ChatGPTが登場してAIがかつてないほど注目されています。今後も多くの企業がAIの導入を図っていくことと思われます。今回は、中小企業を想定してAIの導入のメリットや導入におけるポイントについてふれます。
AIにできることと導入のメリット
これまでAIは大手の製造業を中心に導入されて来ましたが、これからは製造業のみならず、商業、サービス業、一次産業など、あらゆる産業へ導入が進められていく事でしょう。以下に、AIを導入してどのようなことが出来るか、具体的な事例を紹介します。
AIの利用において、インプット情報として、(1)受注、発注、在庫、(2)マシンの稼働データ、(3)良品/不良品の画像、(4)配車属性情報、(5)テキスト情報、などがあります。AIを通して、過去の情報や教師データに利用して結果を予測することができます。ここでいう教師データとは、例題と正解が対になっている学習データのことです。例えば、製品の表面を撮影した画像と、その画像を良品または不良品と定めるラベル情報を対にした教師データをたくさん用意してAIモデルを構築します。そのAIモデルにラベル情報なしの製品画像をインプットすると、それが良品か不良品かをAIは即時に識別します。
AIの応用例としまして、(1)施設、装置の予知保全、(2)AIチャットボットによる顧客コミュニケーションの効率化、(3)需要予測と在庫最適化、(4)不良箇所自動検出による検品作の業効率化、(5)運送ルートと積載計画の最適化、などがあります。
上述のように企業のAI導入によって得られるメリットとしては、(1)収益増加とコスト削減など生産性の向上による利益増加、(2)熟練技術の知識を体系化、定義化することによる技術継承の促進と若手の育成、(3)単純作業からの解放と、より創意工夫が求められる業務への転換を通じて、社員の満足度向上などにより離職防止、(4)先進的な取組や業務課題に対して、技術的知見を反映させる会社だと示すことでの人材の採用や引き付け、などがあります。
ChatGPTを活用して見込まれるサービス提供
AIにより具体的に何ができるかを、ChatGPTを例に次に紹介します。ChatGPTのAPI公開後にコンテンツ生成、自動会話プログラム、要約サービスなどを活用したサービスは急増しています。日本の少子化、労働者不足の中、下記のように様々な産業におけるChatGPTの活用が見込まれます。
1.コンテンツの生成
(1)文章生成:広報やマーケティングなどの担当者によるコンテンツ生成業務のライティング支援
(2)広告生成:最適な広告を自動生成
(3)高度な対話によるビジネス活用支援
(4)マニュアルの自動生成:マニュアルのタイトルや説明文を自動生成
(5)記事制作支援:文章の自動生成機能により、記事制作業務を効率化
(6)採用面接の質問項目生成:テーマに合わせて質問項目を生成
(7)営業活動支援:新規見込み客の心理状況やニーズを分析、アポイント依頼メールの作成など、その後の対応方法を支援
(8)セミナーの議事録作成:講演内容の文字起こし機能による自動議事録化と、指定された文字数に自動要約
2.チャットボット(自動会話プログラム)
(1)顧客の問合せ対応:それぞれのユーザーに沿った問い合わせに対する回答
(2)口コミへの返信:宿泊サイトの口コミへの送信文を自動作文
(3)情報提供とアドバイス:健康に関する情報提供とアドバイス
(4)企業内業務の検索サービス:企業内業務向けの回答自動生成型検索サービス
(5)相続や終活の相談:相続などに特化した法人向けAIチャットサービス
3.メッセージアプリ内コンテンツ
(1)キャラクターAIチャットユニット:AIキャラクターがユーザーとアプリ内で会話外部向け活用コンサルティング
(2)FAQチャット:アプリで企業個別のFAQを提供
(3)ChatGPTコンサルティング:ChatGPT活用のコンサルティングと開発
4.様々な要約サービス
(1)決算書の要約:決算書から会社の企業評価や財務分析など将来への経営アドバイスを提供
(2)企業情報の調査:国内100万社以上の非上場企業の事業概況の要約
