激動する世界情勢の中で、日本経済は様々な影響を受けています。今回は、ウクライナ戦争、台湾有事の懸念、低迷する中国経済、エネルギー高と物価高の動向を把握し、さらに日本企業の対策についてふれてれみます。
ウクライナ戦争の日本への影響
ウクライナ戦争の経緯は次の通りです。2014年2月のウクライナにおける政変で親ロシアのヤヌコーヴィチ政権が崩壊し、親欧米の暫定政権が発足しました。これに対して、2014年3月にロシアがウクライナのクリミアを一方的に併合しました。2014年7月、EU閣僚理事会はウクライナに対するロシアの行動を踏まえ、新たな経済制裁措置を決定しました。さらに、ウクライナがNATOへの加入の姿勢を見せると、それに反発してロシアは2022年2月にウクライナに武力侵攻を行い、ウクライナ戦争が勃発しました。
ウクライナ戦争は世界経済に大きな影響を及ぼしました。日本への影響は次の通りです。エネルギー資源の供給が不安定になり、戦争勃発時には世界の原油価格が高騰しました。現在はやや落ち着きを取り戻しています。エネルギー価格の上昇に伴い、物価全体が上昇して経済活動や生活のコストが増加しています。今後も世界の経済成長が鈍化する可能性があり、日本企業の業績にも影響が出ています。なお、日本もG7によるロシア制裁に参加しており、ロシアとの貿易が制限され、輸出入の変動が生じています。
台湾有事の懸念と日本企業の対策
中国は、台湾は中国の一部と主張しています。中国の言う一国二制度とは、政治体制は1つで、経済体制は2つの意味です。日本等多くの国は中国のみと外交関係を持っています。台湾と国交を結び承認している国は約20ヶ国ほどです。なお、米国の台湾関係法により、米国は実質的に台湾と軍事同盟を結んでいます。
中国が台湾周辺での軍事活動を活発化させており、緊張が高まっています。特に、通信ケーブルの切断や軍事演習などが行われており、台湾の安全保障に対する懸念が増しています。供給チェーンの中断や物流の混乱の懸念があり、日本企業が台湾に多くの投資をしているため、その投資の安全性や将来の利益に影響しています。なお、具体的な状況や影響の程度は企業によって異なります。
台湾有事の際の日本企業の対策としましては、地政学的リスクや経済的リスクの分析評価をして、事前に綿密な対策をとる必要があります。企業にとって台湾が供給地である場合、供給チェーンの多様化を行う事により、リスクを軽減できます。デジタル化とITインフラの強化を行い、遠隔作業やクラウドサービスの活用によって、緊急時にも柔軟に対応することができます。また、コミュニケーションを強化して、従業員やパートナー企業との情報共有と意思決定を行う体制を整えることも大切です。
中国経済の厳しい現状と日本企業の対策
2023年の中国の経済成長率は5.2%でした、2024年には4%台に低下する見込みです。これは、中国における不動産不況や内需の弱まりが影響しています。また、中国では人口減少が進行しており、これが長期的な経済成長に影響を与えています。特に労働力の減少が懸念されています。
このような中国経済の低迷は、日本経済に次のような影響を与える懸念があります。中国は日本の主要な輸出先の一つであり、経済低迷により日本の輸出が減少します。中国企業の日本への投資が減少することで、日本の経済成長に悪影響を及ぼします。中国からの輸入品の価格の上昇が、日本国内の物価上昇の一因になります。中国で不動産市場の低迷に起因する金融ショックが発生しますと、日本も含めた主要国の株式市場が動揺する恐れがあります。
このような中国の現状に対して、日本政府は経済政策を見直し、中国市場への依存度を減らすために、他の国々との貿易関係を強化しています。日本企業は中国市場での競争力を高めるために、新しい技術や製品の開発に力を入れています。日本は中国経済の低迷による影響を最小限に抑えるために、国内市場の活性化を図っています。例えば、消費者向けの補助金やインフラ投資などが行われています。
エネルギー高や物価高、日本企業の対策
エネルギー高の対策としまして、まず、エネルギー効率の向上を目指し、省エネ設備の導入やメンテナンスを行うとともに、太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーの導入を進めることが望まれます。また、エネルギー消費をモニタリングし、無駄を削減するためのシステムを導入したり、従業員に対してエネルギーの節約についての教育や啓発活動を行うことが大切です。さらに、エネルギーの供給契約を見直し、コストを削減するための交渉を行うことも重要です。
日本も含め世界で物価が上昇しております。欧米ではコロナ禍が収束し、需要が増加しましたが、世界の物流が回復せず、物流コストが値上がりしています。また、労働力が足りず、人件費の上昇なども物価高の大きな原因です。コロナ禍の他、ウクライナ戦争のショックの影響で、原油の一時的な値上がりや、農産物も値上がりしています。物価高に対する企業の対策としましては、まず生産コストや運営コストの削減を図ることが必要で、これには効率化や省エネ対策が含まれます。商品やサービスの価格を見直し、物価上昇に対応するために値上げを行うことも考える必要があります。また、供給チェーンの効率化を図り、コストを抑えるために新しい取引先を探すことや、在庫の過剰を防ぎ、適切な在庫管理を行うことでコストを削減することも大切です。さらに、労働者のスキルを向上させ、生産性を高めることでコストを抑えることも期待されます。
コロナ禍の影響が残る中、ウクライナ戦争、中国経済の停滞、台湾有事の緊迫、火種がくすぶる中東などに、日本経済は様々な影響を受けています。企業においては、時局の動向をしっかりと捉え、対策も十分に考慮した下で経済活動を行い、激動の時代を生き抜き、一層の発展を遂げられんことをご期待いたします。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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