皆さんの会社では社員に向けた研修をしていますか。 今回は「人を育てる研修」について考えてみたいと思います。
研修は大きく分けてふたつの形があります。ひとつは講義形式の知識インプット型。参加者は話を聞きノートを一生懸命とる、勉強スタイルです。もうひとつが、参加形式のワークショップ型。こちらは参加者がグループで話し合ったり、与えられた課題を解決したり、アウトプットが中心となります。
人を育てる=自立型社員をつくる
対象となる社員に何を身につけてほしいか、その目的によってどちらのスタイルが良いのかは異なります。ISOの認証やプライバシーマークをとるための研修などでは、新しい知識の吸収が目的なので講義型がよいでしょう。しかし、人を育てる=自立型人間をつくる、と見た場合、私は参加型研修のほうがよいと思います。
30年も前にアメリカの大学で経営学の授業を受けたときのことです。先生が生徒たちを数人のグループに分け、トランプを配り、「どのチームが一番高いタワーをつくれるか。しかし言葉は発してはいけない」という課題を出しました。これは意思決定のプロセスを学ぶための授業だったように記憶していますが、このときの衝撃はいまでも忘れられません。これを「意思決定には3つのむずかしさがある。ひとつには…」と先生が黒板に板書をしても、きっとすぐに忘れてしまったことでしょう。
聞くだけ2割、体験型9割
人の姿勢が受動的であるか、能動的であるかにより、記憶に残る度合いや成果は大きく変わります。皆さんも、何か新しいことを学ぶとき、人から聞いたことよりも自分で苦労して身につけたことのほうがしっかりと覚えている、といった経験があるでしょう。(語学などはまさにそうで、いくら英会話教室に行っても身につかないのは、講師にリードされているからです。現地で自分が汗をかきかき調べてしゃべったフレーズはしっかりと覚えているものです)。以下のデータによれば、講義を聞いただけだと内容の20%、何かアクティビティを行いながらの体験型学習の場合、なんと内容の90%が記憶に残るという結果が出ています。
Learing pyramid. “NTL Institute for Applied Behavioral Science, 300 N. Lee Street, Suite 300, Alexandria, VA 22314. 1-800-777-5227.”
このことから、人を育てる、つまり自立型人間をつくろうとするなら、立派な話を聞かせるよりも、アクティビティやゲームなどで現実に近い状況を作り出し、そこでの気づきを仕事につなげる方法が効果的だといえるでしょう。
研修実施の際に気をつけたいこと
一回やっただけで新しい行動習慣や考え方を定着させるのは難しいものです。たとえばモチベーションアップの研修をしたなら、半年後にフォローアップ研修をし、以前学んだことが身についているか、いないとすれば問題点は何か、というチェックポイントを設けられればベストです。全員を集めるのが難しければ、いくつかに分けたり、個別面談などで対応してもよいでしょう。
また、その研修のテーマが個人で完結するものでない場合(例、チームワーク、生産性向上、ワークライフバランスなど)、ある階層だけに研修をやっても意味がありません。若手社員に研修をしたあとによく聞かれる声は「これをうちの上司に受けさせたい」というもの。せっかく新しい考え方を持ち帰っても、現場の上司が変わらずに石頭では時間とお金の無駄です。パートさん、上司、管理職など、関係するすべての部署に向けて実施したいものです。
せっかく手間暇をかけて研修を実施するのですから、最大限の効果を考えたものを行いたいですね。
さて、いよいよ次回は最終回。まとめとして「人づくりは自分づくり」をお伝えします。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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