国連のSDGsが開始されてから既に6年が経ちます。企業がSDGsに取り組むメリットは多数あります。今回は中小企業にとってSDGsに取り組むメリットを様々な角度から考えてみます。
SDGsについて
最初にSDGsの概要について整理しておきます。SDGs(エスディージーズ)とは、国連のSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)のことで、17のグローバル目標と169の達成基準(ターゲット)からなります。次にSDGsの17のグローバル目標を示します。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- 人々に保健と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダーの平等
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
SDGsは2015年に国連で採択されました。日本政府のSDGs推進本部は2016年12月に実施指針を決定しました。また、2017年の世界経済フォーラム(ダボス会議)において、SDGsの推進により年間最大12兆ドルの価値、3億8千万人の雇用が創出されるとの推計が出たことが一つの契機となり、日本の経済界もSDGsにコミットするようになりました。現在では政府、経済界、地方自治体、市民団体等によってSDGsが強力に推進されています。
次の表に、それぞれがSDGsに取り組む動機や意義について示します。
次に、企業が感じるSDGsの重要性とメリットについてのアンケート結果を示します。
中小企業がSDGsに取り組むメリット
SDGsは今後の人間活動、企業活動の重要な指針として、人類社会の目指すべき姿を国連が定めたものです。中小企業がSDGs経営に取り組むことで、企業価値を高めることができます。また、SDGsを経営と結び付けて事業活動を行うことは、社会・経済・環境における企業が抱える課題の解決につながります。
近年では消費者や投資家から、SDGsの視点を経営に積極的に取り組む企業が高く評価されています。逆の見方をすれば、SDGsに取り組んでいない企業はマイナスの評価を受けることになります。
中小企業がSDGsに取り組む具体的なメリットは次の通りです。
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- 顧客・取引先との良好な関係:
- SDGsを取り組むことで、顧客は安心して企業の商品を購入でき、取引先からの信頼も得られます。
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- 新たなビジネスチャンスの獲得:
- SDGsは世界共通の考えで、国や業種を問わず連携が可能です。企業の強みが新たなビジネスを生み出す機会にもなります。
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- 資金調達が有利に:
- ESG投資の観点から、SDGsに取り組む企業に投資したり、その企業の商品を購入します。また、金融機関からの資金調達が有利になることも考えられます。
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- 他社との差別化を図る:
- SDGsに取り組む中小企業はまだ少ない状況ですが、SDGsの取り組みの有無が、大企業が取引先を選ぶ条件になることもあります。また、新たな販路を開拓する力にもなります。
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- 人材の確保にプラス:
- SDGsで企業イメージや労働環境が向上することで離職率が減り、入社希望者が増えることも考えられます。
中小企業にとってのその他のメリット
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- 事業継続や中小企業存立にもメリット:
- 少子高齢化による人材不足や消費者ニーズの多様化などの課題を抱える企業が増加しています。社会の動きを読み取り長期的な視点で自社の将来を考え、持続的な発展につながる経営と事業展開を図る必要があります。SDGsには、社会が抱えているさまざまな課題が網羅されており、中小企業にとって経営リスクを回避しつつ、事業継続や企業存立に役立ちます。
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- 社員の士気の向上:
- 中小企業がSDGsに取り組むと、社員の士気の向上が期待されます。SDGsの実施は社員にとって自社の誇りにもなり、社員の定着や帰属意識の向上にもつながります。
中小企業の社員が地域社会において、「うちの会社はCSRに取り組んでいます」とか、「わが社ではESG投資を行っています」などとは、なかなか言えませんが、「うちの会社はSDGsに取り組んでいます」とアピールしやすいものです。
中小企業も取り組めるメリットの多いSDGs
たとえば環境マネジメントシステムの認証を受ける場合には、初期登録料や毎回の更新費用がかかりますが、SDGsは申請や許可を取る必要はなく、登録料なども不要で、どの企業でもすぐにでも取り組むことができます。社業や人事・労務などの活動を、SDGsの17の目標のどれかと関連付けて行えば、それがまさにSDGsです。
企業が直接行わなくても、社外の環境活動、社会活動などに寄付などを行ってもSDGs活動です。また、社内の誰もがSDGs活動に参加できます。SDGs活動の証は、例えばホームページなどを利用して公表することができます。
メリットの多いSDGsに多くの中小企業が取り組まれ、社会貢献と社業の発展の両方を達成されることを期待いたします。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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