2024年11月の大統領選挙でトランプ大統領が二度目の当選を果たしました。大統領としての4年の任期は2025年1月末より始まります。トランプ大統領の政策の中で、特に注目されるのは経済政策と外交政策です。日本に対しては様々な経済的な要求や、米軍の日本駐留費の負担増の要求等が予測されます。今回は、トランプ大統領の外交・経済政策と日本への影響についてふれます。
日本に影響の大きい経済政策
トランプ大統領の今後の政策は、前回の大統領時の政策、今回の大統領選で掲げたアジェンダ47等から読み取ることができます。
トランプ大統領は減税や規制緩和を通じて米国の経済成長を促進することを基本政策としています。富裕層への減税の恒久化を目指し、法人税率を引き下げる計画があります。
貿易相手国に対して積極的に関税をかける方針を取っています。トランプ大統領の経済政策は、減税や規制緩和を通じて経済成長を促進することを目指しています。
個性の強いトランプ大統領ですが、共和党の所属ですので、政策の基本は共和党の伝統的な政策や政治姿勢と大きく変わることはありません。次の表は、共和党と民主党の政策や基本姿勢をまとめたものです。
共和党の小さな政府の意味は、政府は国防と国内の治安をしっかり行えば十分で、社会保障や福祉などに多額の税金を必要とするような政策は行わなくて良いとする考えです。この共和党の政策は富裕層や大企業を優遇することになります。
強い指導力を発揮する外交政策
「米国第一主義」や「強い米国」を掲げているトランプ大統領は、外交上では常に強い指導力を発揮してことになるでしょう。移民政策においても厳格な姿勢を示し、メキシコとの国境に壁を作り、不法移民の強制送還を推進していくでしょう。
ウクライナ戦争については、トランプ大統領は自分なら直ぐに終わらせると主張しています。これは、現状のままでウクライナとロシアに停戦を行わせることを意味していると思われます。なお、2022年11月に出されたゼレンスキー大統領のロシアに求める和平交渉の前提は次の5項目です。
- ウクライナの領土保全の回復
- 国連憲章の尊重
- 戦争による全損害の賠償
- すべての戦争犯罪人の処罰
- 二度と侵略しない保証
上記の前提条件は、トランプ大統領が想定しているウクライナ戦争の終結案とは大きな隔たりがあります。しかし、「案を受け入れなければ、支援は行わない」とトランプ大統領がゼレンスキー大統領に迫っていく事になると思います。
専制主義国家、ロシアと中国との関係
一党独裁で長期政権のロシアと中国は、専制主義国家としての国際社会に様々な問題を引き起こしています。この両国に如何に対応していくかは国際社会の大きな課題となっています。
トランプ大統領のロシアとの関係ですが、プーチン大統領との個人的な関係をよく強調しており、両国間の対話を今後も重視していくことでしょう。ウクライナ戦争に関連して、ロシアはヨーロッパ諸国やG7国から制裁を受けています。この制裁に対してトランプ大統領は今回の大統領選挙前に一部緩和することを提案しました。この提案が国内および国際社会で大きな批判を招きました。ヨーロッパ諸国の動向と大きく異なるトランプ大統領のロシアに対する考えは、今後様々な軋轢が生じる懸念があります。
中国との関係ですが、前回の任期中にトランプ大統領は中国に対して、特に貿易戦争として知られる一連の厳しい関税措置をとりました。中国からの輸入品に対して高い関税を課し、これに対して中国も報復的な意味合いで米国からの輸入品に関税を課すなど、両国間の貿易摩擦が激化しました。関税を掛け合う異常な状態の解決を目指して、両国は対話を続けましたが、現在までも解決しておりません。
また、前回の任期中にトランプ大統領は中国を戦略的競争相手と位置づけ、技術移転や知的財産権の問題に対しても厳しい姿勢を取りました。これにより、米国と中国の経済関係は大きく変動し、世界経済にも影響を与えました。
なお、前回のトランプ大統領の政策を引き継ぎ、バイデン大統領は中国に対して半導体規制を実施しました。米国による対中国半導体規制の強化が構造的な減産圧力となっており、コロナ禍などの影響で世界経済が低迷する中、他の国よりも中国の回復への道のりは険しい情況です。
世界の半導体需要が回復しても、中国の半導体生産は伸び悩む可能性があります。先端半導体を使ったハイテク製品の製造が難しくなることから、世界の工場としての中国の魅力は大きく低下しています。
2022年の中国の半導体装置輸入のうち日本からの輸入が31%、米国が16%、オランダが14%であり、米国主導で3カ国が揃って中国に対する規制強化の影響は大きいです。
様々な日本への影響
前回の任期中にトランプ大統領は、日本との貿易不均衡を是正するために、日本に対して輸入制限を課すことを示唆しました。その結果、日本の自動車産業などが影響を受けました。また、トランプ大統領は日本との貿易協定を再交渉することを目指しましたが、最終的には新しい貿易協定が成立しませんでした。
トランプ大統領の政策は日本経済に対して一定の不確実性をもたらしましたが、日本政府はこれに対応するために様々な対策を講じました。例えば、日本は他の国々との貿易協定を強化し、経済の多様化を図ることで、貿易摩擦の影響を最小限に抑えることに努めました。
米国では2024年の秋から政策金利を順次下げています。これにより日本の円安が徐々に解消されていくものと期待されていました。しかし、トランプ大統領は大企業を中心に米国経済の活性化を図ることを表明しています。米国経済が好況になると米国の金利が上げられ、結果円安が続く事になるでしょう。
トランプ大統領は、米国で販売する自動車などの主要製品は、全て米国内で製造しろと日本に一層迫ってくる可能性があります。また、日本における米軍の駐留費の負担を増やすように要求してくる可能性もあります。
米国第一主義を掲げ、自らの主張には妥協を許さない姿勢で迫ってくるトランプ大統領と、これから4年間日本は付き合っていかなければなりません。当時の安倍首相とトランプ大統領のような親密な関係を、日本の現政権が作ることは容易ではありません。さらには、大きく過半数割れしている国会(衆議院)の状況では、内政はもちろんのこと外交においても重要な決断は下せないものと思われます。
企業におかれてはこれからの時代を的確に見通し、この時代を賢明に乗り越えられることを期待いたします。
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進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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