さて、今回は人を育てるにあたり、どういう心構えをすればよいのか、についてです。そもそも、職場において、「人を育てる」とはどういうことでしょうか。それは第一には「仕事の処理能力を高める」ことにほかならないのですが、願わくば本人の人間力を高めることにつながれば最高です。人を育てる際に留意すべきポイントを、以下に7つ上げてみました。
裸の自分を試される
人を育てるとは、裸の自分を試されることでもあります。あなたの仕事に対する姿勢が、部下が育つかどうかを左右します。部下は上司の背中を見て育ちます。何を言ったかより、どう考え、どう動いているか。そこを見られているのです。あなたの行動には一貫性がありますか。打算で考えてはいませんか。人の育成は同時に自分が成長する場。育成すべき部下を持ったら、以下のポイントを自問自答してみてください。
・なぜこの仕事を選んだのか
・自分はどうなりたいのか
・自分が大切にしている価値観はなにか
・この仕事で自分が誇れること
こうした点を確認することが、自分の成長にも、ひいては部下の成長にもつながるのです。
ひとつのタスクとしてとらえること
人を育てることはひとつのタスクです。よく見受けられるのは、オン・ザ・ジョブ・トレーニングといえば、一見響きはいいですが、実際はいきあたり的に指導をしているケース。自分の仕事の合間に片手間でやろうとしても人は育ちません。相手のことを考える時間をとり、面談をし、定期的にカウンセリングをするといった、計画と行動が必要なのです。
自分の体験は役に立たない
いま40代の人たちは、おそらく昔のやり方で指導を受けてきた人が多いのでないでしょうか。仕事は盗んで覚えろとか土日出勤当たり前、といった価値観のなかで育ってきた上司は、自分がされたやり方で部下を指導しようとしますが、今の人たちには全く通用しません。こちらから降りていく、仕事を依頼するときにはきちんと目的や根拠や効果を説明する、などの対応を取る必要があります。面倒なように思いますが、見方を変えれば人が進化して、無駄なことはしなくなっているのです。ぜひ自分の指導方法を見直してください。
放任主義ではいけない
よく「育てる=丸投げ」と思っている方が多いようですが、それは育成を放棄しているようなものです。まれに、放っておけば自分で育ってくる人もいますが、今の時代、それを期待しても難しいようです。かといって、すべてやり方を指示して相手に考える余裕を与えないのもいけません。要は放任と管理の間のさじ加減をするのが、育成者の仕事のひとつです。
育つ枠組みがある
一番オーソドックスなのは、目標や課題を設定し、そこに向かってトライさせ、必要に応じて手を差し伸べる、といった枠組みです。人を育てるときには、この形に載って指導するのが一般的です。目標を設定する際には、目標設定理論を知っておくとよいでしょう。人は、あまり簡単にできてしまう目標より、少し頑張ると到達できるくらいの目標だと、モチベーションが上がるといわれています。本人と話し合って、適切な目標を決めましょう。また、きちんと定期的にフォローアップをして軌道修正をすること。早め早めの対応が大きなミスを防ぎます。
部下を守る
部下がミスを犯したときなどは、率先して前に立ち、部下を守りましょう。なかには失敗したら、その部下をみんなの前で徹底的に追い詰め、こきおろす上司もいますが、こうした姿勢は周りの部下たちもみています。そして、失敗すると自分もひどい仕打ちを受けるな、と学習し、恐怖と不安におののきながら仕事をすることになります。そして上司は信頼を失うのです。
プラス視点で部下を見る
部下のできない部分に目を向けるのではなく、よいところ、得意な部分をより伸ばすように接してください。相手の可能性を信じ切ることが大事です。悪いところを指摘して直させるより、得意なところを伸ばせるように、失敗する原因よりうまくいく方法に目を向けさせていきたいものです。崖から突き落とすライオンではなく、おぼれた小象を川から引っ張り上げる親の象のように、あたたかい目で部下を見守ってあげてください。
以上、上司として人を育てる際の心構えについて、いくつかまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。ぜひこれらのポイントを参考に、部下の可能性を伸ばしてあげてください。いつかあなたの元を去るとき「~さんとまた一緒に仕事がしたいです」と言われたら最高ですね。
次回は「人が育つ環境」について考えていきます。どうぞお楽しみに。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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