海洋プラスチック対策、マイクロプラスチック対策など、プラスチック問題への積極的な取り組みは世界の潮流です。日本では2022年4月からプラスチック資源循環促進法(正式名:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)が施行されます。今回は、この法律について触れてみます。
プラスチック問題の動向
日本においては環境基本法を基に2001年に循環型社会形成推進基本法が施行され、さらに廃棄物処理法、資源有効利用促進法により、いわゆる3Rの循環型社会の構築に取り組んできました。プラスチックに関しましては、2000年に容器包装リサイクル法が施行され、プラスチック製容器やペットボトルのリサイクルが促進されました。
日本では全廃棄物の約2%にあたる9400万トンのプラスチックが毎年廃棄されています。そのうち、24.8%がリサイクルされ、熱回収を含めますと、81.6%がリサイクル+熱回収が行われています。(いずれも2013年のデータ)
国際社会におけるプラスチック対策の動向ですが、2017年に中国が国内での環境汚染等を理由に、プラスチックの輸入規制を実施しました。その後、中国に代わり東南アジア諸国へのプラスチックの輸出が増えましたが、これらのプラスチックが、輸入国におけるリサイクルの過程で不適切に処理され、環境汚染を引き起こしていると指摘され、その結果、東南アジア諸国においても輸入規制が実施されました。この問題の解決のため、バーゼル条約第14回締約国会議において、プラスチックの廃棄物を新たに条約の規制対象に追加する条約附属書改正が決議されました。
また、海洋プラスチック対策として、2019年に大阪で開催されたG20において、2050年までに海洋プラスチックごみによる汚染をゼロにまで削減することを目指して、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンが採択されました。その内容は、適正な廃棄物管理、海洋プラスチックごみ回収、革新的な解決策の展開、各国の能力強化のための国際協力などです。
日本のプラスチック対策の強化
プラスチック対策の一層の強化策として、日本では2021年6月にプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律が公布され、2022年4月から施行されます。
この法律の目的は、プラスチックのライフサイクル全般での“3R+Renewable”により、サーキュラーエコノミーへの移行を加速するものです。3Rとは、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)のことですが、それらにRenewable(再生)が加わることになります。
サーキュラーエコノミーはEUで使われ始めた言葉ですが、日本語では「循環経済」と呼ばれており、製品、素材、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小限化する経済システムを意味します。
簡略してプラスチック資源循環促進法と呼ばれるこの法律は、設計・製造における環境配慮設計指針の策定、販売・提供事業者が取り組むべき判断基準を策定、市区町村の分別収集・再商品化、製造・販売事業者等による自主回収などが主要な内容です。次にこの法律の概要をご紹介します。
プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律
- プラスチック製品の環境配慮設計に関する指針に即した環境配慮製品を国が初めて認定し、消費者が選択できる社会を構築します。そのために、
- 製造事業者等向けのプラスチック使用製品設計指針(環境配慮設計指針)を策定するとともに、指針に適合したプラスチック使用製品の設計を認定します。
- 国等が認定製品を率先して調達することやリサイクル設備を支援することで、認定製品の利用を促します。
- 小売・サービス事業者などによる使い捨てプラスチックの使用を合理化し、消費者のライフスタイル変革を加速します。そのために、
- コンビニ等でのスプーン、フォークなどの、消費者に商品やサービスとともに無償で提供されるプラスチック製品を削減するため、提供事業者に対し、ポイント還元や代替素材への転換の使用の合理化を求める措置を講じます。
- これにより、消費者のライフスタイル変革を促します。
- あらゆるプラスチックの効率的な回収・リサイクルを3つの仕組みで促進します、そのために、
- 市町村が行うプラスチック資源の分別収集・リサイクルについて、容器包装プラスチックリサイクルの仕組みを活用するなど効率化します。
- 使用済プラスチックについて、製造事業者等の計画を国が認定することで廃棄物処理法上の許可を不要とする特例を設けます。
- 産業廃棄物等のプラスチックについて、排出抑制や分別・リサイクルの徹底等の取組を排出事業者に求める措置を講じるとともに、排出事業者等の計画を国が認定することで廃棄物処理法上の許可を不要とする特例を設けます。
プラスチック対策の展望
プラスチック資源循環促進法は、対策が進んでいるEUの事例を参考にしたものと考えられます。この法律では、プラスチックの回収処理に関して自治体および回収処理業者、販売業者の既存の枠を超えた取り組みが実施されるところが大きな特徴の一つです。
また、環境配慮設計に関する指針や認証制度の策定により、様々な機器、商品の製造・販売において、企業のプラスチック対策の取り組みが促進されることになります。
現在では、プラスチックは多種多様、極めて多くの商品、製品に使われています。プラスチック資源循環促進法により、プラスチック対策が一層進むことを期待いたします。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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