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2023年07月18日

当たり前をあえてする

第4回「当たり前をあえてする」

最近、組織での人のマネジメントの現場も進化してきている気がします。特に、人と人との関係性の大事さにやっと焦点が当たってきたように思えます。これはおそらく、コロナ禍によって人同士の距離が離れ、それをまたつなぎ合わせる必要性に迫られてのこともあるでしょう。

そしておもしろいのは、昔は“なんとなく”、つまりあえて意識せずにやっていたコミュニケーションの取り方が、いまあえてひとつの手法として言語化(定義化)され、その意味づけと共に新しいスタイルとして復活していることです。

ザツダンという1on1ミーティング

昭和の時代は、会社内で雑談は普通にされていました。席を並べた同僚や前の席の上司と、また昼時にもなれば連れ立って近くのうまい定食屋に行ったり、食後にはコーヒーを飲みながら話したり、など色々な場面で雑談をしていたように思います。こうしたなかで、図らずともお互いのことを理解し、意思疎通もでき、チームワークを発揮しやすい関係性ができていました。

ところがいまは、基本リモートであったり、また出社しても一人でパソコンに向かう時間が多かったり、食事もコンビニで買ってきて一人でスマホを見ながら食べたりと、職場にいても人と話すという時間がとても減っていますよね。こういう状況では、人と人との親和性が低く、いざチームで何かをしようと思っても、なかなか距離感が縮まらないという問題が起きます。

こうした問題を解決すべく様々な企業でいろいろな取り組みをしていますが、調べてみるとサイボウズという会社の「ザツダン」という取組みが興味深いので、それを紹介します。
(参考:サイボウズサイト teamwork.cybozu.co.jp/blog より)
「ザツダン」は、形的には1on1ミーティングですが、よくある「面談」とは違い、その目的は相手とコミュニケーションをとることです。面談というのは、とてもフォーマルで、上司が部下を評価する、あるいは進捗を報告したり問題を解決するという仕事がメインのミーティングですが、ザツダンはそうではなく、相手が話したいことを話す、というスタンスのようです。その時の体調のこと、働き方のここと、チーム内の人間関係のこと、趣味のことなどが話に上がるようです。

★ザツダンの特徴★

  • 評価や問題解決の場ではない
  • コミュニケーションの量を増やし、お互いを知ることがメイン
  • 部下の関心事がメイン
  • 週1、30分など、定期的には実施するも、やらなくてもよい(部下が選べる)

こうした場があることで、上司は部下を観察し、いまどんなフォローが必要かをさぐることができます。上司に必要なのはアドバイスではなく「聞くスキル」。個人の状態をよく知ることで、常によい状態になるようにサポートし、それが結果としてチームのアウトプットの向上につながる、という考え方です。

こうして考えると、この「ザツダン」のように、昔なんとなくやっていたことをあえて言語化、定義化してその意味づけを考える、というのは、今の時代に必要なようです。ほかにそうした行動はないか、少し考えてみました。

  • アイサツ・・・「おはようございます」「失礼します」など、節目節目でお互いに声をかけることで、自分の存在をアピールでき、相手にもやる気が伝わる
  • カンシャ・・・「ありがとう」「助かるよ」と思いを口にすることで、相手にも感謝の気持ちが伝わり、人間関係がスムーズにいく
  • ホメル・・・相手のいいところをみつけて伝えてあげる。また仕事で何等かの成果を上げたときには、相手の喜ぶやり方で承認してあげる。それにより相手の自己承認欲も満たされ、よりこのチームで働きたいという気持ちも強くなる

どうでしょうか。「そんな当たり前のことを」と思われるかもしれませんが、実はこうした概念こそ、いまだんだんと失われつつあるのです。私が昔、留学していたときに、日本の文化を少し知っているホストマザーが「Kigatsuku~気が付く」という概念を英語で教会で説明したいと言われ、考えたあげく “Do without being told” と説明した覚えがあります。当たり前だと思っていたことを言語化してみて、何か不思議な思いがしたのですが、こうして当たり前にできていたことをあえて説明しなくてはならないのがいまの時代なのかも知れません。テクノロジーは進化し社会は成熟してきているのに、人としての対人スキルは後退しているのかもという一抹の不安はありますが…。

ぜひ皆さんも、当たり前にしていたことを言語化(定義化)し、実行してみてください。味もわからずなんとなくやっていた昭和。その意味をしっかりと定義づけして意図的に行う令和。私たちは時代の過渡期にいるのです。

【まとめ:当たり前をあえてする】

  • 現場のマネジメントの問題意識も進化し、より人との関係性に寄ってきている
  • 昭和の時代になにげなくやっていたコミュニケーションの取り方が、いまカタカナとなって令和で蘇っている
  • ザツダンのほか、アイサツ、カンシャ、ホメル、キガツクなども考えられる
  • これらのアクションの意味を理解し、意図的に行うことが重要

川村透

川村透

川村透かわむらとおる

川村透事務所 代表

「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…

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