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日本でもCSRという企業活動が広く進められています。特に環境問題への取組みがCSRの大きな柱になっています。今回は国際動向も含めて、環境に関するCSRについて述べてみます。
CRSとは
CSRはCorporate Social Responsibilityの略称で、企業の社会的責任などと訳されています。CSRは企業が倫理的観点から事業活動を通じて、自主的に社会に貢献する責任のことです。日本では環境への取組み、社会貢献、地域社会への貢献などがCSR活動として盛んに行われています。
環境分野の取組みを例にして考えますと、CSRの意義としては主に次の三つをあげることができます。第一に人間的価値の増大で、CSRに取組むことによって社員一人ひとりが働きがいを持てる職場環境を作ることができます。次に経済的価値の増大で、CSRに取組むことで環境保全や環境にやさしい製品やサービスの提供ができます。最後に社会的価値の増大で、CSRの取組みが社会に認知されるなど、総合的な企業価値の向上につながります。
環境分野のCSR活動の具体例、ゼロエミッション
ゼロエミッションの取組みとは、廃棄物の排出がないことや廃棄物の発生量を減らしてゼロに近づけることです。ゴミ等のほか、二酸化炭素、有害化学物質などが対象となります。また、工場等の事業所でのゼロエミッション、製品の使用過程でのゼロエミッション、製品のライフサイクル全体でのゼロエミッションと多分野にわたります。
なお、製品のライフサイクルとは、製品の原料や素材製造から製品の製造、消費者による製品の使用、製品の廃棄までのすべての過程を指します。
ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment=LCA)という手法があります。LCA手法を用いて、個別の商品の製造、輸送、販売、使用、廃棄、再利用までの各段階における環境負荷を明らかにすることができ、環境負荷の少ない商品の開発や製造に役立てることができます。
環境分野のCSR活動の具体例、省エネ・節電
省エネ・節電の具体例としまして、ガス、ガソリン、重油等の節約、電気の節約があげられます。資源の節約の観点からは水の節約や原料資源などの節約も大切です。省エネ・節電は、生産現場のみならずオフィスでの実践も可能です。
省エネの具体的方法としまして、たとえば工場においては不要な機器の停止、温度・照度などの設定の見直しや、運用方法の改善、製造業などでは、工程・製造方法の見直し、設備・機器の補修、効率的な設備への取替え、熱効率改善、断熱効果を高めることなどが重要です。
国連グローバル・コンパクト
経済の成長に伴い、企業活動が人間社会に大きな影響を与えるようなってきました。そのような状況の中で、国連グローバル・コンパクトは企業に社会的責任を求める先駆けとなりました。国連グローバル・コンパクトは1999年の世界経済フォーラムにおいて、当時国連事務総長であったコフィー・アナン氏が企業に対して提唱したイニシアチブです。企業に対して、人権、労働権、環境、腐敗防止に関する10原則を順守し実践するよう要請しました。
環境に関しましては、具体的には環境問題の予防的アプローチ、環境に関する責任のイニシアチブ、環境に優しい技術の開発と普及の実戦を企業に求めています。国連グローバル・コンパクトの取組みの流れが、現在のCSRにつながっていると思われます。
ESG投資
近年、ESG投資が注目されています。ESG投資とは環境(Environment)、社会(Society)、企業統治(Governance)に配慮している企業を重視、選別して行う投資のことです。環境分野では二酸化炭素の排出量削減や化学物質の管理などが対象になります。ESG投資では実際の投資において、環境、社会、企業統治を重視することが結局は企業の持続的成長や中長期的収益につながり、財務諸表などからはみえにくいリスクを排除できます。
EUのCSR、米国のCSVについて
EUでもCSRについて企業は熱心に取組んでいます。ただ、日本と違ってEUでは人権、労働と雇用慣行、環境問題、贈収賄・汚職の防止、地域社会への積極的な関与、発展への寄与、障害者の統合、プライバシーなど顧客が関心を持つ案件への対応、従業員のボランティア活動などと多岐にわたる取組みが行われています。
米国では2011年に経営学者マイケル・ポーターによりCSVが提唱されています。CSVとは、Creating Shared Valueのことで、共通価値創造、共有価値創造、価値共創などと訳されています。企業が本業を通じ、企業の利益と社会的課題の解決を両立させることによって社会貢献を目指すという企業の経営理念です。CSRよりさらに踏み込み、より直接的に課題の解決を図ることで企業価値の向上を目指します。
欧米と日本の取組み方の違い
日本では漠然とした社会貢献など、本業とは関係ない活動もCSR活動に含まれますが、EUではCSRに含まれる「責任」という概念に重きをなして取組まれています。従って企業の責任という範囲で考えると取組むべき事項は多岐にわたります。
米国のCSVという考え方は、「企業経営」という概念に重きをなして取組まれています。どのような活動であれ、本業の経営からかけはなれた形での取組みはないということです。
日本企業が日本国内で行う場合は、日本的考えでのCSRの実践活動で全く問題がないと思います。ただ、経済のグローバル化が進む中、国外においてはEU流もしくは米国流の考えでCSRの取組みが行われている場合が多いことを認識しておく必要があります。
かなり昔、日本の大手企業が米国の大都市において、現地の日本人従業員を動員して清掃などの活動をさせました。日本人従業員たちは会社名の入ったお揃いのTシャツを着ていました。この活動は現地では大きなひんしゅくを買いました。日本国内ですとなかなか結構な活動かもしれませんが、国際社会では労働者の人権、企業の本質、経営者の責務使命等の観点から、この日本企業が行ったことはとんでもないことなのです。単に日本の文化と世界の文化の違いというようなことでは済まされないことなのです。
経済のグローバル化が進む中では、大企業のみならず地方の中堅企業の経営者も、上述の日本企業がひんしゅくを買った理由を正しく理解できることが求められます。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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