(3)電話自動応答システム:録音した通話内容を文章化したうえで要約
(4)FAQの改善:質問文の言い換え表現を自動生成
5.社内向けの活用
(1)自社環境の構築支援:自社でChatGPTを利用する環境の構築を支援
(2)問合せ対応の自動化:土日や深夜帯などのユーザーからの問い合わせに自動対応
(3)アイデア・ブレインストーミング支援:アイデア出し、ビジネスアイデアの検証など、ビジネス補助に活用
(4)自社サービスでChatGPTを活用:自社サービスで簡単にChatGPTのAPIを活用できる機能を提供
(5)業務支援:資料の下書きなどの業務の助手として活用
AI導入成功のポイントと社内への浸透のために必要なこと
企業のAIの導入の成功のポイントについて述べますが、特にこれから導入を検討することが多い中小企業を想定して考えてみます。現在ではChatGPTにみられるように、AIの利用は技術者のみならず事務系の社員もAIを利用する時代となりました。AIを適切に導入すると企業の更なる発展が期待できます。大企業の場合は、AI導入の専門担当者がいたり、企業の方針も明確であり、必要に応じてスムーズにAIの導入を進めることができます。しかし、中小企業の場合は大企業の場合と異なり、経営者が先頭に立って、社員の理解を得つつ、AIの導入に努める必要があります。
AIを導入し成功するためには、実務へのAI導入にあたっては、将来達成したいビジョンに向けて素早く開始して、継続的、段階的に育てていく心構えが重要です。また、AI導入の社内への浸透のために必要なこととして、まずは社長や経営者から社員へ、変革の必要性を訴え、そのための手段としてのAIへの理解を深めていくことが大切です。部門の垣根を超えて社員が一丸となってAI導入による業務変革に取り組んでいくことが大切です。
次にAIの社内への浸透のために必要なことは以下の通りです。まず、経営者の積極的な関与と、社員ひとり一人の理解が重要です。すなわち、なぜ変化が必要なのか、何のためのAIなのか、社長の言葉で社員に語ることが望まれます。そして、AI導入は会社の変革に必要なものであると社員ひとり一人が共通の理解を持つことが大切です。
また、社内において推進体制の構築が重要です。まず、AI導入や組織変革のためには推進者が必要です。経営者自らが推進する他、推進者を任命して進めることもできます。推進者を任命する場合には、推進者が検討、推進に取り組みやすくなるような配慮が必要です。具体的には、本業の負荷を下げたり、直ぐに成果が出ない場合も含めてチャレンジの姿勢を人事評価に反映するなどです。
現場担当者など、プロジェクトに関与してくれるメンバー全員がやる気を持って取り組むことができる環境を整備することも重要です。例えば、会社としての取組の重要性を十分に説明して、挑戦の姿勢を評価に反映することを伝えたり、担当者に一定の裁量を与えるなどです。社員においては、プロジェクトを推進する上でのハードルがあった場合には、経営層も巻き込みながら解決していくとスムーズです。まずは、成果に繋がるかよりもAIで何ができるだろうか、まずはやってみようという姿勢で検討を進めていくことが望まれます。AIへの継続的な理解度向上も大切です。AIは一度作ったら終わりではありません。説明会や勉強会を実施し、AIに対する理解を深めていく努力が重要です。
大企業はAIの導入にさほど困難を感じないでしょう。中小企業の場合は、AIの導入は必ずしも容易であるとは限りません。中小企業ではAI導入のメリットをよく理解し、社をあげて取り組むことが望まれます。
さて、AIを入れるかどうかではなく、業種、職種によってはAIの導入が、企業間で競争的に実施されるケースは今後増えていくことが予測されます。企業においては、AIの導入により収益の増加、社業の発展を期待いたします。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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