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2024年05月23日

脱炭素経営の動向と取り組み方

気候変動対策として、脱炭素経営が日本では強力に進められています。脱炭素の二本柱は再生可能エネルギーの利用と、省エネルギーの推進です。今回は脱炭素経営の始め方、取り組み方や、脱炭素経営を行う事の様々なメリットについてもふれてみます。

脱炭素経営とそのメリット

脱炭素経営は企業が気候変動対策、すなわち地球温暖化対策の視点で企業経営を行うことを指します。具体的には、温室効果ガスであるCO2の排出削減などを目指し、企業の社会的責任を果たし、企業価値の向上や新たなビジネスチャンスを見つける取り組みです。
メタンや亜酸化窒素、フロン類も温室効果ガスですが、日本ではCO2が温室効果ガスの90%近くを占めますので、脱炭素すなわちCO2の排出削減が温暖化対策と考えることができます。
気候変動の影響がますます顕在化している今日、脱炭素経営を進めることで他社と差別化を図るとともに、新たな取引先やビジネスチャンスを獲得できる可能性もあります。脱炭素経営を行うメリットは次の通りです。

  • 競争力の強化、売上や受注の拡大など、優位性の構築
  • 光熱費、燃料費の低減による利益の増加
  • 知名度や認知度の向上による企業ブランディング
  • 従業員のモチベーションのアップと人材獲得力の向上
  • 金融機関の認知、好条件での資金調達
  • 補助金や支援制度を受けやすくなる
  • SDGsやパリ協定の方針に合致

脱炭素経営の進め方

企業において脱炭素経営を行う場合、その進め方は以下の通りです。

脱炭素の情報を知り、経営の方針を検討:脱炭素経営の第一歩は的確な情報を入手して、しっかりと脱炭素の重要性を把握し、業界における潮流を理解することです。日本の脱炭素に関する政策は2020年10月に発表されています。カーボンニュートラル、ゼロカーボンなどは、脱炭素と同じ意味をもつ用語です。得た情報を基に、現状の経営方針や経営理念を踏まえ、脱炭素経営で目指す方向性を検討して整理します。

CO2排出量の算定と削減対象の特定自社のCO2排出量を算定することで、脱炭素に向けた取り組みを数量的に理解することが出来ます。CO2の排出量を計測することは難しいですが、消費した燃料の量からCOの排出量を計算することができます。排出量が把握できれば、自社の主要な排出源となる事業活動やその設備等を把握することで、どれから削減していくかを考えます。

削減ロードマップの決定と削減計画の実施自社のCO2排出源の特徴を踏まえ、削除対象を検討し、実施計画を策定します。社外の支援も受けながら、削減対策を実行します。定期的な見直しにより、CO2排出量削減に向けた取り組みのレベルアップを図ります。脱炭素経営に関する計画や取り組みを利害関係のあるステークホルダーに伝え、理解と協力を得るよう努めます。

脱炭素経営の具体的取り組み例

  1. 再生可能エネルギー設備の導入:自社で太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用する設備を導入します。
  2. 再生可能エネルギー電気の利用:再生可能エネルギー由来の電気を発電もしくは購入して使用します。
  3. エネルギー効率の改善:製造プロセスやオフィスのエネルギー効率を高めることで、消費エネルギーを削減します。
  4. サプライチェーンの管理:サプライチェーン全体でのCO2排出量を把握し、削減に向けた取り組みを行います。

以上のステップや取り組みを通じて、企業は脱炭素経営を実現し、持続可能なビジネスモデルへと移行することができます。

脱炭素を進める国際的な動向

脱炭素は国際的に強力に推進されており、いくつかの活動や目標が世界共通となっております。脱炭素経営を行う上で、是非ともしっかりと理解しておいてほしい次の3つの活動や目標をご紹介します。

TCFD:投資家等に適切な投資判断を促すための、効率的な気候関連財務情報開示を企業等へ促す民間主導のタスクフォースで、Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略称です。主要国の中央銀行、金融監督当局、財務省等の代表からなる金融安定理事会の下に設置されています。
日本では、2022年4月に再編された東証市場のプライム市場に対して、気候変動に係るリスク・収益機会が自社事業に与える影響に関して情報開示することが実質的に義務化されました。

SBT:パリ協定が求める水準と整合した、5年~10年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のことで、Science Based Targetsの略称です。CDP、WRI、Global Compact、WWFなどの国際NGOが運営しています。

RE100企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的な活動で、Renewable Energy 100%の略称です。国際NGOのThe Climate GroupのCarbon Disclosure Projectという団体が運営しています。
RE100は大企業を対象にしていますが、日本では中小企業も参加しやすい「再エネ100宣言 RE Action」という活動も展開されています。この活動は中小企業、自治体、教育機関、医療機関等の団体が使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示し、再エネ利用を促進する新たな枠組みです。現在、350を超える企業・団体が参加しています。

脱炭素経営、補助金等の活用法

国や公的機関および自治体等において、環境やエネルギーに関して、補助金、助成金、融資金等を出したり、また税の優遇措置を実施するなど、様々な支援を強力に行っています。その中でも、エネルギー温暖化対策、脱炭素対策、省エネ推進、再生可能エネルギーの推進、省エネ建物などを目的としているものは、脱炭素の達成に適うものです。
脱炭素に関する補助金等は、主に経済産業省、国土交通省、農林水産省、環境省で、また個々の自治体で実施されています。国や自治体等の補助金は、原則として年度単位で実施されます。
従って、年度の初めに募集し、予算が埋まり次第に募集終了のケースが多いです。まれに、募集に準備期間が必要な場合もあり、募集が夏以降になるケースもあります。事前に前年度の例などをよく調べておき、年度初め(主に4月~5月)に素早く応募することが望まれます。もちろん、通年で募集している補助金もあります。
重要な補助金は、数年ごとに名称や内容の一部を変えて継続して実施されるケースが多いです。補助金用の予算獲得に、同じ名目や内容で何年も続けることはあまりありませんので、数年ごとに、社会の変化に対応して新たに補助金を創設して、実施されます。
補助金は要件を満たしていれば受けることができる場合は多いです。助成金は競争的制度が多く、より優れた内容の提案が採用される場合が多いです。

温暖化防止は世界の趨勢です。日本政府も強力に対策を進めています。企業においては補助金等を大いに活用して脱炭素経営を進めるとともに、企業の一層の発展を期待いたします。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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