さて、人のマネジメントの二回目、「人を育てる」ですが、これができない管理職の方が最近とても多い。『名選手、名監督にあらず』――自分ができるのと、人をできるようにさせるのとでは、まったく求められる能力が違うということですね。
そもそも、組織において「人が育つ」とはどういうことでしょうか。それは、部下がどんどん新しいことを会得して対応力があがり、ひいては組織への貢献度アップへとつながることを意味しているのです。ですので、一番大事なことは、その組織の人材育成担当者が「組織のゴールを、いかに本人の興味や可能性にむすびつけるか」なのです。ここは管理者の創意工夫が求められるところですが、肝となる部分です。たとえば新人によく課される『飛び込みで名刺を100枚集めてこい』でも、「これは、見知らぬ人へ飛び込んでいく勇気を身につける訓練であるし、また自分の話し方や態度による相手の対応の違いなどを知ることで、プロの営業マンとしての第一ステップが身につくのだ」と言われれば、本気で営業を極めようと思っている人にとっては、やりがいのある仕事に変わるかもしれません。
人がグッと成長するには、つぎのような要素が効果的です:
自分の力でやったという満足感を得るには、自身で試行錯誤、工夫をしたという実感が大切です。ですので、仕事を任せるときも、細部にわたってやり方を指示するのではなく、ゴールと途中押さえておくべき点だけを伝え、あとのやり方は任せるという”自由なスペース”を与えることが必要です。
また、周囲からのプラスのフィードバックは、本人の何よりの励みとなり、自身の「周りから認められたい」という承認の欲求を満たします。なので、任せた仕事の成果が出たときなどには、それを部内全体でたたえてあげるような場づくりをするのも効果的です。
そして最後は成功体験。これは、たとえば未熟な新人でも、一連のプロセスを最後までとりあえず体験させるということです。営業でしたら、電話でのコンタクトにはじまり、途中の交渉などは多少手伝っても、最後の契約書に判をもらうところは、その新人にやってもらうということです。そうすることで、作業の全体像が見えますし、達成感や喜びを疑似的ながらも体験できます。それが本人のやる気にもつながるのです。子どもと接していると、これはよくわかります。私が5歳になる子どもと雑誌の付録の紙工作などを作っていても、途中のハサミを入れたりするところは親がやりますが、最後の糊付けを子どもにやらせると、本人の目が輝きます。人を育てるには、成功体験は欠かせないものですね。
多くの職場では、目先のノルマや作業に追われ、人を育てるというタスクが軽視されていますが、現場を活かすには、この作業をしっかりタスクとして認識し、時間と工数をかかける必要があります。ぜひ一度、考えてみてください。
さて、次回は「人」のマネジメント最終回、「反発分子をどう扱うか」です。どうぞお楽しみに。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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