さて、今回は、どうすれば人をやる気にさせることができるのか、というテーマです。
まず最初に忘れてはいけないことは、自分自身がその仕事に熱中しているか、ということ。自分が醒めていて、やる気もないような仕事を相手がやりたいと思うはずはありません。やる気のエネルギーは伝染します。部下のやる気について悩む前に、自身のやる気についてはどうなのかを考える必要があるでしょう。
次にするべきことは、相手のやる気のスイッチを知ることです。やる気の源は人によって異なります。一回だけの面接では把握できないかもしれません。時間をかけて部下と接し、周囲の情報なども参考にしながら、相手のスイッチを探りましょう。お金、昇進へのステップ、やりたい仕事、周りからの感謝、など、それは本当に様々なのです。自分の価値観を押し付けてはいけません。よく40代後半の上司が部下のコントロールに失敗するのは、自分の価値観で部下を見ているからです。バブルのイケイケドンドンを経験している世代は、「24時間戦えますか」のCMソングが一世を風靡したように、土日残業当たり前、仕事中心家庭は二の次、の価値観で生きてきた人が多いのですが、それは今の20代にとってはまったく理解できないものです。相手を知り、相手に合わせたスイッチを押せるかどうかが、相手を動かすカギになります。
相手のやる気を引き出すステップ
- 1.自分自身がその仕事に熱中する
- 2.相手のやる気スイッチを知る
- 3.目の前の仕事とそのスイッチの間を埋める
- 4.小さな成功を体験させる
3つ目のステップは、目の前の仕事とそのスイッチとの間を埋める作業です。部下にとっては、おそらく目の前のタスクが、やらざるを得ない作業であって、義務感からやっていることがほとんどでしょう。そこに新しい意味を持たせるのがマネジャーの仕事です。つまり、目の前の仕事が、どう本人のゴールにつながるのか、その道筋をわかりやすく見せてあげることです。これができれば一番ですが、難しい場合は、本人が気づいていないその仕事の価値や可能性を提示してあげることです。たとえば営業で壁にぶつかって落ち込んでいる部下には、「いろんな人の断り方のパターンをまとめて本にしてみたら?」と私なら提案してみます。すると、今まで嫌でしかなかった「断られる」というマイナスの出来事が、本の材料というプラスに変わります。これはその部下に「自分の本が出せるかも」という山っ気があればの話ですが、私が部下なら、このような視点の転換が提示されれば、頑張れそうな気がします(笑)。
ここまでくれば、次は最後のステップ、それは小さな成功を体験させることです。目の前の仕事の意味を熱く語り、相手のやる気スイッチを知り、その二つを埋める絵が描けたら、次は行動に移します。最初から難しい課題を出さず、少し頑張ればできるものや、あるいは一部を上司が手伝ってもよいでしょう。ここで大事なことは、本人に成功の体験をさせることです(なかには失敗の体験をさせ、なにくそという反骨精神がエネルギーになる人もいますが)。たとえば営業職で契約をとる仕事であれば、上司がアポイントをとって交渉をまとめ、最後の契約の場面を部下にさせてみる、というふうに。それにより、自分が契約の一プロセスに関わったという自信が生まれ、次もやってみようかなという動機が生まれます。昔はゼロから一人でやらせ、上司はできるまで放っておくというスタイルが主流でしたが、いまはそこまでの耐性がない人が多く、上司側の意識改革が必要かもしれません。
マネジャーにとって、相手のやる気を出させる魔法の杖はありません。しかし、必ず必要な能力は、「人を見る力」だと思います。人を見て法を説け、というように、相手のやる気スイッチをよく見抜けるかどうかが、成功するカギとなるでしょう。
次回は、人づくりにおいてよくぶつかる「数々のジレンマについて」考えます。どうぞお楽しみに。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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