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中国はプラスチック廃棄物資源の輸入を全面禁止しました。日本は中国に対して最大の廃プラスチックの輸出国でしたので、中国の輸入禁止措置により大きな影響を受けています。
また、環境中に存在する微小なプラスチックも大きな問題となっています。特に海洋に存在するマイクロプラスチックには有害物質が付着して、生物濃縮によって魚類、海鳥や人間の健康にも影響します。
プラスチックの廃棄量を極力減らして再利用することが期待されますが、今回はプラスチックのリサイクルについてふれてみます。
大量に使われ、廃棄されるプラスチック
プラスチックは様々な製品になる極めて便利な素材で、容器やレジ袋からパソコンや自動車、航空機に至るまで広く利用されています。主なプラスチックについてその特長や用途について以下に簡単にまとめてみます。
1.ポリエチレン(PE)
最も単純な構造をもつ高分子でありエチレンが重合したものです。酸やアルカリに対して安定で、プラスチック素材の中において最も原料価格が安く、加工しやすい素材の一つです。用途としてはラップやフィルム、食品容器、農業用シートから、バケツや洗面器といったシンプルな雑貨類まで広く使われています。レジ袋やゴミ袋もポリエチレン製です。
2.ポリプロピレン(PP)
プロピレンを重合させた熱可塑性樹脂です。ポリプロピレンは軽量で加工し易い特長を持ちます。耐薬品性や耐熱性を持ち電子レンジでも使えます。ポリプロピレンはゴミ箱やバケツ、食品用タッパ―、プランター、DVDケースなどから、医療用の注射器や建築、建設資材の材料、家電製品や自動車用のパーツなど、その用途は広範です。繊維形態としても利用され、使い捨てオムツ、カーペットやロープ、下着や靴下、アンダーシャツなどにも使われています。
3.ポリエチレンテレフタラート(PET)
エチレングリコールとテレフタル酸の脱水縮合により作られるポリエステルです。耐熱性や耐寒性、強度に優れ、透明度が高く、強靭で耐薬品性が高いといった特性を持っています。用途としては各種飲料を容れるペットボトルとして、また繊維としても利用されています。
4.ポリスチレン(PS)
スチレンを重合して得られる高分子です。ポリスチレンは熱可塑性樹脂であり、加工し易い性質を持ちます。発泡スチロールは発泡成形によって作り出される発泡ポリスチレンです。耐衝撃性ポリスチレンは、ポリスチレンにゴムを配合して耐衝撃性を大幅に強化したポリスチレンです。ポリスチレンは食品用の容器、DVDケース、自動車部品、家電製品の緩衝材や、輸送用の梱包材、ユニットバス部材、洗面化粧台、液晶拡散版、冷蔵庫棚、トナーカートリッジ、ヨーグルト容器、乳酸菌飲料容器、カップラーメン容器など、幅広い用途があります。
5.その他のプラスチック
主なものをあげますと、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)などがあります。それぞれの特長を活かして様々な分野で使用されています。
プラスチックのリサイクル法
プラスチックの主なリサイクル法は次の3つです。なお、3つ目のサーマルリサイクルは燃焼させてその熱を利用しようとするものです。欧米ではリサイクルとは言わず、エネルギー回収と言います。
1.マテリアルリサイクル
廃プラスチックを溶かしてもう一度プラスチック原料やプラスチック製品に再生する方法で、コンテナ、ベンチ、土木建築資材、シートなどにリサイクルされます。
2.ケミカルリサイクル
廃プラスチックに熱や圧力を加えて化学的な処理を施し、モノマーなどの原料物質にいったん戻してから新たにプラスチックを合成します。モノマー・原料化、高炉還元剤、ガス化、油化などがあります。
3.サーマルリサイクル
廃プラスチックを燃やして熱エネルギーとして回収します。主に炭素原子と水素原子とからできているプラスチックは燃やしたときに発熱量が大きいため、焼却炉を発電や冷暖房に利用できます。また廃プラスチックを固めて固形燃料とすることもできます。固形燃料化、セメント原燃料化、廃棄物発電、熱利用焼却などがあります。
中国の廃プラスチック輸入禁止の日本への影響
日本の1年間に排出されている廃プラスチックは約900万トンです。このうち約200万トンが再生プラスチックや繊維として再利用されます。それ以外は燃料に再利用されたり、ゴミとして処分されます。再利用されている200万トンのうち約145万トンが輸出をされています。2017年には72%が香港を含む中国に輸出をされていました。
中国のプラスチックの輸入禁止により、日本から資源として輸出していた廃プラスチックの行き場がなくなりました。処理しきれず溜っていくか、もしくは焼却処分に回すしかありません。リサイクルできる価値ある廃プラスチックを焼却処分することは残念なことです。
廃プラスチックを資源ゴミとして新たな受け入れ先としては、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアが考えられます。しかし、これらの国々もいずれは中国と同様にプラスチック資源ゴミの輸入が禁止になるかもしれません。
リサイクル可能な廃プラスチックの理想的な処理法は、国内にリサイクル施設を備えて、輸出することなく再資源化を行うことです。プラスチックリサイクル工場を民間の力だけでは急には建設することはできません。緊急事態となった廃プラスチック問題を早期に解決するためには国や自治体の支援を期待致します。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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