企業の経営者の多くがこの問題に頭を悩ませています。「どうすれば、うちの社員は自発的に動いてくれるのか」と。自分から問題を見つけ、目標の達成に必要なことを率先してやったり、黙っていても、会社をよくするために動いてくれる姿勢は、どうすれば身につくのでしょうか(ここでいう自発的にとは、インセンティブ(報酬)につられて動いたり、社長の恫喝や叱責を恐れるがゆえに動く恐怖政治のようなものはのぞきます。あくまでも、真に自分の意思で動くということです)。
まずはじめに、その組織の掲げる理念やビジョン、社長の考え方に共感している必要があります。会社が成し遂げようとしていることが、自分にとっても大切なことであり、社長の考え方を自分も共有できるかどうか。ここがぶれていると、自然と体が動かず、自分の意に逆らって動くことになるため、動きは重いものになります。よくあるのは、理念が正しくても、その旗振り役の社長のやり方や言動がおかしいというケース。これでは「自ら動いて会社をよくしよう」とは思えませんね。
次に大切なことは、その仕事への深い理解です。自分がやっている仕事がどこにつながっているのか。誰の役に立っているのか。世の中に対する意義や目的は何か。そこが見えることで、取り組む意識が変わります。言われてやっているだけだとその一部しか見えなくても、お客様の顔が見えたり、やっている作業の意味がわかったりすると、動かす手に心がこもるものです。有名な寓話にあるように、ただ時給のためにレンガを積む職人と、完成したお城をイメージして積んでいる職人とでは、モチベーションが違います。そのイメージを社員に見せてあげるのは、社長の仕事です。
三つめは、問題を見つけ、解決する力です。与えられた問題を解く力は学校で身につきますが、問題を見つけてくる力は別です。自分の目の前ばかりをみていては、問題発見能力はつきません。これを養うには、自分の仕事について広い視野が必要になってきます。たとえば業界のベストプラクティスを知り、それとの差を埋める方法を考えたり、ほかの業界などのやり方を参考にし、自分のやり方に工夫はできないかを考えたりする。またはお客様の立場になってみたときに、もっといい方法を考えてみる・・・。こうして日々、現状に満足はせず「もっといい方法がある」と探求するカイゼンマインドを常に持っている必要があります。
ここまでは、自発的人間になるための心構えについてでしたが、しくみとしてこれを支える制度を採り入れることもできます。
まず、自分から手を挙げた人が輝けるしくみづくりです。人は自主性を与えられるとやる気を出し、自ら動くといわれています(ダニエル・ピンク「モチベーション3.0」より)が、これを具現化するならば、社内起業応援制度や店長立候補制度などが挙げられるでしょう。
社内起業応援制度は、自分がやりたいビジネスプランの提案書を書き、それを上司にプレゼンして採用されたら自分が責任者になるというもの。また店長立候補制度は、通常は上から任命される役職に、自分から手を挙げるものです。
これらに共通することは、双方とも自分でやると手を挙げたのですから、イヤイヤする人はいないはず。いやむしろやりたいことなのですから、黙っていても勝手に動き出すはずです。このように、「自発的に動くことが評価される組織の文化・価値観」を定着させることが効果的でしょう。また、こうした制度でなくても、普段から、自発的行動を促すような取り組み、たとえばチェックインミーティング(始業前に、一人一言ずつ、今日の抱負や昨日あった良い出来事などを話す)や、小さなプロジェクトを担当者を決めてやらせてみる(おそうじタイム、ランチ会主催、3時のストレッチ体操、など、軽いノリでよい)などもよいでしょう。このねらいは、自発的に動くことに慣れてもらい、恐怖心を取り除くことです。いまの若い人たちの中には、自分から動くことに慣れていない人も少なくありません。責任を取りたくない、自分だけ目立ちたくないといった不安を抱えています。こうした不安を軽減していく工夫も必要でしょう。
以上、自発的になるための心構えやしくみをお伝えしましたが、こうしたひとつひとつの積み重ねが、その会社の人間を自発的に変える土壌となっていくのです。
次回は、「どうやって相手のやる気につなげるのか」についてお伝えします。どうぞお楽しみに。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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