さて、これまで11回にわたり、人づくりについて考えてきましたが、今回が最後の総括編となります。人を育てるという仕事は、重要であるにもかかわらず、多くの人にとって本業のタスクではありません。営業なら契約を取るのが仕事ですし、経理なら毎月の月次決算書を間違いなく仕上げたりするのが仕事です。残念ながら、プロ野球チームのコーチのように、人の育成だけをやればよいという状況ではないのです。つまり、日々の業務と並行しながら部下を育成していかねばならないのです。そのためには、早い段階から相手を巻き込む、任せる、人が育つ環境整備をする、また自分を律するなど、このコラムで触れてきたポイントをぜひ読み返し、参考になさってください。
人を育てることは、すなわち自分を白日の下にさらすことです。これまではひとりよがりでよかった考え方や仕事のやり方などを、自分以外の他人がわかるような形でアウトプットする作業です。無駄な部分は改善されねばならず、自分の気持ちの迷いは当然相手にも伝わります。
私自身、人をうまく育てられなかった経験があります。昔システムコンサルタントをしていたときのことです。プロジェクトに一年後輩の部下が入ってきて、共にプロジェクトを進めました。年に一度のパフォーマンスレビューがあり、そこで上司から、その部下からのコメントを聞かされたのですが、私の指導方針がはっきりしておらず、右往左往することがある、ということでした。これを聞いてとてもショックでした。日々変わっていく状況に沿って一生懸命やっていたつもりですが、軸がぶれるというのは後輩にとっては不安に感じるものなのだ、ということを身をもって体験しました。
このように、人づくりは、いろいろな難しさのあるタスクですが、それに見合った見返りもあります。
それは、職業人として成長できる要素がたくさん含まれているからです。
まず、教えるにあたり、作業プロセスを客観的に見直すことになりますが、その過程を通じて、業務フローの無駄を見抜き、効率化する目が養われます。また、部下にその作業の意義や目的を伝え、相手に同意してやってもらうことで、周りを巻き込む力が備わってきます。そして、自分の分身をたくさん育てることで、自分ひとりではできなかった大きなパフォーマンスを上げることができ、結果として自分の評価のアップにもつながるのです。
そして、これは人としての大義だと思うのですが、やはりこれまで多くの人にお世話になり、自分が教えられてきたことを、次の世代につなぐ、という役割が誰にもあると思うのです。
人をつくるということは、自分をつくることです。自分と向き合ったり、教えたり、対話したりする様々なプロセスを通じ、自分が人として成長し、ステップアップできる絶好のチャンスです。自分の教えた部下が大きな成果を上げたとき、きっとあなたはいままで感じたことのない大きな喜びに満たされることでしょう。
ぜひ皆さんの人づくりが成功されることを願っております。一年間お付き合いいただき、ありがとうございました。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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