しげもなく伝授したり、若手を食事会に誘い、その食事会では自ら全員が話せるように話を振ったりと、いままでの先輩のイメージとはちょっと異なる、新しい先輩像を見せてくれました。
自ら降りていき、目を配る
ダルビッシュ選手の振る舞いからも私たちは学べることがあります。昔は会社でも先輩は近づきにくく、自分から聞きにいかないと教えてくれなかったり、飲み会にいっても若手が気を使って先輩のところに行ったりしていましたが、いまはそれではダメ。むしろダルビッシュ選手のように自ら降りていく姿勢が必要なのですね。
栗山監督やダルビッシュ選手をみて、いまの管理職の人たちは何を思ったでしょうか。
そこには自分がかつて接してきた上司の姿はなく、新しい時代のリーダーのイメージが見えたはずです。
【新しいリーダーのスタイル】
※()内はその例
- 柔軟で柔らかい(決して強面ではない、栗山、森保監督のよう)
- 相手の個性や意向を理解し、叶えようとする(大谷翔平選手の二刀流を受け入れる)
- 慣習にとらわれず、場に応じて柔軟に対応する(チームリーダーを置かない)
- 自分から降りていく(ダルビッシュ選手)
- 出し惜しみをせず、ノウハウはどんどん教える(ダルビッシュ選手)
- 部下を信じる。結果が出なくてもその責任を負う覚悟がある(栗山監督)
- ファシリテーターに徹する。全員に目を配る(ダルビッシュ選手)
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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